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日本で働く外国人の給料について


得られる情報/日本で働くときに支払われる給料について、基本的な決まりや休んだとき、残業したときなどのルールを紹介。

みなさんが働くとき、給料についてとても興味があると思います。「どうなっているのかな」「わからないな」「おかしいな」と思ったら、まず会社に聞きましょう、会社に相談しましょう。そして会社から答えをもらいましょう。働くとき、大切なのはお互い信用できること、信頼関係があることです。

◆さまざまな会社がある

信頼できる会社もたくさんありますが、中には「法律や契約書で書かれていることと、実際は違う」会社もあります。また、ルールを守らない会社もあります。だから、外国人のみなさんも、正しいルールを知る必要があります。そして、社員の方から会社に聞けるようになりましょう。そうすれば、ルールを守る会社も増えると思います。

給与支払いの基本的なルール

 

働くためのルールや給料のルールを決めた法律は、日本人だけでなく外国人の労働者も同じように守ってくれます。また、在留資格のある外国人だけでなくオーバーステイをしているなど、在留資格のない外国人も守ってくれます。

 

◆通貨払いの原則

給料は、みなさんが使えるお金で払われなければいけません。会社は、物で給料を払うことはできません。労働協約(ろうどうきょうやく)という、会社と労働者との約束があれば、お金以外で払うことができますが、そのような特別な場合を除いて、給料はお金でもらうものです。物に変更することはできません。

 

◆直接払いの原則

給料は働いた労働者に直接払われなければいけません。ブローカーや友達、家族が、会社から代わりに受け取ってはいけません。もし、あなたに借金があっても、お金を貸した人がお金を返してもらおうとして、あなたの代わりに給料を受け取ってもいけません。給料は直接働いた人がもらえます。

 

◆全額払いの原則

給料は全額もらえます。ただし、法律で給料から差し引かれることが認められている税金や、会社と労働者が約束して決めた合理的な費用などは、給料から差し引かれます。

 

・給与明細をよく見よう。給料から差し引かれるもの

給与明細を見てみましょう。給料から、所得税(源泉徴収税)や社会保険料、雇用保険料、住民税などが引かれているかもしれません。それらはあなたの代わりに会社が税金を払うために、あなたから預かっているお金です。そのような税金が引かれるのは、ルールだから仕方がありません。

その他にも、住んでいる会社の寮の家賃や食事のお金が引かれていることもあります。これらは会社と労働者の間に約束があれば、合理的な金額を差し引くことができます。­

あなたは自分の給与明細を見ていて、給料からどのようなお金が引かれているのか、わかりますか? 納得ができますか? もしも「わからない」ことがあれば、会社に聞いてみましょう。

 

◆毎月1回以上、一定期日払い(いっていきじつばらい)原則

給料は必ず毎月1回以上、決まった日にちに、もらうことができます。

雇用契約書

 

雇用契約書は労働者が働くにあたって、会社とのさまざまな約束が書いてあります。約束は会社が自由に決められるものではありません。会社は法律のルールを守って労働者と約束しなければなりません。そして、約束したことはきちんと守る必要があります。

どのような法律のルールがあるのでしょうか。給料について見てみましょう。

 

自分の給与をしっかりと確認しよう

給料には基本給(きほんきゅう)というベースとなる給料の他に、職能給(しょくのうきゅう)や手当など、基本給にプラスしてもらえる給料があります。それは会社ごとのルールによって違います。わからないことは会社に聞いてみましょう。

 

◆残業

1週間に働くことができる時間は決まっています。仕事をする時間は1日8時間以内、1週間で合わせて40時間以内にしなければいけません(農業や漁業など、このルールと違うルールの仕事もあります)。その時間を超えたら、残業代として給料がプラスされます。残業した時間の給料は25%以上増えます。

 

◆深夜労働

夜の10時から朝の5時までの時間、人は寝ます。その時間に働く場合、その部分の給料は25%以上増えます。

 

◆休日労働­

休みの日として決められている日に働いた場合、その部分の給料は35%以上増えます。

 

◆自分で働いた時間のメモをとる

会社にタイムカードがない場合や、仕事を始める時間と終わった時間を紙に書くだけの場合は、自分で働いた時間をメモしておくのも良いでしょう。会社がルールを守っているか確かめましょう。

 

◆わからないところ、疑問に思ったことは会社に確認をとる

雇用契約などの働くルールについて、わからないことがあったり、「正しい金額の給料をもらえているかな?」と思ったりしたら、会社に相談しましょう。信頼できる会社であれば、あなたの質問に対して、理解できるような答えを返してくれます。もしも、あなたが納得できる答えを返してくれない場合、社会保険労務士や弁護士に相談しても、よいかもしれません。

 

・仕事専用の服に着がえる時間や、着がえた場所から仕事の場所までの移動時間は給料をもらえる?

