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タカシの外資系物語

入学テスト と グローバル人材 (その3)2013.12.17

    日本人の “読み書き” 能力は、平均以上?!

    (前回の続き) 「マークシート方式のテストが、イノベーション創出を阻害している・・・」 前回のコラムで、私の大胆な(?)仮説をお話しましたが、みなさんはいかがお考えでしょうか? 


    20年ほど前、私がまだ銀行員だった頃。業務上必須だった、宅建の試験を受けに行ったとき、会場入り口で某大手専門学校が、切り口が正方形(=四面体)の鉛筆を配布していました。見ると、それぞれの面に、1・2・3・4の文字が・・・、要は 四面のサイコロで、わからない問題は、これを使えと言っているのです。 「バカにすんなよっ!」と意気込んで受けた結果、正答が1/4以下(つまり、確率以下。サイコロ使った方がマシじゃん!)で愕然としたことがあります(ま、全く勉強せずに受験する方が無謀なのですが・・・)。それでも、銀行員の端くれとして、不動産の基礎と実務は理解していたつもりなので、「面接形式なら、それなりに回答できたのに・・・」などと、負け惜しみを言っていたように記憶しています。今回のコラムでは、日本の教育における3つ目の、そして、おそらく最大の問題点である、「(3) 対話方式でない ≒ コミュニケーション能力が評価できない」 についてお話しましょう。


    話をわかりやすくするために、読者のみなさんの大半が苦しんでいる(と思われる) TOEIC を例に考えてみましょう。TOEIC が、どうしてあれほど 「苦労して勉強した割に、使えねぇ・・・」と言われるか? それは、英語のコミュニケーション能力を測るツールとして、大きな欠陥を持っているからです。


    英語に限らず、言語というのは、以下4要素でコミュニケーションを行います。 
    (1) 聞く = Listening 
    (2) 話す = Speaking 
    (3) 読む = Reading 
    (4) 書く = Writing


    これらのうち、(3) 読む (4) 書く については、通常の教育を受けてきた人であれば、世界平均のレベルに達していると思います。ここでいう “世界平均” というのは、“ネイティブ平均” じゃなく、言うなれば、“非ネイティブの先進国平均”。「日本人の読み書き能力って、そんなに高いか?」という、アナタ。そんなに高くはありませんが、それなりに高いんです! 


    以前、デンマーク人と一緒に仕事をしたことがあるのですが、彼の英語のスペルはメチャクチャで、私が修正していましたから。ヨーロッパ系非ネイティブの国は、なまじ母国語が英語に似ているので、それに引きずられて、結構無茶な英語を書く人が多い。体系的に、英語を学んだことがないというのも大きな理由でしょうけど。これまた同僚のドイツ人など、2週間で英語ができるようになった! と言っていました。なんやねん、それ・・・ 一方われわれ日本人は、中学から大学まで、10年以上、専ら (3) (4) だけやってきたわけですから、読み書きについては、それなりにできて当たり前なのです。

    外国人に対して、“土下座” が有効な理由とは?!

    1つ、いいことを教えてあげましょう。もしあなたが、「(1) 聞く (2) 話す は無理だ、もう諦めた! これからは、(3) 読む (4) 書く だけで生きていく!!」と割り切れば、それはそれで、何とかならなくもありません。現に、私は外国人とのコミュニケーションで、言葉に窮したら、言いたいことを書いて、相手に伝えるようにしています。逆に、どんなにゆっくり話してもらっても、相手の言っていることがわからないときは、「書いてくれ!」と懇願します。ものすごくカッコ悪いですが、知ったかぶりして、後で問題になるくらいなら、土下座してでも書いてもらいます。英語でビジネスを進める、というのは、そういうことなのです。結構、カッコ悪いんですよ、実際には・・・


    話を戻します。つまり、(3) 読む (4) 書く だけでコミュニケーションする、という最低限のレベルであれば、大抵の日本人はデキるのです。しかし、大半の日本人は、それをしない。というか、実際には伝えきれない。なぜか? 


