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タカシの外資系物語

ポスト “半沢直樹” は 女性バンカー! (その1)2014.04.15

    タカシが4月に楽しみにしていることは?!

    あーーーっ! という間に、桜も散って、4月も後半に差し掛かってきました。実は私、4月が大好きなんです! 新学年、新年度、新品のスーツに身を包んだフレッシュマンたち・・・。気候もよくなってきますしね。コートを脱ぐか、脱がないか、くらいのときが、個人的に一番過ごしやすい季節だと思っています(私事で恐縮ですが、うちの娘もこの4月から小学校に通い始めました!)。


    一方、4月は若干の憂鬱さも兼ね備えています。まず、花粉。今年は今のところ重い症状は出ていないのですが、油断大敵です。ちょっとでも気を抜くと、“奴ら” は突然やってきますから。まるで、鼻の周りで私が油断するのを待っているかのように、いきなり涙とくしゃみの “爆弾” が投下されます。こうなったら、なんちゃらブロック配合の薬なんて飲んでも、一切効きません。よって、注意、注意・・・。


    あと、電車も混む。皆がコートを着込んだ、真冬並みに混む。なぜか? これは私の仮説なんですが、電車に乗り慣れていない新入社員のせいではないか、と思うのです。通勤電車というのは、なんともいえない “波” みたいなものがあって、人並みに身を任せながら、踏ん張るべきところは踏ん張る。身を任せる : 踏ん張る = 9 : 1 くらいの割合でしょうかね。基本的に、ワカメみたいなにユラユラしている方が、自分にとっても周りの乗客にとってもWin - Winなわけです。しかし、新入社員くんたちときたら、フレッシュさのあまり、踏ん張りすぎる! 「おいおい、とりあえず降りろよ・・・」「いやいや、そこは踏ん張らず、奥に押されるんだ、流れのままに!」・・・ この季節は、通勤電車内の “生態系” が崩れるので、ちょっと不満です。


    あと、昨年の4月に倒れ、半年間に休職に入ってから、ちょうど一年が過ぎました。あれから、もう一年・・・ 奇跡的に生きている自分。家族や上司、同僚、そして読者のみなさんに日々感謝する気持ちが、さらに強くなっています。本当にありがとうございます。


    さて、4月にはもう1つの楽しみがあります。それは、TVドラマの新番組が数多く始まるということ。各局とも4月は新年度ということで、毎年非常に気合が入っている。さてさて、今回の新番組は・・・、 と、その前に、「あんた、悠長にTVドラマなんて観ている時間、あるの?」 ・・・ ないっす。今は仕事をセーブしているので、あるといえばあるのですが、そもそもあんまりTV観ないんです、私。土日のNHK夜7時のニュースとその流れで 『ダーウィンが来た!』 くらいでしょうか。にもかかわらず、どうして新番組に大はしゃぎしているのかというと、通勤途中にスマホで観ているんですな、これが。各TV局とも、“なんちゃらオンデマンド” みたいなのをやっていて、見逃した番組も含め、いつでもどこでも観ることができるようになっています。確かに迫力は全くありませんが、日本のTVドラマで、『24』 や 『LOST』 のような、大スクリーンで観た方がいいな、と思えるものはまずないので、ミニ画面でOK。結構、楽しんでいます。

    タカシ、新番組を批評する!

    「さてさて、新番組の目玉は、と・・・」  
    情報誌を片手に、まず目に付いたのは、『MOZU』、こりゃすごい! 逢坂剛さんの傑作、『百舌の叫ぶ夜』 じゃないですか! 原作サイコーですよ、超おススメ! どんなドラマになるのか、今から楽しみです。


    「ふむふむ、他にはどんなのがあっかな・・・」  
    『ルーズヴェルト・ゲーム』・・・ って、売れてますねぇ、池井戸さん。“半沢直樹” 以前からファンだった私としては、ここまでの評価を受けるようになったことが誇らしいです。世間がやっと追いついた感じ。元銀行員として、先輩でもありますしね。 
    個人的には、『下町ロケット』 『空飛ぶタイヤ』 が二大傑作ですが、少なくとも “半沢直樹” よりは、『ルーズヴェルト・ゲーム』 の方が面白いと思います。ま、ドラマは演出と役者で決まりますから、原作の比較だけでは、なんともいえませんが・・・、いずれにしても、楽しみ楽しみ。


    「あとは、と・・・」  
    『花咲舞が黙ってない』・・・ ん・・・? 花咲舞って、どっかで聞いたことあるなぁ、花咲、花咲・・・ あ! これも、池井戸さん?! 
    売れまくりじゃないですか、池井戸さぁ~ん。これは、池井戸さん原作の 『不祥事』 『銀行総務特命』 という2作品に出てくる主人公の 花咲舞 をフューチャーしたものですね。“半沢直樹” も、1クールの中に2つの作品が入っていました。全然関係ないですが、昨年夏に放送していた、宮部みゆきさん原作の 『名もなき毒』 も、2作分の内容でしたね。最近、こういう構成が流行っているのでしょうか。 
    池井戸さん頼りのTV各局、その創造性の貧困さには閉口しますが、池井戸ファンにとっては嬉しい限りです。


    さてここで、注目すべき事実があります。それは、“花咲舞” を、番組名に冠してまでフューチャーしたということ。これは、何を意味するのでしょうか?