仕事専用の服に着がえないと働けない仕事の場合は、仕事の服に着がえる時間も、労働時間と考えるのが普通です。また、着がえた場所から仕事の場所に移動する時間も、労働時間と考えるのが普通です。しかし、労働者がタバコをすったり、遊びの話をして着がえるのに時間がかかったりすると、会社はそのような時間に給料を払いたくありません。このような時に、会社と労働者の間でトラブルになることが多いですね。

休憩の時間はリラックスしても大丈夫ですが、着がえる時間も仕事の時間に含まれています。悪ふざけせずに着がえて、仕事の準備をしないといけません。

雇用契約書の他にも給料について書いてあるルールがあります

 

これまで給料に関係するルールを見てきました。労働者と会社の給料に関する約束は、雇用契約書に書いてありますが、それ以外にも給料や働くためのルールを決めることができます。そこでは、これまで見てきた基本的なルールが少し変えられていることもあります。

基本的なルールと違うルールを決めた場合、会社は労働者がいつでも見ることができるようにしていなければなりません。また、そのようなルールは必ず会社と労働者が意見を合わせて決めています。

・三六協定(さぶろくきょうてい)・就業規則(しゅうぎょうきそく)や賃金規定(ちんぎんきてい)

 →多くの会社で雇用契約書とは別に、働くためのルールや給料のルールを就業規則で決めています。残業に関するルールがここに書いてあることもあります。必ず会社に見せてもらい、わからないところは理解できるように説明してもらいましょう。

その他にも…

・労使協定、労働協約などの会社と労働者との約束が決められていることもあります。疑問に思うことがあれば、会社に聞いてみましょう。

最低賃金の決まり

 

給料の金額は会社と労働者の約束で、いくらにしても良いわけではありません。高い給料は大丈夫です。しかし、低すぎる給料はダメですね。


最低賃金法という法律があります。安すぎる給料を禁止するルールです。これ以上安くしてはいけない給料の金額(最低賃金)は働く地域によって違います。


※詳しいことは厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

 

この金額より低い約束の給料だった場合、必ず最低賃金と同じ給料を求めることができます。

年次有給休暇(ねんじゆうきゅうきゅうか)

 

働き始めてから6カ月以上、あまり休まないで働いた場合(労働日の80%以上)、「給料をもらいながら休むことができる権利=年次有給休暇(有休)」が10日間もらえます。同じ会社で働く期間が長いほど、もらえる日数が増えます。最大20日間です。有休は労働者が休みたいとき、好きなときに休めます。会社が「休むな!」と言うことはできません。しかし、とても忙しいときは、会社が「休みの日を少しずらしてね」と言うことはできます。


有休は、与えられてから2年が過ぎると、使わなかった場合も休む権利は消えていきます。有休を「たくさんためて、たくさん休むぞ!」ということはできませんので、疲れたとき、休みたいときは有休をとって、計画的に使ってください。

 

◆子どもを産む。子どもの世話をしたい。育児休業・介護休業

子どもを産んだり、子どもの世話をしたりすることは、大人としてとても大切なことです。仕事も大切ですが、家族も同じくらい大切にしたいですね。そのようなとき、会社に言えば休むことができます。会社はそのことで労働者をやめさせることはできません。


もちろん、休んでいるときは働いていないので会社から給料をもらえないのが基本です。しかし、保険料を払っている健康保険や雇用保険から休業中の手当として給料の50%から70%のお金をもらうことができます。

 

◆技能実習生や特定技能1号で働く外国人に子どもが生まれたら

技能実習生や特定技能1号で働く外国人は奥さんや旦那さん、子どもを自分の国から呼ぶことができません。だから、もしも子どもができてしまったとき、心配してしまうと思います。「子どもと離れなきゃいけない」「自分の国に帰らなければいけない」「もう日本にいられない」心配になりますね。

技能実習生や特定技能1号の外国人に子どもが生まれた場合、子どもは「特定活動」という在留資格をもらうことができます。子どもは不法滞在になることはありません。お母さんと一緒に日本にいることができます。


