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タカシの外資系物語

“センス” を後天的に手に入れる方法 (その2)2014.12.16

水野学さんが くまもん を生み出した手順とは?!

前回の続き) 「“センスのよさ” とは、数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力である。かつ、その能力は、生まれついてのものではなく、後天的に身につけることができるし、トレーニング可能である」 これは、くまもん等を生み出した売れっ子クリエイターである水野学さんが、自身の著書の中で主張されていることです(『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版))。これに対し、私の意見は全くの真逆。センスは生まれつきのもので、どうしようもない! ここは一丁、水野さんご自身に質問をぶつけてみることにしました。

 

まず、水野さんが 「センスは後天的に身につけることができる」とおっしゃっている 根拠 というか、ロジックについて、確認しておきましょう。彼の著書の内容を、私なりに解釈すると、以下のようになります。

 

(1)   “センスがいい企画” とは、“売れる企画” とほぼ同義

(2)   売れる商品・ヒット作のほとんどは、“普通” “常識” の延長線上にあり、突拍子もないものはほとんどない

(3)   にもかかわらず、世の中の多くのマーケターは、“センスがいい企画” = “普通・常識とはかけ離れた、尖った、斬新な企画” だと思い込んでいる

(4)   クリエイターの仕事の大半は、“普通” “常識” からスタートして、さらに “普通” “常識” を積み上げることで、新しいニーズにタッチしていく作業プロセスを指す

(5)   よって、その作業プロセスをマスターすれば、多くの人がそれなりの “センス” を持つことが可能となる(はず)

 

例えば、「くまもん」が誕生するプロセスは、次のようだったとのこと。

 

・   日本の都道府県名で、動物の名前が入ってる県って、あんまりないよね(鳥取、群馬等)。だったら、「熊本」は クマ で押すのが常識的(みんなが期待していること)だよね

・   日本で クマ っていうと、白くまよりは、黒いヒグマ だよね

・   黒一色じゃさみしいから、ホッペに色をつけたいよね。ホッペの色は、普通、赤 だよね・・・

 

「常識的」「普通」・・・ この繰り返しを愚直に進めた結果が、くまもん というわけです。ま、そう言われてみればそうなんですけど・・・ いまいち腹に落ちません・・・。

“ブランド” と “キャンペーン” の 違い

腹に落ちないままでは帰れない(眠れない)ので、私は水野さんに対して、以下2つの質問をしました。

 

【質問①】 センス とは後天的に体得可能で、常識的な作業プロセスの積み重ねだとおっしゃいますが、とはいえ、結果を見ると、明らかに個人差がある。この点については、どうお考えですか?

 

(水野さん回答) もちろん、センスの良し悪し はありますよ。つまり、うまい・下手はある。でないと、私がお金をもらう理由がなくなりますから・・・(笑) しかし、センスの有無、つまり1か0か、というのと、みんな持っているけれど、うまい人と下手な人がいる、というのは違いますよね。私は、相応の訓練を積めば、どんな人でも、ある程度までは行ける、と言っているのです。

 

【質問②】 水野さんは、「ヒット商品に突拍子のないものは、ほとんどない」とおっしゃいましたが、例えば、ダイソン社のファンのない扇風機(これは、水野さんが講義の中で例示していたもの)やガリガリくんのコーンポタージュ味なんてのは、かなり突拍子のないものだと思います。これについて、どのように解釈されていますか?

 

(水野さん回答) マーケティングにおいては、“ブランド型” と “キャンペーン型” という2種類のアプローチがあります。“ブランド型” というのは永続的なもので、センスの良し悪しが非常に重要です。一方、“キャンペーン型” は一時的なサプライズによって注目を集めることが目的なので、突拍子のないものも出てきます。センスの良し悪しよりも、目立つことの方が優先されます。ガリガリくんでいえば、ソーダ味 という確固たる “ブランド” があって、付随的に コーンポタージュ味 という “キャンペーン” を打ち、見事当たったというわけです。ただし、キャンペーンは一時的なものですから、ガリガリくんにおいて、ソーダ味とコーンポタージュ味の位置づけが逆転するようなことはないでしょう。

超保守的なタカシが、レディ・ガガを聴く理由

「企画を立てよう!」という話になると、とかく、われわれ凡人は、世の中にない・センスのいい・尖ったもの・・・ を生み出そうと意気込みます。しかし多くの場合、既存の製品に毛が生えたようなものしか考え出せず、「私にはセンスがない・・・(T-T)」 と意気消沈し、考えるのを止めてしまいます。

水野さんは、そこで思考を止めないで、「既存に毛が生えたようなもの」を、繰り返し、繰り返し、積み重ねなさい、とおっしゃっているのです。クリエイターというのは、その作業を我慢強くできる人であって、「芸術は爆発だ!」的な天才ではない、みんなよりも少しだけ執着心が強く、要領がいいだけだと・・・。

 

確かに、売れっ子クリエイターと言われる水野学さん、佐藤可志和さんとも、実際に会ってお話しすると、本当に、常識的な普通の兄ちゃんです。ただ、われわれと違うのは、常に “準備” を怠らず、常識を積み上げて good sense にまで持っていくプロセスが早い、要領がいい ということでしょう。例えば、水野さんは一月に、50冊以上の女性ファッション誌に目を通しているとのこと。もちろん、これはほんの一部であって、彼が定常的に押さえている情報源は、おびただしい数にのぼると思います。

一方、「センスがない・・・」と嘆いているわれわれは、日常的に、そのような “準備” をしているでしょうか? やれ、スティーブ・ジョブズは天才だ! だの、やれ、レディ・ガガのファッションはセンスがいい! だの、結果の表面だけを薄くなぞって、そこに至るプロセスの積み重ねには興味を示さない。水野さんの講義と著書は、そのことをわれわれに警告してくれているように思います。

 

私はレディ・ガガさんの大ファンです。一番のお気に入りは、『Hair』という歌で、歌詞も気に入っています。彼女の歌って、歌詞は多少奇抜なものもありますが、その音楽性は極めて王道を行っていて、本当にうまい! 飽きずに、何度でも繰り返し聴ける!! 彼女がキャンペーン的に、生肉の服を着たとしても、Musicとしてのレディ・ガガというブランドは毀損しない。 “センスがいい” とは、正にこういうことを言うんでしょうね。

 

さて、次回のコラムでは本シリーズの結びとして、「外資系企業における “センス” の考え方」 についてお話したいと思います。外資では、社員の “センス” をどのように認識し、また育成しようとしているのか・・・。ご期待ください!

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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