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働くための約束。雇用契約(こようけいやく)について① 「採用から入社前の契約編」


得られる情報/日本で、会社に採用されて働くまでの契約について

法律の力が強い約束を契約(けいやく)といいます。会社で働くとき、そこにはいろいろな契約がありますが、雇用契約(こようけいやく)にもとづいて働くことが多いです。雇用契約を結ぶと、働く人、つまり労働者(ろうどうしゃ)と雇用主(こようぬし)の関係になります。(外国人の方は雇用主という言葉はあまり聞かないと思いますから、ここでは雇用主を会社といいます)


他のページで給料(日本で働く外国人の給料について)や働く時間(労働時間について)のルールについて説明しています。それらはすべて雇用契約に書いてある内容です。

 

雇用契約をした場合、会社は必ず労働者に働くための条件を書いた紙をわたさなければいけません

 

・会社と労働者の関係

普通、会社と労働者の関係は、会社の方が強いと考えられています。そのため、法律では会社が労働者につらい思いをさせないように、いろいろなルールを決めています。それでも、会社は労働者に対していろいろなことを決めることができる力があります。


しかし会社は給料を払っているからと、役割を超えた強さを見せつけてはいけません。労働者はただで給料をもらっていません。会社のために働いて給料をもらっています。 

雇用契約で会社が決めてはいけないこと


会社が労働者に対して、いろいろなことを決めることができるといっても、もちろんダメなことがあります。

 

・パワハラ、セクハラはダメ!

たとえば、会社はひどいことを言ったり、殴ったり、とじこめたり、労働者の自由をうばったり、傷つけることによって働かせてはいけません。そういうことをパワハラやセクハラといいます。人を傷つけてはいけないことは当たり前のことです。

 

・罰金(ばっきん)のルールを決めてはダメ!

また、雇用契約の中に罰金(ばっきん)のことを含めてもいけません。例えば遅刻をしたら罰金、仕事でミスをしたら罰金、いつまでに仕事をやめたら罰金などです。会社はこれらのことを決めることができません。しかし、労働者が仕事の中で会社に損をさせるようなことをした場合、状況によってはお金で責任をとらなければいけないこともあります。しかし、仕事のミスは会社にも責任があるかもしれません。労働者がすべての責任をとらなければいけないことは少ないでしょう。そのようなときは、弁護士に相談するようにしてください。

 

・会社からの借金を引いて給料をわたしてはダメ!

また、労働者が会社から借りているお金を引いて給料をわたすこともいけません。

 

・むりやり貯金をさせたり、物をあずかってはダメ!

その他、会社と労働者との間で特別な約束がないのに給料をむりやり貯金させることもいけません。このことは技能実習生に多いこととして「いつも持っていてください。大切な「在留カード」について」にて書きました。もちろん、こちらに書いてあるように、むりやり在留カードやパスポート、携帯電話、銀行の通帳なども会社はあずかってはいけません。

 

・間違っているなと思ったら

他にも会社がやってはいけないことがありますが、状況によって違いがあります。「間違っているな」と思ったら会社に聞いてみたり、労働基準監督署や社会保険労務士、弁護士に聞いてみたりするとよいでしょう。

採用(さいよう)


会社にはどのような人と一緒に働きたいか、決めることができます。しかしなんでも自由に決められるわけではありません。求められた仕事ができる必要がありますが、外国人である、女性、年齢、障がいを理由に差別されることがあってはいけません。


労働者にとって、その会社に入りたいのか決めるには、どのような仕事内容なのか、給料はどのくらいか、働く時間はどのくらいか、働く場所はどこか、契約の期間はどのくらいか、契約の更新はどうすればできるのか、やめるのはどういうときかなど、条件を知る必要があります。また、会社はそういうことが書いてある書類を働く人にわたさなければいけません。

 

・契約の内容はわからなければ意味がない

契約はその内容がお互いにわかりあって、成り立つものです。雇用契約書は普通、会社がつくりますが、それを労働者に正しく理解してもらう必要があります。


労働者が外国人の場合、雇用契約書やそれに関係するいろいろなルールは外国人の国の言葉や、やさしい日本語で書くように日本の国は求めています。また、会社の担当者もやさしい日本語で外国人に説明できるようにしましょう。

 

・業務内容は在留資格で許されるものですか?

