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タカシの外資系物語

タカシ流英語上達法2004.09.09

英語から逃げない

今回は、英語の話をしたいと思います。実はこれまでにも、このコラムでは何度か英語の話題を取り上げてきました。(『英語の重要性 ( 1 ) ( 語学は必須 ? )』 、『英語の重要性 ( 2 ) ( 英語が必要な場面とは ? )』 、『外資系における「英語力」再考』参照 )


それらの結論としては、

・ 外資系では、英語力よりは業務知識・スキルを要求される

・ 発音がうまくてもビジネス現場では通用しない

・ いざとなれば、身振り手振りで何とかなる


という具合に、「ま、英語が不得意でも、気合で何とかなりまっせ !」みたいな感じで終わっていました。自分で結論付けておいて言うのもなんですが、本当にそうなのでしょうか ?


「英語が全くできないんですが、外資系に転職できますかね ?」なんていう質問を、よく受けます。実は、冒頭の「何とかなりまっせ」の裏側には、重要な「前提」が隠れています。それは、「英語が得意であろうが不得意であろうが、英語から逃げている人は外資系では働けない」ということです。


具体的に話をしましょう。よく、「オレは英語が苦手だから …… 」とばかりに、英語の文書に目を通そうとしなかったり、外国人との会話を避ける人がいます。しかし、これでは外資系で仕事なんてできません。外資系では、


I can not speak English! ( 私は英語が話せません ! ) 
と言った瞬間に、


I do not feel like doing the business with you! ( あなたとは仕事をしたくない ! )


と言っているのに等しいことになります。これでは話になりませんね。相手の気持ちだって萎えてしまうに違いありません。外資系というのは英会話のサークルではなくて、「企業」です。企業とは、結局のところ稼いでナンボの世界です。英語が不得意であろうが、そんなハンデを乗り越えて、ガンガン稼げばだれも文句を言いません。


しかし、稼ぐためには英語から逃げるわけにはいかないのです。いずれにせよ、最も重要なことは英語から逃げないこと。そして、今まで日系企業に勤めていて、英語を本格的に勉強したことがない方が外資系企業に転職する場合には、それこそ「死にものぐるいで」英語を勉強する覚悟を持たれた方がいいと思います。

 

立場によっては通じない ?

え ? じゃあ、お前はどうだったんだ、って ? 私も英語についてはかなり苦労しました。外資系企業に転職後、初めて海外で長期間仕事をしたときには、ストレスで「椎間板ヘルニア」になってしまいました ( 未だに完治せず、トホホ …… )。それに加え、情けないことに、前職の銀行員時代にシステム部の海外部門やマーケット部門のディーラー ( 業務上の会話はほとんど英語 ) を経験して、それなりに英語を使う環境にいたにもかかわらず、そこでの経験は思ったほどには役に立たなかったのです。


日系の銀行員時代と外資系での一番の違いは、自分が置かれている「立場」の差だと思います。銀行員時代は、私は本社 ( Head Quarter ) の「えらいさん」で、話す相手は自社の海外支店にいるローカルスタッフ ( 現地で採用された人 ) が中心でした。おそらく、私がどれだけ下手な英語を話そうが、彼らローカルスタッフは必死で聞き取ろう、理解しようとしてくれていたに違いありません。つまり、大した英語力もないのに、英語ができるような錯覚をおこしていたのです。


しかし、外資に転職後は、自分の「立場」が大きく変わってしまいました。まず、本社はアメリカにあるわけですから、私は日本のローカルスタッフの 1 人に過ぎません。本社の連中と話す場合でも、向こうが私のレベルに合わせてくれるわけではなく、こちらが合わせる必要があるわけです。また、相手が顧客 (client) の場合には、事態はもっと深刻です。


私の仕事は、基本的に各人の時間単価を顧客にチャージしています ( 時間単価 1 万円で 10 時間働いた場合、10 万円請求という具合 ) ので、顧客も限られた時間の中で、できるだけ多くの仕事をやらせようとします。そんな状況で、「Pardon ? Pardon ?」と何度も聞き返すような人物が 1 人でも混ざっていると、話にならんわけです。

仕事で使うフレーズを記憶する

私も、顧客が外国人の場合には、「アイツをクビにしろ !」と何度となく言われました。そういう危機を克服するためには、翌日の打ち合わせ予定の資料を読み込んだり、自分に質問が来そうな部分を英語で即答できるようにあらかじめ準備したりと、それこそ寝る間を惜しんでやったものです ( 今もそうなんですがね )。