    トレンドは、“キャリアの女性銀行員” ?! 

    池井戸作品に登場する “花咲舞” さんは、銀行員です。トラブルを抱えた支店を回って(これを業界用語で “臨店”(りんてん) と言います。ドラマで頻繁で出てくるはずですので、是非覚えておいてください)、支店の不正やその根っこにある本部の体質をメッタ切りするという内容です。半沢直樹の女性版と思ってもらって間違いないのですが、メッタ切りの矛先が自社内部を中心としているという意味では、ドラマ 『ショムニ』 で江角マキコさんが演じた “坪井千夏” さんが、視聴者みなさんのイメージに一番近いかな、と思います(わしゃ、ナンシー関さんか・・・。ナンシー関さんの評論、好きでした。早世されて残念です・・・(T-T))。


    ただし(ここから、ドラマの登場人物は敬称略とします)、花咲舞 と 坪井千夏では、決定的に違う点がいくつかあります。1つは、花咲舞は 銀行員 という、ある意味特殊な職業だということ。坪井千夏は、特定の業種をクローズアップしていません。もう1つ、花咲舞の仕事は、“臨店” をして、支店を指導するという、銀行の中でもかなりレアな仕事だということです(半沢直樹は、企業向け融資という、銀行では花形の仕事をしていました)。


    銀行支店の臨店指導・・・、実際のところをお話しすると、この業務は強面のベテラン男性行員がやるのが定番でして、女性がやっている例は極めてレアです。私の知る限り、日本にいる女性銀行員で、この業務に携わっている人は、20人ほどしかいないと思います。


    つまり、池井戸さんが一連の “花咲舞” 作品で伝えたかったことは、伝統的で古臭い男性社会を “再構築する役割” としての、女性なのだと思います。ジャンヌ・ダルクみたいな感じでしょうか。銀行という旧弊がまかり通る業界で、これまた男性どっぷりの業務に女性がグイグイ入り込んで、大ナタを振るう。池井戸さんがこの作品に託したメタファーは、“女性による社会変革” にあることは、まず間違いありません。


    これまでの女性銀行員って、一般的には、あまりいいイメージないんですよね。少し年配の方なら、まず思い浮かべるのは 伊藤素子による巨額の横領事件 でしょう(内容がわからん人は、ググってください。銀行オンラインを巧みに操作して、なんと2億円近くを男に貢いで東南アジアにトンズラした、という事件です)。 女性銀行員 → 横領 → ろくでもない男と逃避行 ・・・ という、ステレオタイプ的な流れを、花咲舞には是非とも変えて欲しいですよね。


    「コンプライアンスの遵守は、全社員の義務です。例外はありません。同時に、コンプライアンスを遵守している限りは、会社は全力であなたを守ります。そして、より重要なことは、だれも見ていない場面でも、不正を働かない強い意思を持つことです・・・」


    さて、ドラマ “花咲舞” と並行して、それ以上にレアな題材を扱った小説が、メジャーな賞を取りました。『スコールの夜』、第5回日経小説大賞受賞、作者の芦崎笙さんは現役バリバリの官僚(財務省大臣官房参事官!)ということでも話題になっています。


    この小説に出てくる主人公は、平成元年に東大法学部を卒業、都市銀行トップの帝都銀行に女性総合職一期生として入行した 吉沢環 という人物。こちらは花咲舞のように、不正を痛快にメッタ切り・・・ というよりは、リストラの責任者に抜擢されたものの、もがき苦しみながら仕事を進めていくというもの。個人的には、花咲舞より、吉沢環の方が、はるかにリアリティがあります。「平成元年」「東大法学部」「女性総合職」・・・ 私は、平成三年に銀行に入りましたが、同期に2人いましたね、東大法学部卒の女性が・・・。果たして、彼女たちはどうなったんでしょう。吉沢環のように、銀行で幹部職となっているのか、それとも・・・?


    次回のコラムでは、花咲舞・吉沢環 を通して、日本のビジネス社会が抱えるキャリア女性に対する課題、および、外資のケースについてお話したいと思います。

     

    次回続く

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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