    それは、「コミュニケーションというのは、言語4要素 だけで成り立っていない」 ことを理解していないからです。表情、ジェスチャー、相手の目を見て話す、体でパッションを伝える等々、今年流行った “土下座” もその一種です。これらなしに、コミュニケーションは成り立ちにくい。


    私の場合、外国人に何かを説明しなければならないとき、相手が自分より上であれ下であれ、必ず直接会って話すようにしています。電話・Eメール・伝言メモ・・・ 言語4要素を使えば、要件は伝えられます。単なる連絡事項なら、それでもいいでしょう。しかし、ビジネスで要求されるのは、そんなしょうもない話ではありません。何かを強く訴えるプレゼンテーション、何かをお願いする、逆に、何かを断る、いわゆるネゴシエーション、これらを進める上では、言語4要素のスキルに加え、上記に述べた “アクション” 的な要素も非常に重要なのです。


    ちなみに、私はよく、外国人役員に何かをお願いするとき、“土下座” の一歩手前ぐらいのオーバーアクションをとります。外国人にとって、“土下座” というのは、ブシドー、ハラキリ、カミカゼ・・・ などを連想するようで、「こいつ、この場で腹でも切るんじゃないか・・・」と、相手は結構ビビリます。ま、それを念頭に置いた作戦なのですが・・・ このとき、相手の外国人は決まって、肩をすくめて、両手のひらを上に向けての「ダメだ、こりゃ」 のポーズをとります。それでも、こちらは、黙って土下座し続ける。これぞ、史上最強のコミュニケーションです。言葉一切なし! 次回、外国人マネジメントが「ダメだ、こりゃ」ポーズをとって、結果、私の言い分をのんでくれたら、お礼に、彼の手のひらの上に、栗まんじゅうを置いて、こちらの謝意を示そうと、密かに策略を練っています・・・

    Communications with speaking & actions のすすめ

    コミュニケーションには、言語4要素に加えて、“アクション” スキル が必須である、と書きました。では、“アクション” スキルはどうやって身に着け、磨きをかけるか? それは、「(2) 話す」の訓練を、いかに長時間実施するか? と同義なのです。


    言語4要素のうち、「(2) 話す」以外の3要素は、アクションなしでも成り立ちます。しかし、「(2) 話す」については、ほぼ100% アクションが付随するのです。心の底から「ありがとう!」と言いながら相手を抱擁する、自分の言い分がなかなか伝わらなくて地団太を踏む、悲しくて声を上げて泣きわめく・・・ これほどインパクトのあるコミュニケーション手段は他にありません。実は、大きなビジネスの成功の裏には、必ず、言語を超えたアクションを伴うコミュニケーションが存在しています。ま、これは日常生活でも同じことですよね。


    日本の教育の最大の問題は、“アクション” を伴うコミュニケーションの訓練を一切することなく、学生を社会に送り出すことだと思います。そして、就職の面接で初めて、“アクション” の重要性を実感する。首尾よく就職できたとしても、会社でうまくコミュニケーションが取れない、営業先で顧客と話すことさえでいない・・・ だから、最初の5年ぐらいは、ほとんど使い物にならない。逆に当事者の若者は、使えない自分を棚に上げて、他人のせいにして、転職を繰り返す。挙句には、「自分探し」の旅に出たりする。そんな問題やないっ! ちゅうねん・・・ もっと会社やお客様の懐に飛び込んで、怒られて、殴られて、泣いて、笑って、地団太を踏んで・・・ “アクション” を伴ったコミュニケーションを経験することが最重要なのです。しかし、ほとんどの若者はそれに気付いていない。文部科学省も中途半端、はぁ・・・ 何だか暗くなってきます。


    椅子の手すりに、パタンと倒して使う、超ちっちゃい机がついてるやつ、あれって、大嫌いでしょ? 日本人の大半は、このタイプの椅子を嫌います。ちゃんとした机がないと、メモが取りにくいからです。メモが取れないと、ペーパーテストのための勉強で暗記すべき事項が特定できないからです。


    しかし、外国人の大半は、あの超ちっちゃい机でカリカリとメモをとったりしません。このタイプで行う授業は、“アクション”を伴ったコミュニケーションの授業、講師とのやりとりを楽しむ授業であることを理解しているからです。


    みなさんも明日から、あの超ちっちゃい机の上でメモをとるのは止めましょう。あれは、スタバのコーヒー置き だと思えばいい。講師の目を見て、周囲を巻き込んで、“アクション” を伴ったコミュニケーションを楽しもうじゃありませんか! グローバル人材育成の一歩は、そのあたりから始まるように思うのですが、みなさんはいかがでしょうか? では!

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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