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有元美津世のGet Global!

外資・グローバル転職で役立つ英語表現(50)-- Microaggression(後)2024.04.09

 

今回は、どのような言動がmicroaggressionと見なされるのかを紹介しましょう。

 

1)You speak English very well. You speak excellent English. (英語がとてもうまいですね。)

 

アジア系アメリカ人の多くが、これを言われたことがあります。アジア系に限らず、ヒスパニック系や他の移民2世以上になると、英語しか話せない人などいくらでもいるにもかかわらず、です。

大学教授でも、これを学生から言われることがあると聞いて驚いたのですが(失礼極まりない)、その教授は、”Thank you. I hope so. I was born here.”(ありがとう。そうだといいけど。この国で生まれたので)と言い返すそうです。

アメリカ生まれでなくても、子供のときにアメリカに移民していれば、通常、英語ネイティブです。前回、出てきたベトナム系アメリカ人ですが、私の周りにも、2~4歳でboat peopleとして(香港の難民キャンプを経て)アメリカに渡った人などいくらでもいます。彼らの多くは、ベトナム語は少し話せても、流暢ではないのです。

アメリカの白人の多くが、「アメリカでは移民は誰でもアメリカ人として扱われる」と信じていますが、見かけ(人種)によっては、いつまでも外国人扱いを受けるのです。「日本に人種差別はない」という日本人と同様、マジョリティに属するために差別・偏見が見えていないだけです。

・「日本語お上手ですね」

日本に長年住んでいる外国人(または元外国人)にも、何百回と「日本語、お上手ですね」「お箸、使うのうまいですね」と言われ続けて、ウンザリしている人たちがいます。(日本に住んだことのない人でも、正しくお箸を使える人はたくさんいますし…。)

コロナ禍、入国規制をした日本が、海外からの観光客に対して、"開国"(制限を解除)することが決まると、彼らは「あ~、また観光客扱いされて、日本語、うまいですね、とか言われるんだろうなぁ」と嘆いていました。

「誉め言葉なのだからいいでしょ」と思うこと自体がmicroaggressionです。その国で生まれても、何年住んでも、こういうことを言われ続けること自体が、いつまでも”よそ者”(outsider)としか扱われないという証なのですから。

 

2) Where are you (really) from? (どこ出身?本当は、どこで生まれたの?)

 

1)と同様に、アジア系アメリカ人がよく浴びせられるのが、この質問です。10年以上前に作られた多様性についての啓発ビデオ(What kind of Asian are you?)が、YouTube にありますので、興味のある人は見てください。

このビデオは、ジョギングしているアジア系女性(F)に通りがかった白人男性(M)が話しかけるところから始まります。

M: ”Where are you from? Your English is perfect.”(どこ出身? 英語、完璧だね。)
F:  “San Diego. We speak English there.”(サンディエゴ。サンディエゴでは英語、話すから)
M: 話す速度を落とし手振りを添えて“Oh, no, where ARE you from?”(ど・こ・の・しゅっしん、かってこと)
F: “Well, I was born in Orange County, but I never actually lived there.”(オレンジ郡で生まれたけど、実際には住んだことない)
M: “I mean, before that”(その前の話)
F: “You mean before I was born?”(私が生まれる前の話ってこと?)
M: “Well, where are you PEOPLE from?”(あなたたち[一族]は、どこから来たのかってこと)
F: “Well, my great grandma was from Seoul”(う~ん、私の曽おばあさんはソウルで生まれ)
M: “Korean. I knew it. She’s either Japanese or Korean. I was leaning more towards Korean.
(韓国人。そうだと思った。日本人か韓国人だと思ったんだよな。多分、韓国人だとは思ったけど。)

その後、男性は、胸の前に手を合わせてお辞儀をし、意味不明の言葉を発します。(世界には、アジア人は、皆、胸の前に手を合わせてタイ式のお辞儀をすると思っている人たちは多い。)

この後、女性の方が”What about you? Where are you from?” と聞くと、男性は”San Francisco”

男性に聞かれたように、女性が”Where are you FROM?”(本当は、どこの出身?)と聞くと、

M: “I”m just American.”(僕は、アメリカ人だよ)
F: “Really? You’re native American?” (ホント、アメリカ先住民ってこと?)
M: “No, just regular American”(いや、普通のアメリカ人)


つまり、この男性にとって、アジア系アメリカ人は”普通の”(一般的な)アメリカ人ではないということです。

アジア系アメリカ人で、こういう経験をしている人は多いのですが、ヨーロッパに旅行すると、もっとこういう体験をするらしいです。アメリカ人というのは、白人か黒人しかいないと思っている人が多いようで...

最近、オーストラリアの人にもアジア系の人が増えていますね。見かけがアジア人だからといって、アジアで生まれ育った、アジアの言語が話せるとは限らないのです。

 

3) He’s good-looking for a black guy. (彼は、黒人男性にしたらイケメン。)

 

これは、実際に、在米のイラン人の知り合いが黒人男性に関して放った言葉です。これも、本人は誉め言葉のつもりで言ったのです。黒人の俳優やモデルでイケメンの人などいくらでもいるというのに… (私は、超美形の黒人男性をカリフォルニアで目の前で見たことがあるが、ちょうど日本から遊びに来ていた母も見とれていた。)

これを面と向かって言われる人もいるようで、

“You’re pretty for a black girl.”(黒人にしたらきれいだね)と白人に言われたら、
“You’re pretty for a white girl.”(白人にしたらきれいだね)と言い返す黒人女性もいるようです。

 

4)その他

 

日本であれば、とくに黒人の間で「電車で隣の席が開いていても誰も座ろうとしない」という声がよく聞かれます。初めてアメリカを訪れた日本人の若者が「飛行機で両側に黒人男性が座って、挟まれて怖かった」と”無邪気に”発言していましたが、これもmicroaggressionです。

アメリカであれば、黒人の場合、店に入った途端、万引きするのではないかと疑われ、ずっと店主や店員について回られるといった経験です。父親がアフリカ系アメリカ人で母親が日本人の大学教授の友人も、そうした体験をしていました。オバマ元大統領も、自分が道を通ると、停まっている車が一斉にドアをロックするのが聞こえる、と言ってましたね。

ちなみに、大学教授の友人は、黒人よりも南太平洋系に見えるので、ある日、仕事のアポがあってレストランに行ったところ、余興のダンサーと間違えられて、「着替えはあっち」といって誘導されたそうです。

また、日本では、在留外国人の数が過去最多に達し、その大半がアジア系であるにもかかわらず、未だに「外国人=白人」と思っている(刷り込まれている?)人は少なくないと感じました。「外国人」「海外」というテーマで、白人の写真ばかりが使われるのも、その表れです(同僚など自分の周りにいる外国人の多くがアジア系でも、そうした写真を選ぶ自分の偏見に気づいていないケースもあります。)「外国人=白人」という投影(projection)(「アジア人の透明化」の日本版)は、inclusiveでなく、白人でない在留外国人に対するmicroaggressionと言えるでしょう。

なお、ここで挙げた例は、ほんの一部です。海外とのやりとりに限らず、今は、日本でも海外にルーツのある人たち、”従来の日本人”には見えない日本人が増えています。人とのやりとりにおいて、「ひょっとして、これはmicroaggressionなのではないか」と少し立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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