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タカシの外資系物語

トランプ大統領と外資系における “役割” (その3)2016.12.20

“ふるい落とし” 方式のメリット


(前回の続き)「あなたは、社長になりたいですか?」日本のビジネスパーソンにこの質問をすると、「なりたいけど・・・、ま、無理だから、高望みするのはやめとこう・・・」という回答が多く見られます。なぜ、“無理” だと考えてしまうのか? その理由は、日本とそれ以外の国における、“役割” としてのリーダーの考え方の違いに起因しているのです・・・

 

前回少しお話ししましたが、日本の企業において、多くのビジネスパーソンが社長=リーダーになることを諦めてしまう理由は、その選択プロセスにあります。日本企業で行われる典型的なリーダー選択のパターンは、“大勢の母集団からのふるい落とし” 方式です。例えば、新卒で同期が数十人いたとして、そこから1~2名のリーダーが選ばれていく・・・、という方式です。

 

この方式には、以下の特徴があります。

・ 結果が出るまでに、長期間を有する

・ 長期間にわたって選択肢の母集団に残り続けるためには、突出した成果よりもミスをしないことが重視される

・ 仮に、多少のミスが出たとしても、それをカバーするパトロン的な存在を有する者が有利。これはすなわち、学閥や縁故である

 

以上のようなプロセスで選択される日本のリーダーについて、私はそれなりにいい面を持っていると思います。それは納得感です。長期間合意形成されて生まれたリーダーには、熱狂的でポジティブな支持がない代わりに、ネガティブな印象もない。「不支持層がない・・・」日本の社会には、これが重要なんだと思います。

 

また、リーダー自身が予定調和の産物ですから、伝統を継承してくれる安心感がある。これは、裏を返すと、大きな改革ができない・・・、ということなのですが、日本人は変革を嫌いますから、この方がいいのです。

いきなり空から降ってくるのは・・・?!


一方、欧米・・・というか、日本以外のほとんどの先進国では、日本のようなリーダー選択のプロセスをとりません。例えば、その企業や組織に在籍したことがない外様で、それも結構な若造が、いきなり空から降ってきて社長になる。これが普通だったりする(最近は、日本でもこういう方式で、社長が降ってくる企業が増えていますが、まだまだ異例だと思います。また、日本のそのようなケースでは、カリスマ的な前任者がパトロンとして控えている場合がほとんどで、そういう意味では、従来の日本型リーダー選択方式の派生型にすぎない、とも考えられます)。いきなり空から降ってきたリーダーを受け入れる素地とは何なのか?それは、リーダーを1つの役割として見ているからなのです。

 

企業という組織を考えた場合、そこには様々な “役割” が必要です。現場を回す一般社員、それを管理する管理職、組織の戦略を決めるリーダー・・・これら各役割がかみ合ってこそ、企業は成果を出し、成長していきます。

 

それぞれの役割には、それぞれに応じた能力・技能が必要でして、内部調達のみで、それらすべてが賄えるわけではありません。特に、“組織の戦略を決めるリーダー” というのは 特殊技能であるため、外部から招聘する方が合理的なことが多い。ま、大きな変革が必要な場合に、内部の人間では、旧弊に足を引っ張られるため、適していないという面もありますが・・・。ということで、いきなり空から降ってくる社長というのが成り立つわけです。

 

もちろん、リーダー層の全員が、“空から降ってきた・・・” では、組織が成り立ちません。だから、現場を熟知した人も混ぜておく。外資系企業に、CEOは外部、COOは内部、という形式が多いのは、そういう発想です。一方、日本企業においては、CEOとCOOが同一人物、というパターンがほとんどでして、考え方の違いがよくわかると思います。

アメリカ国民が追い求める青い鳥


さて、タイトルにあるトランプ大統領ですが、彼はなぜ選ばれたのか?それは、大統領という “役割” とアメリカの現状を考慮したとき、最も適した人物がトランプ氏であった、とアメリカ国民が判断したから・・・、に他なりません。政治経験があろうとなかろうと、これまでの大統領と比べると破天荒な行動をしようと、そんなのどーでもいいのです。現状の閉塞したアメリカを、立て直してくれるかもしれない・・・という淡い可能性が、ヒラリー・クリントン氏よりも高かっただけのことなのです。

 

実は、アメリカ国民は、前回の大統領選で、1つの教訓を得ています。それは、「チェンジ!」を掲げて旧弊を打ち破ってくれそうなオバマ大統領に国の立て直しを託したわけですが、結局は、あまりうまくいかなかった。それは、オバマ氏の中途半端な政治経験とエリート感にあるのではないか。ならば、政治経験も一切ない、スノッブなのかゲテモノなのかよくわからんが、馬力だけはありそうな男に賭けてみるのもいいんじゃないか・・・、多くの国民がそのように考えたのではないかと思っています。

 

これは私見ですが、アメリカという国は、結局のところ、依然としてJFKの呪縛から脱していないように思います。若くてハンサムで聡明で、自分たちのリーダーとして掛け値なしに誇れる人・・・そんな青い鳥を追い続け、大統領選のたびに、候補者同士の比較ではなく、JFKとの比較をしている・・・そんな感じがしています。

 

さて、翻って、日本のリーダーである安倍首相はどうか?基本的に、この人も日本型選択方式で選ばれた典型的なリーダーです。前回の首相離任においては、取り返しのつかないミスを犯したものの、それを吹き飛ばすぐらいのスーパー縁故=育ちの良さで、見事に復活しました。

 

ただ、最近の安倍首相を見ていると、そういう日本ではありがちな経緯を超えて、首相という “役割” を全うし始めているようにも思います。民進党をはじめとする、野党は弱い。弱すぎる・・・。でも、一方で、安倍首相が強すぎる、とも言えるのです。彼の政策すべてに納得しているわけではないですが、外資系企業の社長にも似た強さを感じるのは、私だけではないでしょう。

 

今後、おそらく日本においても、“役割” としてのリーダーを選択していく企業が増えていくことでしょう。そうなれば、実力次第で、短期間のうちに、大きな組織のリーダーになる人が増えてくる。みなさんに、その準備はできていますか?もしかしたら、私もその波に間に合うかもしれない・・・、そう思って、日夜頑張っています、では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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