ですから、私はいまだにアドリブの英会話には弱いですが、自己紹介とか、ある特定分野の説明だとか、そういうのはめちゃくちゃ流暢に話します。自己紹介のときだけ威勢がよくて、その後はシュンとしてるわけですから、何となく情けない感じなのは事実ですけど。


しかし、そもそも英会話というのは特定フレーズの組み合わせに過ぎないわけですから、要は自分の口からスラッと出る表現をいくつ持っていて、それを組み合わせて使う機会を何度得たかというので決まるのだと思います。なので、ある程度の数のフレーズが頭にないと、相手とコミュニケーションするのは難しいわけです。また、記憶すべきフレーズも、本屋さんで売っている英会話本の文章ではなく、自分の仕事に直結したものでなければ、いざというときに応用がきかないと思います。

知識と実用英語との「ギャップ」

一方で、自分の努力で何とかなる部分とは別に、経験を積まないとどうしようもない部分もあります。つまり、どれほど多くのフレーズを記憶していても、それを使う機会がなければ、実践では役に立ちません。学生時代に覚えたつもりになっている単語や熟語でも、実際の会話においては自分の想像をはるかに超越した恐るべき発音が繰り出されるケースがあります。


これは私がロンドンで仕事をしていたときのこと。私は毎朝、Tube ( チューブ ) と呼ばれている地下鉄で会社に通っていたのですが、ドアが開くたびに、車掌さんが次のようにアナウンスしているのです。


「マギャ !」


? ? ? 一体、何を言うとるんですかいのぅ、ポリポリ …… 何かの呪文でしょうか ? それとも、カエルでも踏んづけたんでしょうか……


で、ある日。電車を降りようとした私は、あることに気づきました。


「ロンドンの地下鉄って、電車とホームの隙間が開いていて、危ないなぁ …… あっ、そっか !」


「マギャ !」というのは、Mind the Gap! つまり、「隙間に気をつけろ !」と言っているわけです。学校では、こんな発音教えてくれません。私が想定していた「Mind the Gap!」の発音は、「マインド ザ ギャップ ! 」であって、「マギャ ! 」ではないわけで、こんなもの実際に聞いて経験してみなければ身につかんわけです。


こんなこともありました。一緒に働いていたイギリス人の同僚、この人、「仕事が多い、時間が足りない、休ませろ !」と、ことあるごとに文句を言っていました。で、その同僚の「文句」の中に、いつも登場するフレーズがあったのです。


「バンチオーワー !」


? ? ? 一体、何を言うとるんですかいのぅ、ポリポリ …… ロンドンで流行中の合言葉 ? それとも、マジンガー Z の「ロケットパンチ」( ふ、古い …… ) を食らわしたいぐらい忙しいと言っているのでしょうかね ……


正解は「bunch of work」。「bunch」というのは、「房・束」という意味で、要するに「仕事が束になるぐらいたくさんあるよー」ということが言いたいわけです。こんなもの、学校では習わないし、英会話本にも載っていません。しかし、私が働いていた職場では、「much work」でも「many tasks」でもなく、「バンチオーワー !」が使われていたわけです。これも、経験しなければわからないことですね。

やっぱり英語は難しい ?

ズラズラと書き綴ってみましたが、要は外資でやっていくために必要な英語力を身につけるためには、以下の心構えが必要だということです。


(1) ( 英語が得意、不得意にかかわらず ) 英語から逃げない


(2) ( 英語が不得意な人は特に ) 必死に勉強し、実務で使う可能性の高いフレーズ ( 文章 ) を覚えこむ


(3) 実際に経験する


上記のうち、(3) については、自分の努力では何ともならない部分もあります。外資系企業に転職したら、まず (1)(2) の精神を忘れずに、当面の間は実際の経験を通してスキルアップをはかることが重要だと思います。


「Takashi! TAKASHI!」


2 ヶ月前から私の上司になった Neil 氏。大声で私を呼びつけています。この人の英語、機嫌の悪いときは超早口で何言ってるんだかわからなくなるんですよね ……


「Hi, Neil!」


「Takashi ! I’m disappointed XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX perapera ~」


い、いかん ……「disappoint」しか聞き取れん …… おそらく怒られてるんじゃろう……


「You said XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX perapera ~」


オレが何か言ったんだろうなぁ …… 適当なこと言っちゃったかなぁ……


「You, OK?」


「オ、オーケー ……」


しまったぁ …… Neil の勢いに呑まれて、内容もわからずに「OK!」って了解しちゃったよーー !


ま、ネイティブの Neil と私の間には、まだまだ英語力の「隙間」が存在しているってことですな …… まさに、


「マギャ !」


ってことで。トホホ ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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