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タカシの外資系物語

当世 “セミナー” 事情から見る日本社会の大変化(その3)2016.07.19

タカシ、会社のお金で、ロスの研修に参加!

 

(前回の続き)最近、セミナー・研修に自費(自腹)で参加する人が増えています。これまでも、英会話や簿記など、将来を見据えたスキルアップのために、自己投資をする人は多数存在していたと思います。しかし、最近の “セミナー自腹ブーム” の特徴は、従来なら企業が費用負担するような、業務スキル・個別スキルの習得を目的としたものも対象としていることにあります。参加者の動機は一体何なのか?その背景を探る前に、“セミナー自腹” 先進国であるアメリカの状況についてご説明することにいたしましょう。

 

私はこれまでに数回、研修・セミナーを受講するために、アメリカに行ったことがあります。研修の受講費用はもちろんのこと、交通費・宿泊費含め、全て会社が負担してくれました。それが当たり前だと思っていましたし、仮に、自腹で行かなくてはならないとしたら、私は行かなかったと思います。なぜなら、業務上必要だから行く、つまり、会社の利益のために出張するわけですから、会社が費用を負担するのが当たり前だと考えていたからです(というか、それ以外の発想というか、選択肢は、当時の私の頭にはなかったので・・・)。

 

今から10年ほど前のこと・・・、あるソフトウェアの研修でロサンゼルスに行った際に、私は上記以外の考え方があることを知りました。そのソフトウェア(このソフトを、‘ABC’ と呼ぶことにします)は、社員の労働生産性を計測することを目的としたもので、当時はちょっとしたブームになっていました。

ソフトの設定は大して難しくないのですが、その前提として、社員の業務プロセスを分析して可視化する必要があったため、導入を検討している日本企業の多くは、外部のコンサルタントに支援を依頼していました。私はABCソフトの導入コンサルティングを拡販する目的で、当時所属していたコンサル会社から研修に派遣されたわけです。

 

一方、欧米、特にアメリカでは、外部からコンサルタントを調達するのではなく、社内に抱える会社が多い。社内か、社外か・・・というのは一長一短があるため、一概には言えませんが、雇用の流動性が高いアメリカでは、ある領域に特化したコンサルタントを内部に抱えることに、それほど抵抗感がないようです(用済みなれば、クビにすればいいので)。私が参加した研修にも、世界的に有名な銀行や保険会社からの参加者が多数いました。私と同じグループで研修を受けることになった Mさん(アメリカ人女性)も、X保険の方でした。

 

アメリカ人のMさんが、自腹で研修に参加する理由とは?!

 

私 「日本の○○コンサルティングから参加しているタカシです。よろしくお願いします。」

Mさん 「X保険の M です。よろしく・・・」

私 「ロスは初めてなんですが、気候も温暖でいいところですね・・・」

Mさん 「・・・(シーーーン!)」

私 「どこか、“ここだけは行っておけ!”的な、おススメの場所って、ありますか?」

Mさん 「・・・ ・・・ (超 スィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!)」

私 「(T-T)(T-T)(T-T)!!!」

 

・・・ま、こういうのはよくあることなので、あまり気にしてはいけません。特にアメリカ人は、自分にとってメリットがあると確信できるまで、懇意にはしてくれないものです。

 

実際、研修でのグループワークが進むにつれ、Mさんとも会話ができるようになってきました。実は私、多国籍のグローバルチームにおいては、結構、重宝されるのです。なぜか?それは、「計算(暗算)が

速くて正確」だからです。これは、小学生の頃習っていた そろばん のたまものです。インド人のように、二けたの九九は覚えていませんが、二けた程度であれば、リアルに暗算できるので。日本ではこの程度の計算名人はそれなりにいるのですが、ロスにはおらんということですな、ガッハッハ!

 

話を戻します。Mさんによると、この研修を受講するために、有給休暇を取って、会社を休んでいるとのこと。加えて、費用は自腹!20万円以上かかるんですが・・・、と 本人に尋ねてみると、次のような回答が返ってきました。

 

「うちの職場で、このソフトの採用が決まっているのよ。このセミナーを受講して、ABCソフトの中身と関連するコンサルティング・スキルについて学べば、マネージャーとして抜擢してくれるかもしれない・・・。ま、それは無理としても、今のルーティン業務から離れて、もっとクリエイティブな仕事に就けるチャンスが来るかもしれない。そうなったら、研修費用の20万円なんて、すぐに回収できると思うわ!」

 

日本人と日本企業に足りないものとは?!

 

冒頭で述べた通り、アメリカ人の多くは、自腹で研修を受けることが多い。その理由、モチベーションを尋ねると、「投資をすぐに回収できる算段があるから」と答えます。おそらくMさんは、有給が明けて、職場に復帰すると同時に、自分が自腹で ABCソフト の研修会に参加したこと・自分にはABCソフトのスキルがあるということを、上司に対して猛烈にアピールするに違いありません。そして、上司の方も、そのアピールを聞き入れ、評価する準備ができているわけです。

 

それ以上に私が感銘を受けたのは、自分の人生は自分で切り開かんとする、Mさんの姿勢です。なりたい自分、あるべき自分が定義できて、お金と努力によって手に入れることが可能なら、とりあえず、何でもやってみる、これがアメリカ人の基本的なスタンスです。日本人に足りないのは、まさにこの部分だと思います。もっと、自分のキャリアや人生に対して、ガツガツと貪欲になってもいいのではないか・・・、これが外資系企業に長年勤めた私が感じる、みなさんへのアドバイスでもあります。

 

最近、日本人の中にも、上述のMさんと同様に、自腹で研修やセミナーに参加する人が増えてきました。これは、自分でキャリアを切り開こうとする日本人が増えてきたのと同時に、マスターすべき知識や技能が、日進月歩で進化していくため、自腹でキャッチアップし続けないと、取り残されるという恐怖感も後押ししているようです。典型的なのは、ITの分野で、人工知能・ビッグデータ・セキュリティ などは、常にスタンダードが更新されていきます。ビジネスの世界で評価されるためには、自腹もやむなし・・・というのは容易に理解できます。

 

日本社会に求められるのは、Mさんが勤めるX保険の上司のように、個人が自分で獲得したスキルや経験を、正当に評価する枠組みを持つことでしょう。結局のところ、日本企業の人事部が評価するのは、公的な資格試験やTOEICなど点数化できるものに限られます。そうではない、定性的な能力は、それを評価する目利きが必要で、それが圧倒的に不足しているように感じます。この分野における、日本企業の奮起を期待したいですね、では!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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