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元・外資系人事部長のグローバル人材塾

多様性で一番インパクトが大きいのは宗教 : 正統派ユダヤ人と仕事する2015.11.17

 

元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。

 

皆さんは多様性と言われて、何を思い浮かべますか?

 

日本にいるとつい、「性別」に終始してしまいがちです。男性優位の社会で女性が活躍するにはどうしたらいいか、女性社員の出産・育休にどう備えるかなどです。もちろん非常に重要なテーマですが、これだけが多様性(Diversity)ではありません。

 

人種・習慣・LGBTなど、今やボーダーレスな国際社会において多様性はそれこそ様々な要素を含みます。

 

外資系人事で25年間仕事をした私が、職場に一番インパクトを与える多様性の要素は何かと聞かれれば、迷わず「宗教」と答えるでしょう。

 

NYマンハッタンに本社がある米系・証券会社に勤めていたときのお話を、今日はシェアしたいと思います。

 

私は28歳でトレーニング・マネジャーとして採用され、セクションの立ち上げを任されていました。研修部門を立ち上げるにあたり、社内のニーズの洗い出しを徹底的に行い、欠けている研修を補うべく、まずはNYの本社にいる同僚二人に講師として来てもらうことにしたのです。社員の英語レベルはかなり高く、講師が英語のネイティブスピーカーでも問題ない環境だったからです。

 

彼らは正統派ユダヤ人とのことでしたが、その意味することを全く知らなかった私は、気にもとめまていませんでした。

 

ところが!

 

まずは食べ物から大問題です。Kosher(コーシャー)という、定められた調理器具で定められた調理法にのっとって料理された食べ物しか口にできないということがわかりました。私はびっくりして、日本法人にもいらしたユダヤ人(正統派ではない)の方に伺ったところ、広尾にユダヤ教会があってそこに併設のレストランがあるので聞いてみたらとアドバイスしてくれました。

 

電話してみたところ、テイクアウトが出来ないとのこと。職場が大手町で宿泊先が日比谷の帝国ホテルの二人にとって、全く現実的ではありません。

 

NYにフィードバックしたところ、彼らは彼らで東京の多様性の無さに驚いたようでした。NYなら、レストランは勿論、真空パック、缶詰、冷凍食品すべてKosherで揃うので、大都市・東京に本当に無いのかと何度も聞かれてしまいました。

 

無いものは無いので次の手です。スイスのチューリッヒにエアラインの機内食をおろしているKosher専門の会社があるので、そこに電話してみてくれることになり、ある晩、テキストのコピーを山のようにしながらスイスが朝を迎えるのを待ち、電話してみました。答えは、「機内食しか扱ったことがないので、エアラインに電話して欲しい。」とのことでした。

 

出張者の食べ物のことで、秘書でもないのに私がなんでこんなに苦労しないといけないんだろうと、若かった私は切れかかりながら(笑)、翌日、某エアラインのカスタマーサポートにお電話しました。

 

お返事は、「ご事情よくわかりましたのでなんとかお助けしたいのですが、機内食は書類上、日本に上陸したことになっていないのです。物理的には成田の近くの倉庫に保管されているのですが、日本に存在しないことになっているものをお譲りすることはできないのです。」でした。

 

これは本気で困りました。NYに結果を報告すると、真空パックのKosherを16箱空輸で送ったとの返答が戻ってきて、私はほっとしました。

 

束の間のぬかよろこびのあと、香港の税関から連絡がありました。羊の肉がひっかかったのです。当時香港は羊の肉、輸入禁止でした。私は、「マトンの箱は廃棄してもらっていいので、残りの14箱を成田に送り出して欲しいと頼みました。

 

やっと成田まで届いたと聞き安堵していたら、次の試練です。税関が箱を開けると言ってきたのです。こっそり開けて閉めてもらえばわからないのではとも思いましたが、念のためにNYにお伺いを立てたらとんでもないことが判明!

 

箱を閉めるときにお祈りをしてあり、いったん開けた箱に入っているものは全て食べられないそうなのです。絶対絶命。若かった私は正攻法で行ってしまい、事情を話して何とか一箱だけ開けて通してもらおうとしたのですが、怪しまれて「全部開けます」の一点張りです。

 

最悪、成田の税関を通すことができなかったら、日本で食べられるものは何かを尋ねてみたところ、生の野菜と果物という返事が戻ってきました。

当時、Google検索は存在しなかったので、大手町の交番に行き、大手町に八百屋さんがあるかどうかを一応聞きましたが、地価を考えたら存在するはずもなく、いざとなったら、私の自宅の近くのスーパーで野菜や果物を買って、2週間、帝国ホテルに運ぶしかないだろうという事態にまで至りました。

 

最後の手段として、彼らがスーツケースに真空パックの食べ物を詰めて入国を試みることになりました。万が一、空港の税関で止められてスーツケースが開けられ取り上げられたら、そのときは2週間、生野菜と果物を私がホテルに運ぶという覚悟の上です。

 

このときに限り神様がお助けくださり、彼らは無事空港を出ることができました。

 

「宗教」が職場に与えるインパクトの大きさを5週間感じ続けた貴重な体験で、それ以降、オリンピック・イヤーになるたびに、選手村のフードコーディネーターはどうしているだろうかと想いを馳せています。

 

大変でしたが、多少のカルチャーショックは平気になったので、どんな経験も決して無駄にはならないとポジティブに受け止めています。皆さんも、宗教の違う同僚やゲストを迎えるときにはくれぐれも気を引き締めてください。

 

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この記事の筆者

鈴木美加子
グローバル人材プロデューサー/(株)AT Globe 代表取締役

日本GEに入社して人事のキャリアをスタートさせ、モルガンスタンレーなどを経て、日本DHL人事本部長を務める。帰国子女でも海外赴任経験者でも無いが、TOEIC960点をマークし外資系でキャリアアップした自身の経験から、「なぜ」を細かく説明出来るところを強みとする。世人塾の他、グローバル・コミュニケーション、異文化マネジメント、リーダーシップ、組織分析など企業研修を行っている。

株式会社AT Globe http://atglobe.jp/

英語でロジカルに発表・主張できるグローバル人材を一人でも増やし母国を元気にすることをミッションとし、世界で活躍する人材を育てる塾(世人塾)を中心に、法人・個人向けのグローバル人材育成事業を行う。

 

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