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有元美津世のGet Global!

外資・グローバル転職で役立つ英語表現(5)- Racial Profiling2021.12.21


 今月初めに、東京のアメリカ大使館が、下記のような異例のツイートをしました。

The U.S. Embassy has received reports of foreigners stopped and searched by Japanese police in suspected racial profiling incidents. Several were detained, questioned, and searched.

(米大使館には、日本の警察によって外国人が呼び止められ、所持品検査を受けるというレイシャル・プロファイリングと思われる事案が報告されている。拘束されて、職務質問を受け、所持品検査を受けた人たちもいる。)
 そこで、「アメリカ市民は常に在留証明書(在留カード)を携帯し、拘束された場合は領事に連絡するように」と警告しました。*
 この件は、すぐにアメリカのメディアで流れ、在日外国人のコミュニティでも話題になっていました。(「職務質問なんて、しょっちゅう行われているのに、大使館がわざわざ公にしたということは、警察が大使館職員を職務質問して逆鱗に触れたんじゃない?」という声も。)
 BLM(Black Lives Matter)は、日本でも話題になりましたし、その関連で”racial profiling”という言葉を聞いたこともあるかと思います。Racial profilingとは、「その人の人種や民族、出身国などをベースに嫌疑をかけ、職務質問や捜査を行うこと」です。
 主に警察による行為に対して使われますが、他の場合に使われることもあります。たとえば、昨年、アメリカで黒人男性が口座を持っている銀行で給与の小切手を換金しようとしたところ、「お宅らは、いつも偽小切手を持ってくる」と言う支店長に警察を呼ばれ、警官に手錠をかけられたという事件がありました。この場合、racial profilingを行なったのは、銀行です。
 店に入ると「万引きするのではないか?」と店主や店員につけ回されるという体験をした有色人種は、私の友人を含め、アメリカにゴマンといますが、こうした行為もracial profilingと言えます。また、アメリカでは、昨年、ジョギングをしていた黒人男性を空き巣常習犯と決めつけ、3人の白人男性がトラックで追いかけて銃で撃ち殺した事件がありましたが、これもracial profilingとされています。
 つまり、証拠があるわけでもないのに、「黒人=犯罪者」という偏見から、日常の生活を送っているだけで疑われるということです。

動詞「Profile」 


 Racial profilingは、下記のように”racial profile”という動詞としても使われます。動詞の”profile”は、「輪郭を描く」「人物像を描く」という意味です。 つまり、”racial profiling”とは、「人種を基に人物像を描くこと」ということです。
 FBIに”profiler”という職種がありますが、犯罪の特徴に基づいて「犯人像を描く人」、日本語では「犯人心理分析官」と呼ばれています。
 なお、profile/profilingの発音は、日本語でも「プロフィール」でなく「プロファイリング」という表記になっているように、”ai”の発音です。

Police officers are believed to frequently racially profile people with foreign roots.
(警官が、外国にルーツを持つ人たちのレイシャル・プロファイリングを頻繁に行っているようだ。)

Since 9.11, Muslims or middle-eastern looking men have often been racially profiled at airports.
(9.11以降、イスラム教徒や中東系に見える男性が、空港でレイシャル・プロファイリングに遭うことが多くなった。)* 前回、書き忘れたが、イスラム教徒に対する嫌悪、恐怖症は、Islamophobia。

I was racially profiled and questioned by police.
(私は、警察にracial profilingに遭い、職務質問を受けた。)

 この例にあるように、「職務質問」は、英語では”questioning by police”です。

日本国籍でも


 今回の事態は氷山の一角であるにもかかわらず、「政府は調査する気はないようだ」ということで、東京弁護士会が、日本で警察によるracial profilingが、どれくらい蔓延っているかの実態を調査すると発表しています。(「日本人だって職質される」という声もありますが、「外国人をターゲットにしているわけではない」ということを証明したければ、警察が統計を開示すればいいのでは?)
 上記の例文で、「海外にルーツをもつ人」という表現をしましたが、それは、外国籍の人だけではなく、日本生まれ、日本国籍でも、外見が日本人っぽくないと外国人扱いされて、頻繁に職務質問に遭うという人たちがいるからです。「(父親が日本人でない)うちの子は、しょっちゅう職務質問される。自宅の前でもされたことがある」という人もいます。日本国籍なので、在留カードは所有していないのですが、提示するようにしつこく言われて困るというようなことが起こっているわけです。
 法的には、職務質問、任意同行に応じる義務はまったくないのですが、拒否すると「警官の人数がどんどん増え、取り囲まれた」という体験をしている人もいます。(アメリカで拒否すると、警官に撃たれる可能性があるので、黒人家庭では、息子が10代になると「警官に止められた場合は、抵抗せずに、言われたとおりにすること」と、命を守るための術を教える。)

XenophobiaとRacism


 前回、xenophobia(外国人嫌悪)について書きましたが、「Racism(人種差別)とは、どう違うの?」という人もいるでしょう。人種差別には、ある人種は優れていて、ある人種は劣っているという差別意識が強い一方、xenophobiaは、phobia(恐怖心)というくらいですから、異質なものに対する「恐怖」がメインの感情です。日本人の外国人に対する偏見の根底にあるのは、まさに、これだと思います。(他のアジア人に対しては、相手は劣っているという差別意識が強いが。)
 黒人差別が人種差別であることは明白ですが、たとえば、コロナ禍で、欧米でアジア系が襲われたりするのは、黄色人種であるという人種ベースのracismだけでなく、多くの欧米人にとっては、アジアは、まだまだ得体のしれない(未開で野蛮な)異国ですので、xenophobiaの側面もあるでしょう。
 このように、racismとxenophobiaには重なっている部分もありますが、どちらにしても偏見(prejudice)に基づいているということです。
 ところで、前回の件、日本に住む外国人には、今の日本の状態を「鎖国2.0」と呼び、「開国させるために”黒船2.0””ペリー提督2.0”が必要だな」と言っている人たちもいます。(大喜利状態。)
 

 

 

* 「身分証明書としてパスポートを携帯すべきだろう」という人たちがいるが(自国の制度すら知らない人が多すぎ)、今、観光客や出張者などの短期滞在者は日本に入国できないので、日本にいる外国人は在留資格のある中長期在留者。在留カードの携帯は義務付けられている。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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