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タカシの外資系物語

タカシ、ベンチャー企業から仕事の “本質” を学ぶ (その4)2016.02.16

ビジネスの “穴場” としてのイスラエル

 

(前回の続き)フィンテック(FinTech)のベンチャー企業 S社に対して、ビジネスコンテストへの参加を打診したところ、快諾を得たタカシ。S社の社長であるTさんとの話は盛り上がり、コンテストの開催地に関して 思いがけない “逆提案” を受けてしまったのでした・・・

 

 

「イスラエル!」 て、 あんたーーー?!

 

なんと! S社の社長であるTさんが、FinTech ビジネスコンテスト〈ハッカソン〉の開催地として推薦してくれたのは、イスラエル!! 弊社の大会議室や都心のホテルよりも、S社のオフィスがいいなーー・・・なんて思っていた私の想定をぶっ飛ばす一撃に、私は椅子から転げ落ちそうになってしまいました(イスラエルと椅子をかけているわけではない、念の為・・・)

 

Tさん 「イスラエル はどうすか?」

私 「イ、イスラエル って、あの イスラエル ですか?」

Tさん 「ええ、あの イスラエル」

私 「一体、なぜゆえに、イスラエル?!」

Tさん 「それはですね・・・」

 

まず、Tさんは単なる思いつきや私を驚かせようとして言っているわけではない、ということをお伝えしておきます。“マジ” です(キッパリ!)。その前提で・・・ Why Israel ?

 

(1)   国民全体の IT リテラシーがハンパなく高い。多分、世界トップレベル!

(2)   企業家精神というか、起業意識がハンパなく高い。多分、世界トップレベル!

(3)   一方で、シリコンバレーほど手垢にまみれていない = シリコンバレーには、すでにVC(ベンチャー・キャピタル)がガッツリ入り込んでいて、日本企業では手出しができない状況・・・

(4)   加えて、シリコンバレーは極めて閉鎖的なのと比べ、イスラエル人は合理性のみを追求するため、日本企業にも入り込む余地がある・・・

 

上記(3)(4)についは、日本人がイメージしやすいように、シリコンバレーと比較しています。Tさんいわく、日本人にとってはシリコンバレーというのは、決してビジネスのしやすい場所ではないとのこと。Tさん自身、シリコンバレーに半年以上住んでいたそうですが、結局、有力なコミュニティには入れてもらえなかったそうです。“よそ者” を “仲間” として認めてもらうまでには、2年程度はかかるとのこと。『One Piece』のルフィが聞いたら、でかいゲンコツで殴られそうな話ですが、実態はそんなに甘くないのだとか・・・。 そういう意味では、(3)(4)の要素をクリアしているイスラエルというのは、穴場なのかもしれませんね。

 

おそるべし、イスラエルの徴兵制度!

 

では、(1)(2)について、つまり「イスラエル人のITリテラシーと企業家精神が高い理由」について、お話しましょう。

 

イスラエルには徴兵制度があり、男女とも兵役を課されます。「え? 女性も?!」そーなんです、女性も!なんですね。18歳になると、国民全員が徴兵されるわけです。

 

では、イスラエル軍(IDF = Israel Defense Forces)の中で、最も “エリート” とされる部門はどこか? それは、コンピュータシステム師団である マムラム です。イスラエルの高校生にとって、マムラムに入隊して世界屈指のITリテラシーを身につけることは、1つの大きな目標になっている。日本でいうと、東大や京大、早慶に合格するのと同じノリが、徴兵制度に組み込まれているわけです。

 

昨今の 軍事(というか、要は 戦争・・・)は、ITなしには語れません。兵器自体が高度にIT化されているのみならず、ネットを使って、“サイバー戦争” を仕掛けることもできる。実際に、マムラムの講義では、最新のコンピュータ・ウィルスを作り、駆除する技術、人工知能を使ってテロリストの画像を認識する技術等々、世界屈指のIT教育が提供されます。レベル的には、かの MIT コンピュータサイエンス学科の大学院を優に超えているようでして・・・、そんなのを国家レベルでやっているわけですから、国民のITリテラシーが高くなるのもうなずけます。

 

Tさんは、上記の説明をする際に、映画『ミッション・インポッシブル』の話をしてくれました。主演のトム・クルーズ・・・、ではなく、トム・クルーズ扮する敏腕エージェント(=スパイ)の相棒である ベンジー・ダン! マムラムで研鑽を積んだエリート兵士は、ベンジー・ダンのような感じになるのだとか・・・。イーサン・ハントのように、派手なアクションはないですが、ITバリバリでイーサンを助ける、あの役柄です。イメージ湧かない方は、『ミッション・インポッシブル』の最新作(=「ローグ・ネイション」)か、一つ前の作品(=「ゴースト・プロトコル」)をご覧になると、すごくよく解ります!

 

大企業に就職するのは、落ちこぼれ?!

 

さて、軍でのIT教育もさることながら、それ以上に重要なことがあります。それは、イスラエルの大学生は、その大半が、大学を卒業するまでに自身の起業プランを作成し、企業や個人相手に出資を募るのだそうです。結果、優秀なビジネスプランにはファンドがつき、晴れて、ベンチャー企業として事業を起こすことができる。逆に、お金を集められなかった学生は、仕方なく、大企業に就職するのだとか・・・。なので、イスラエルでは、学生の就職先ランキングとして、以下のような序列があるのだそうです。

 

(第1位) ベンチャー企業を起こす

(第2位) 軍に戻り、敏腕エージェント(=スパイ)になる

(第3位) 仕方なく・・・ 大企業に就職する

 

いかがでしょうか、みなさん?!日本とは真逆の価値観、だからこそ、ベンチャー精神が育成され、国力も高くなるわけですね。

 

イスラエルには、宗教上の問題等、日本人には理解しにくい、複雑なissueがあることも確かです。しかし、ITリテラシーとベンチャー精神については、教育プロセスも含め、学ぶべき点の多いのではないでしょうか。ITとベンチャーの先進国である、イスラエルでハッカソンを実施する・・・、あながち荒唐無稽なアイデアではない。実は、トヨタや村田製作所は、イスラエルでハッカソンを行っているのです! ご存知でしたか?!

 

いやぁ、刺激的、刺激的・・・次回のコラムでは、Tさんとの世間話を通じて、私が感じたことをお話しし、このテーマの最終回としたいと思います。是非、ご期待ください!

 (次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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