日本人と違い、外国人の場合、在留資格ごとにやってよい仕事の内容が違います。やってよい仕事以外の仕事をすると、入管から資格外活動許可をもらっていない限り、不法就労(ふほうしゅうろう)となります。それは犯罪(はんざい)です。そのため在留資格が消されて、日本から出ていかなければならなくなることもあります。働かせた会社は不法就労助長罪(ふほうしゅうろうじょちょうざい)となり、刑事罰の対象となります。


はじめから入管がその間違いがわかれば、働くための在留資格は許可されません。悪いことをしようとする考えがなくても、在留資格のルールをわからないで雇用契約をするのは気をつけましょう。

 

・給料は同じ仕事をする日本人と同じ金額ですか?

同じ仕事をする人は、同じ給料をもらうことが基本です。しかし、人によってできることも、経験も、仕事のできのよさもちがいますから、違いがあるなら、正しい理由が必要です。


また、外国人が働くための在留資格を入管からもらう場合、法律によって日本人と同じかそれ以上の給料をもらうことが条件になっていることが多いです。正しい理由がなくて日本人より給料が低い場合、在留資格は許可されません。

 

・内定(ないてい)って何?

日本で仕事を探す、就職活動(しゅうしょくかつどう)をしたことがある外国人なら内定(ないてい)という言葉をきいたことがあると思います。内定のイメージは、予約のようなもので、正式に決まっていないと思うかもしれません。しかし、内定は正式に雇用契約が決まったと考えられるものです。ただ、働きはじめるのは少し後になるだけです。そのため、会社は内定を知らせるときに、内定通知書(ないていつうちしょ)という、正式な書類を出します。そして、働きたい人はその会社に入ることを約束する書類、誓約書(せいやくしょ)などを会社に出します。そして、会社は内定をかんたんにとり消すことはできません。


かんたんなメールや電話で採用を伝えるだけのものは、内定とは言えないこともあるので注意しましょう。

 

・試用期間(しようきかん)って何?

働くための能力があるか、確認するための期間を試用期間(しようきかん)といいます。外国人だけでなく日本人に対しても試用期間がある会社はたくさんあります。また、外国人にだけ試用期間がある会社もあります。仕事をする能力を見るために正しい理由があれば、そのようなルールを作ることもできます。また、試用期間中は正式に採用されたときよりも給料が低いことがあります。なお、試用期間の長さは会社が能力を見るために必要な時間しかできません。長すぎる試用期間は認められません。試用期間は、ただ単に給料を低くして働いてもらう期間として考えてはいけないということです。もちろん正式に採用されたときは同じ仕事をする同じレベルの日本人と同じ給料がもらえるのが基本です。


試用期間が終わるとき、会社は面接などをして正式に採用するかを決めます。しかし、会社は正当な理由がなければ、採用しないとすることはできません。 

雇用主の方へ。外国人を雇用するときはかならず在留カードの原本を確認しなければなりません。


「いつも持っていてください。大切な『在留カード』について」で在留カードの見方を学びました。外国人の方に働いてもらう場合、法律により会社は必在留カードの原本を確認しなければなりません。コピーや画像を確認するだけではダメです。また、在留カードは一部、偽造されたものが出回っています。原本を確認することなく、偽造された在留カードを所持する外国人を就労させた場合、不法就労助長罪(外国人の方は不法就労罪に該当する。以下同じ。)という刑事罰に処せられる可能性があります。


入管は在留カードの真正確認ができるアプリケーションを提供しています。


在留カード等 読みとりアプリケーション サポートページ 入管のサイトへ

 

在留カードの原本を確認するだけでなく、こちらのアプリケーションを利用して在留カードが正しいかどうかも、確認するようにしましょう。


また、外国人の方の中には在留資格を保有することなく、非正規に在留する方もいます。そのような方は在留カードを持っていません(在留カードは無くてもパスポートに「短期滞在」や「特定活動」の短期間の在留を許可する在留資格が添付されて、法に適って在留する外国人の方もいます)。非正規に在留する外国人の方を就労させた場合も、不法就労助長罪に問われます。


また、在留カードには(いつも持っていてください。大切な「在留カード」について)にて記載してありますように、在留資格や就労の可否についても書いてあります。すべての在留資格で就労が許可されているわけではありません。就労が許可されていない在留資格を持つ外国人の方を就労させた場合も、不法就労助長罪に問われます。さらには、就労が許される在留資格によっても、在留資格ごとに就労できる仕事の内容が異なります。所持する在留資格で許される仕事の内容を超えて就労をした場合も不法就労助長罪に問われる可能性があります。

以上のように外国人の雇用に当たっては在留カードの原本の確認だけでなく、在留資格に関する正確な知識も求められます。

 

疑問がある場合は、入管や入管法に詳しい行政書士や弁護士に相談するとよいでしょう。

 

(Text/行政書士明るい総合法務事務所 代表 特定行政書士 長岡由剛)


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