また、妊娠したり子どもが生まれたりしたら、そのお母さんの在留資格がなくなってしまうルールもありません。本当であれば、育児休暇を取得したり、安心して日本で生活したりすることができるはずです。そのための保険料・税金も支払っているはずです。


また、現在の日本には母子家庭も多くあります。このことは技能実習生や特定技能1号の外国人だけの問題ではありません。もしも、技能実習生や特定技能1号の外国人に子どもができたとき、働いている会社から、「おめでとう!」と言ってもらえたり、支えてもらえたりするような環境であってほしいと思います。そうできるのが人間社会のありがたみです。

休業したときの給料(休業手当)

 

 基本的に働いた分だけ給料がもらえ、働いていないときは給料がもらえません。当たり前ですね。自分の責任や希望で休みたいときは有給休暇などを利用するのが良いでしょう。

しかし、本当は働く日なのに会社の責任で休みとなった場合、給料がゼロになってしまったら大変です。このようなときは60%以上の手当を会社は労働者に払うルールになっています。

同一労働同一賃金・差別はダメ

 

同じ仕事をする場合、契約の形に関係なく、基本的に同じ給料、同じ待遇を会社は労働者にしなければいけません。


会社にはどのような人と一緒に働きたいか、決める権利があります。しかしなんでも自由に決められるわけではありません。給料も同じです。会社が示した仕事ができる必要がありますが、外国人であるとか女性、年齢だけを理由として差別されることがあってはいけません。

 

◆もちろんちゃんと仕事ができるかで違う

同じ仕事をするといっても、経験のある人と経験のない人、たくさんの知識がある人とまだ勉強中の人では仕事の結果が違います。そのようなときには給料に違いがでることもあります。ただ、それは誰にでも納得できる合理的なものでなければなりません。

 

◆仕事の内容や会社のルールによって違う

雇用契約の他、会社によって会社と労働者との約束により、さまざまなルールが決められていることもあります。また、仕事の内容によっては法律で決められたルールと異なるルールを決めることもできます。だから、会社にどのようなルールがあるのか聞いてみることが大切です。 

おかしいなと思ったら

 

まずは会社に確認しましょう。会社に聞いても答えてくれない場合、労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)や社会保険労務士、弁護士に相談するのもよいでしょう。

会社が気をつけること

 

今、この文章を読んでいる人の中には、経営者の方もいらっしゃるかもしれません。なお、この文章を書く私も部下をもつ経営者です。


会社の最も大きな財産は人です。そして事業経営において最も難しいことは、人のマネジメントです。海外に進出する会社や外国人の方々を受け入れる会社も、最初に直面する障壁は法律上の規制かもしれません。しかし、その後に連なる最大かつ最長の障壁は人のマネジメントでしょう。


障壁を乗り越えることは苦労を伴います。言わずもがな障壁を乗り越えることは組織の成長につながります。筋トレと同じで、たくましい組織力を手に入れるために必要な過程にすぎません。

実際に雇い入れるかどうかは別にして、外国人の方々を受け入れられる程度の組織力を持たなければ、今後若い日本人を受け入れていくことも難しいと嘆くことになるでしょう。

 

◆雇用契約書や就業規則の多言語化、やさしい日本語での案内が重要

雇用条件に関する文書は、日本人にとっても理解が難しいことがあります。外国人の方にとっては、なおのこと理解が難しいのは当然でしょう。しかし、こういった約束事に疑う気持ちが生まれると、そのひずみは大きくなり、マネジメントを困難にします。会社と従業員の間で信頼関係が構築されていなければ、効果的なマネジメントを行うことはできません。


外国人の方々は想像以上に会社へ貢献してくれます。そのような外国人従業員の心理的安全を担保するためにも、会社と従業員との間の重要な約束事である雇用契約書や就業規則等を共に働く外国人の方々の日本語能力に合わせて、多言語化する、またはやさしい日本語に置き換えることは、とても重要です。また、そういったルールをやさしい日本語で担当者が説明できる能力を養うことも重要だと考えています。


従業員の会社に対する疑う気持ちに対して、外部の法律専門職や行政機関が表に出てくるよりも前に、それら機関の助言を得ながらであっても、会社が表に立ち適切に解決できることが望ましいといえます。このことは会社と従業員の間の信頼関係を作り上げる上でとても大切なことと考えます。以上のような1つ1つの取り組みが自己解決能力を持つ組織力の基礎となっていきます。

 

※一部の内容は、「日本の労働時間(働く時間)について」でも紹介しています。

 

(Text/行政書士明るい総合法務事務所 代表 特定行政書士 長岡由剛)


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