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タカシの外資系物語

日本人がハリウッドで主役になれない理由2006.01.12

「芸者」の映画に日本人が出ない !

唐突ですが、私の趣味の 1 つに「映画鑑賞」というのがあります。うちの奥さんも映画を見るのが大好きなので、週末に近所のシネコン ( ショッピングセンターなどに併設された映画館 ) によく出かけます。純粋に個人的な娯楽であると同時に、外国人の同僚と話を合わせるための「ネタ」という目的もあります。 ( 過去にも、映画を題材にしたコラムをいくつか書いていますので、ご参考ください。『It's a Drill !』 ・『外資系における「英語力」再考』・『Are you "THE LAST SAMURAI" ?』) 


今、私たち夫婦が楽しみにしている映画は 2 つあります。 1 つは「ハリー・ポッター」です。ま、これは定番中の定番なので、ハズせないとして … もう 1 つは「SAYURI」という映画です。かの名匠スピルバーグが製作し、アカデミー 6 部門に輝く「シカゴ」のロブ・マーシャルが監督、主演はアジアの世界的女優チャン・ツィイー、「ラストサムライ」の渡辺謙も出演するというもの。内容は、日本の「芸者」の世界を描いたもので、豪華絢爛な「美の世界」が展開されるそうです ( わしゃ、配給会社の宣伝マンか … 予告編で言っていたものの受け売りです … )。


で、出演メンバーに再度目を通してみると … 主演 ( ヒロイン・さゆり ) = アジアの世界的女優チャン・ツィイー、ヒロインが思いを寄せる役 = 渡辺謙、さゆりを導く芸者 = ミシェル・ヨー、さゆりに敵対心を抱く芸者 = コン・リー … おいおい、ちょっと待てよ、と … 「芸者」って日本の話だよな、と。その映画に、日本人は渡辺謙しか出ないの ? 芸者役は全員、中国人 ? って、そりゃないぜ、とつぁーーん ! ( ルパン風 )


映画「SAYURI」のホームページをよくよく見ると、渡辺謙さん以外にも、工藤夕貴さんが、「チョイ役」で出ているとのこと。渡辺謙さんは「THE LAST SAMURAI」での活躍が評価されたとして、工藤夕貴さんがなぜ選ばれたのか ? それは、間違いなく「英語力」でしょう。彼女はアメリカでの生活が長く、ほぼネイティブな英語を話すことができるようです。ま、結局のところ、日本人は「英語」がネックになって主役クラスにつけなかったというのが現実のようです。

「Phonetics」って何 ?

では、ハリウッドが要求する「英語力」というのは、どのくらいのものなのでしょうか。同僚のアメリカ人に聞くと、日本人でそのレベルに達している人は、「皆無」だと言います。「皆無ちゅうのは、ちょっと言いすぎじゃないの ? 日本人にだって英語のうまい人はいるぜ ! 」と思われる方がいるのではないでしょうか。私もそう思います。しかし、同僚のアメリカ人によると、「日本で生まれ育った人は、完全なネイティブにはなれない。国際線の日本人スチュワーデスが話す英語だって、ネイティブと比較すれば、まるでおかしい … 」のだそうです。同僚によると、単語とか発音とかアクセントが間違っているわけではないのですが、日本的に言えば、なんとなく「赤ちゃんコトバ」に近いような感じなのだと言っています。つまり、こんな感じでしょうか。「みなしゃん、本日は飛行機に乗ってくれて、ありがとうでちゅ。わたしはメイン・パーサーの○○と言いまちゅ。よろちくね ! 」


同僚は、これを「Phonetics」と言っています。「Phonetics」( フォネティックス ) とは「音声学・発音学」を意味します。一般には馴染みのない言葉ですが、言わんとしていることは何となくわかります。どんなに日本語がうまい外国人だって、日本人の話す自然な日本語と比べると、どこか違和感がありますよね。そういうことを言っているのだと思います。


アメリカ映画に「日本人役」として出演するなら、「Phonetics」に関する多少の違和感は許されるかもしれません。「THE LAST SAMURAI」の渡辺謙もそうでした。しかし、ネイティブと同じ「Phonetics」が要求されるとなると話は別です。今回の映画でスピルバーグが要求した「英語力」にかなうのは、チャン・ツィイーほか中国人女優であって、日本人女優ではなかったということなのです。

あなたは「英語」を売っているのか ?

「結局、英語かよ … 」という気もするのですが、これは仕方ないかもしれません。帰国子女は別として、日本にいて本格的な「Phonics」を体得するためには、両親のどちらかがネイティブで、アメリカン・スクールにでも通わなければ難しいと思います。そういう環境にいられる人の比率は、日本よりも中国 ( この場合、香港 ) の方が多いということなのでしょう。


また日本の場合は、国内の芸能マーケットがそれなりに大きいため、海外に出て行こうというモチベーションがわきにくいという理由もあります。無理に英語を勉強してハリウッドに進出しなくても、国内でドラマや映画に出ていれば、それなりに「セレブ」な生活ができるわけです。香港のような、極めて限られたマーケットでは我慢できなかったチャン・ツィイーとは、そもそもの事情が違うわけです。いずれにしても、日本人がハリウッドで主役になれない理由は、「英語力」と「( 成功したい、ビッグになりたいという ) ハングリー精神」にあるようです。


では、一般的なビジネスの世界はどうでしょう。確かに、ハリウッドで主役をはるためには、ほぼ完璧な「英語力」が必要です。しかし、ビジネスで成功するために、英語力は必須ではないように思います。例えば、メジャーリーグの松井選手やイチロー選手、サッカーの中田選手や中村選手を見ればわかるように、彼らは英語やイタリア語をそれなりに話しますが、「Phonetics」が完璧なわけではありません。彼らの「売り」は、卓越した技術 = スキルなのであって、語学ではありません。


映画の世界だって、語学ではなくて、スキルや才能で勝負ができる分野があります。日本映画の「リング」や「Shall We Dance?」は、英語版にリメイクされ、大ヒットしました。監督業の場合でも、古くは黒澤明監督から、最近では北野武監督まで、純粋に日本語で勝負をして高い評価を受けている人はたくさんいます。


日本人がハリウッドで主役になれないのは、英語力がないから … これは正しいと思います。しかし、俳優業というのは、「セリフ」をしゃべってナンボなのですから、いわば「Phoneticsを伴った語学力」というスキルを売る商売なのです。うまく話す人が勝ち、話せない人は負けるのです。


しかし私を含め、多くの人が携わっているビジネスでは、「Phonetics を伴った語学力」というスキルを売っているわけではありません。それは、技術力であったり、品質であったり、アイデアであったり … 英語でも日本語でも共通の、普遍的な内容であるはずです。ならば、英語なんてほとんど関係ないでしょう、というのが私の主張です。


「SAYURI」に出演している香港女優のようなハングリー精神があれば、もっと世界で活躍する日本人が増えるはずなのでしょうが … しかし現実には、日本人俳優のように、日本で「小金持ち」になることに満足してしまう人が大半なのかもしれません。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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