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タカシの外資系物語

“字幕の映画” は お好き?! (その3)2014.05.20

    人類は “ホンヤクコンニャク” を手に入れた?!

    前回の続き) 映画字幕の大御所である戸田奈津子さんから、「日本人は世界でも稀有な “吹替” よりも “字幕” を好む国民である。その背景には、日本人のホンモノ志向(母国語よりも、生の外国語を好む) と それを支える識字率の高さがあった。しかし1990年代以降、“CG” と “3D” が発明され、画面の鮮やかさを追うことを優先するために、字幕を読むのが面倒になった。よって、最近では吹替の方を好む人が増えている・・・」 という話を伺いました。確かに、大型シネコンに行くと、同じ作品で字幕・吹替の両バージョンを放映している場合があります。見ると、吹替の方が人の入りがいい・・・。この現象って、何だか重要な予見というか示唆を秘めているな気がするのです。今回は、そのお話をしたいと思います。


    ドラえもんの秘密道具の1つに、「ホンヤクコンニャク」というのがあります。これを食べると、外国人だろうが、宇宙人だろうが、相手の言っていることを理解することができ、こちらの言っていることも相手に伝えることができるというスグレ物。みなさんも一度は、「ホンヤクコンニャクがあればなぁ・・・」と思われたことがあるのではないでしょうかねぇ。 
    しかし、よくよく考えてみると、「ホンヤクコンニャク」とほぼ同じ機能は、すでに実現されています。10年以上前から翻訳ソフトは存在したし、今では、口頭で話したことを即時に多言語に通訳するようなソフトウェアや電話サービスも存在します。これらの機能は、スマホで行うことができるので、常に携帯できる。いつでも、どこでも、何度でも。ま、その言語が持つ特有のニュアンスや滑らかさといった部分では改良の余地はあるものの、われわれ人類は、「ホンヤクコンニャク」を手に入れたと言っても過言ではないでしょう。つまり、人類はテクノロジーの力を借りて、異言語間のコミュニケーションの壁を(一応)クリアしたわけです。

     

    英語の勉強、辞めますか?!

    だとすれば、ですよ。極端な話、もう英語の勉強など辞めてしまってもいいんじゃないでしょうか? 「いやいや、そうはいかないだろ!」と反論する方、あなたの言い分は、こんな感じですか?


    (1) いくらテクノロジーが発達して、ほぼ “即時” に翻訳できるようになったとしても、それは “瞬時” ではない。会話というのは、その瞬間、瞬間に対応するものだから、実際の人間が言葉を発する必要がある >>> なんかもっともらしく聞こえるのですが、これは理由として苦しいと思います。私の知る限り、会話している内容を伝え理解するという観点で、現状のテクノロジーよりも早く正確に処理できる人は、相当レベルの英語の達人、ほぼネイティブです。Sorry, uhh, woo, what can I say ・・・とか言っているうちに、機械は翻訳を完了していることでしょう。


    (2) ビジネスにおけるグローバル・スタンダードは依然としてアメリカであり、英語の勉強をするということは、コミュニケーションができるようになることに加え、アメリカ人の考え方を知ることに寄与するから >>> この回答はいいですね、私もそう思います。ちょっとペンディングにしておきましょう。ただ、1つ注意すべき点は、アメリカは既に、唯一無二のグローバル・スタンダードではなくなっています。この論理でいけば、英語に加えて、成長著しい中国やスペイン語圏の言語も勉強する必要が出てきます。ロシア語も知っておいた方がいいですね。私は面倒くさがり屋なので、英語だけで十分ですけど・・・


    (3) 苦手な英語を使って会話することで、パッションを伝えることができるから ・・・ あ、あのねぇ・・・ 実はこれも重要なことなんですけど、ここでの議論としてはハズしていますので、またの機会にお話しましょう。


