グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

なぜ 日本人は スピーチ・プレゼン が下手なのか? (その2)2014.02.04

    Practice makes “刺さる” ?!

    前回の続き) 日本人のプレゼン・スピーチは、どうしてあんなにショボいのか? その理由は、以下の3点だと思います。 
    (1) 絶対的な練習量が不足している 
    (2) 練習時に、第三者からのアドバイスを受けていない 
    (3) “遊び” がない


    逆に言うと、プレゼンのうまい外国人というのは、ほぼ例外なく、上記(1)~(3)を実践しています。外国人の方が “見た目(見栄え・スタイル)” がいいとか、英語をはじめとしたヨーロッパ系言語の方が何となく響きがカッコいいとか、そういう根も葉もない理由、イメージ的な抽象論ではないのです。少し、具体的にお話しましょう。


    まず、「(1) 絶対的な練習量が不足している」 について。前回のコラムでもお話したように、日本人でも練習はするし、様々なプレゼン・テクニックについても、「これでもか!」というぐらいトレーニングを受けます(外資系企業においては、特に・・・)。でも、んーーー・・・ ショボい! 刺さらない!! なぜか? それは、練習の “量”、つまり “練習時間” が絶対的に足りないからです。


    例えば、1時間のプレゼンをするのに最低限必要な練習時間は、何時間だと思いますか? それは、「20時間以上」 です。これは、どこかの教科書に書いてあるわけでも、ルールとして決まっているわけでも、何でもない。あくまでも、経験則。私はそうしているし、プレゼンのうまい同僚に聞いても同様でした。


    ここで注意すべきは、プレゼン資料を作成する等の “準備時間” ではなく、実際に本番と同様に、立って、声を出して、身振り手振りを交えて、本番さながらの “練習時間” だということです。


    さて、そもそも何を練習するのか? よどみなく、流暢に話すため? ま、それも目的の1つでしょう。しかし、それ以上に重要なことは、自分の言いたいこと・主張を相手に伝えるために、最も有効な方法は何か、ということを探り、体で覚えるということです。


    「刺さるプレゼン」というのは、流暢に話すことではありません。TVのアナウンサーやタレント司会者がいくら流暢に話しても、刺さらんですよね。翌日には忘れている。一方、映画やドラマの決め台詞は、刺さる。監督や脚本家が練りに練った台詞を、役者が何時間もかけて “練習” しているから刺さるのです。


    “練習” というのは、実際に会議室を使って行います。わが社でも、夕方になると、社員が一人、会議室に立って、プレゼンの練習をしている光景を見かけます。そして、これは役員も同じ。社長だって、相当の練習時間を確保しています。

    社長に “ツッコミ” を入れられますか?!

    では、実際の練習時に、留意すべきことは何か? それは、「(2) 第三者からのアドバイスを受ける」 ということです。よく、自分のプレゼンに酔って、悦になるナルシスト的な人がいますが、これは最悪。自分のプレゼンを、自分に刺しているだけ、ただの独りよがりです。


    プレゼンの内容をよく理解しているメンバーに加え、事情を全く知らない社員も入れて、プレゼンやスピーチを聞いてもらう。そして、率直な感想をフィードバックしてもらうのです。聴衆には、辛らつな意見が言える人を入れておくべきでしょう。 「さすが!部長のプレゼンは最高ですね!!」 なんて言われても、時間の無駄です。どこがわかりにくかったのか、どのように修正すればわかりやすくなるのか、そもそも話し手の主張は伝わっているのか・・・、これらの事項は、自分で確認することができません。信頼できる仲間にサポートしてもらって、そのフィードバックを真摯に受け止め、修正していくことが重要です。


    外資系企業も日系企業と同様に、社長の命令・指示は絶対です。しかし、外資の場合、社長のプレゼン内容に “ツッコミ” を入れる輩も、結構います。実際に、社長が重要なプレゼンをした後、社長のブログには、「内容はよくわかった。あなたの戦略は、概ね正しい。しかし、戦略Aの説明は全く不十分。特に、○○がさっぱりわからない・・・」といった、フォローコメントが、ガンガン上がってきます。社長はそれを真摯に受け止め(腹の中では、ムカついているかもしれませんが・・・)、必要に応じて、わかりにくかった部分について、追加のコメントを出したりしています。このように、社長ですら、日々、プレゼン能力を鍛えられる素地があるという意味で、外資系社員のプレゼン能力は、極めて高いレベルを維持できることがわかります。

    重要なプレゼンで、“遊べ” ますか?!

    最後に、「(3) 遊び」 について。“遊び” というのは、時事ネタとか、プレゼン途中の脱線話とか、要するに、聞き手の肩の力を和らげる話を指します。


    タレントのダウンタウン・松本人志さんがよく、「お笑いは、“緊張” と “緩和” である」ということを言っています。極度の緊張状態を作っておいて、一気に落とす。これにより、笑いが数倍に増幅するのだ、とのこと。私は個人的に、松本人志さんは天才だと思っているのですが、やはり天才は目の付け所が違います。ビートたけしさんも同じことを言っていて、彼はアウトロー(ヤクザ)映画の中に、アクセントとして笑いを入れることで、暴力部分を際立たせているそうです。これも、緊張と緩和の好事例です。


    また、人間の集中力というのは、10分程度しかもたないと言われています。10分に1回程度は、適度の “遊び” を入れないと、プレゼン全体の緊張感が持続しないという点にも配慮が必要です。


    欧米人(特にアメリカ人)の場合、いわゆる “アメリカンジョーク” をプレゼンの内容に関連付けて、“遊び” を作ることが多いように思います。


    例えば、こんなアメリカンジョークがあります。


    悪魔 「何でもほしいものをくれてやるぞ」 
    人 「ホントですか? 私は一生遊んで暮らしたいのです」 
    悪魔 「よかろう、では、お前が一生遊んで暮らしても、周囲の目が気にならないように、図太い神経をやろう!」


    この話を応用して、「私は図太い神経などいらないんです。今も、心療内科に通っているし、睡眠薬も欠かせない(笑:この部分などは、アメリカ人特有の自虐ネタですね)。でも、この案件を発注いただければ、一生遊んでくらせるかもしれません!」 などと言うわけです。相手が外国人なら、大笑い。Ice break (場を和ませること) 成功というわけです。


    ただ、相手が日本人の場合、この手のジョークを使うことはお薦めしません。なぜなら、多くの日本人は、この手のジョークでは クスリ ともしないからです。逆に、スベって逆効果ですから、使わない方がいいと思います。


    私が多用するのは、プレゼン先企業の商品やサービスを使った感想・印象についての話です。ある化粧品メーカーにプレゼンした際には、母親が使っていた高級洗顔石鹸で、体を洗って大目玉をくらったという話をして、大うけでした。ここで注意! ウケて、場を和ませるのに加え、チクッと改善点を盛り込んでおく。そうすれば、プレゼン本体とのつなぎがスムーズに行くと思います。


    いかがでしたでしょうか。プレゼンがうまいのは、才能ではなくて、練習だということ。外資の社員、特にエグゼクティブは、私がここで書いた以上に、見えない場所で練習をしています。


    あ、そういえば、小学校時代の学芸会、1つの台詞を、繰り返し繰り返し、毎日毎日、練習しましたっけ? 何事も、初心が大事だということかもしれませんね。では!

    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    合わせて読みたい

    ---