    英語が世界標準語としての地位を勝ち得たのは、1900年以前に、イギリスが巨大な大英帝国圏を築いたこと、そして、早い段階で大英帝国圏から独立していた出世頭のアメリカ兄やんが、1900年以降に超大国として世界を席捲したことが、最大の理由でしょう。言い換えれば、過去300年以上、世界を牛耳っていた国の母国語が英語だったからです。 
    しかし、これは私見ですが、今後中国がアメリカを抜き去り、唯一無二の超大国となって、挙句には、アメリカやイギリスが “その他大勢” の国に落ちぶれたとしても、英語が世界標準であることに変わりはないと思います。 
    なぜか? それは、世界中の言語の中で、英語が “最も簡単な言語” だからです。もちろん、ここまで英語が使われてきた以上、アメリカが落ちぶれても、惰性で英語が使い続けられるという面はあるでしょう。しかし、それは本質的な理由ではありません。 
    私を含め、多くの日本人は英語の習得に四苦八苦しています。何十年勉強しても、英語ができるようにならない。だから、英語が 最も簡単な言語 だなんて信じられない・・・ と思われるかもしれません。しかし、習得できないこと と 言語の容易性 には相関はありません。日本人が何年かかっても英語を習得できない理由は、教え方・教わり方が めっちゃ下手、しょこたん風にいえば、ギガ下手 なだけです。日本人の教え方・教わり方で、アラビア語など難解な言語を習得しようとしたら、それこそ、何百年かかるかわかりません。この話も話せば長くなるので、またの機会といたしましょう。

    あなたは “異文化コミュニケーション” ができていますか?!

    「もう英語の勉強など辞めてしまってもいいんじゃないでしょうか?」 私は、辞めてはいけないと思います。日本人にとって、英語というのは、異言語間コミュニケーション 実現するための “手段” です。仮に、テクノロジーがどんどん進んで、瞬時に口頭で話すのと同じぐらい翻訳技術が進んだとしても、英語の勉強を辞めてはいけません。その最大の理由は、過去300年において世界を形作ってきた超大国の考え方・文化を理解しなければならないからです(しょうもない話をすると、スーパー翻訳マシンが、本当に適切な翻訳をしているかどうかをチェックする最低限のスキルも必要です)。 
    そういう意味では、われわれ日本人は、隣国であり、超大国になりつつある中国のことをあまりにも知りません。中国語および中国を含めたアジア通史をいかに身につけるか、というのは、教育界の大きな課題だと思います。


    イノベーションという観点で、私はFacebook よりも LINE を評価しています。その理由は、LINEは、“絵文字” を使うことで、異なる言語間のコミュニケーションに成功しているからです。笑顔の絵文字を見れば、世界中どこにいっても、この人はうれしいとわかる。泣き顔の絵文字を見れば、悲しいとわかる。LINEの絵文字というのは、英語に次ぐ 世界標準語 になる可能性を秘めています。


    さて、私はこれまで、意識的に 「異言語コミュニケーション」 という言葉を使ってきました。これは、「異文化コミュニケーション」とは違います。「異言語コミュニケーション」のゴールは、お互いの意思疎通です。だから、最も有効なツール ~ 英語、翻訳ソフト、絵文字 ~ を使えば事足ります。しかし、「異文化コミュニケーション」のゴールは、お互いの文化を理解し、尊重し、いい部分を学び取り込み、悪い部分を排除することにあります。 
    私は、字幕映画というのは、「異文化コミュニケーション」 が凝縮されていると思っています。画面に映っているのは、その映画が作られた国の流行・考え方等、文化そのものです。その国の文化を象徴する画面中に、「これを日本に置き換えたとしたら・・・」 という観点を踏まえて、字幕が出ているのです。つまり、字幕というのは、日本の文化を土台にし、言語のみならず、相互の文化まで翻訳してくれているのです。こんな絶好の教材を見逃すのはもったいない。よって、私は字幕映画を推すのです。


    戸田奈津子さんは、こんなこともおっしゃっていました。


    「英語が得意なので、翻訳の仕事がしたい! 私は、翻訳が得意なはずです! という若い方が、弟子にしてくれと、よくお見えになります。でも、そういう人(英語に自信がある人)は字幕翻訳には向きません。字幕翻訳に必要な能力は、「英語=3」 に対し 「日本語、というか、日本についての理解=7」 くらいの配分です。翻訳家の中には、英会話がからっきしダメな人もいるし、辞書がないと仕事が全く進められない人もいます。でも、日本についての理解はだれにも負けない! という自負を持っている人がほとんどです・・・」


    外資系で成功する人も同じような気がします。では

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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