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タカシの外資系物語

入学テスト と グローバル人材 (その1)2013.12.03

    インド式解答の進め方とは?!

    みなさんは、テストでわからない問題、または、解答に時間がかかりそうな問題が出てきたとき、どのように対処しますか? 多くの方は、まずは問題全体にざっと目を通し、時間をかけずに確実に解答できそうな問題から着手されると思います。私も基本的にはそのような進め方をするのですが、私の場合、もう一ひねり加えておりまして、できるだけ、同じ種類の問題が続かないようにして進めます。


    例えば、英語のテストなら、通常は 「ヒアリング→単語・熟語→文法→長文読解→英作文」 という順序になっていると思うのですが、飽きっぽい性格の私は、長文読解が何問も続くと頭が真っ白になってくる(病気か!)ので、「長文読解①→単語・熟語→長文読解②→文法・・・」 という感じで解いていきます。それによって、絶大な効果が現れているとは全く思いませんが、ま、好みの問題ですから。いずれにしても、テストなのですから、限られた時間内に、いかに効率よく解答するか? という能力を問われていることは間違いありません。


    日経新聞朝刊のコラム 『春秋』 に、こんな論説が載っていました(2013/11/16(土)付)。以下、抄訳します(私の独断でまとめていますので、気になる方は原文を読んでください)。


    インドにおける高等教育のテストは、徹底した記述式である。ある学生が、全4問のうち2問目が難しそうだったので、それには解答せずに残りに注力し、点数は合格点を取ることができた。しかし、後日、その学生は教授に呼び出され、以下の理由でこっぴどく叱られたという。

    ・ たとえ一問でも、一文字も書かずに空白で出すとは何事か! 
    ・ 「○○を論ぜよ」と求められたからには、とにかく何でもいいから書きまくれ! 
    ・ 設問に関する知識が足りなければ、詩でも日記でも自己紹介でもいい!


    正確さよりも表現の量を重んじるのが “インド式評価” のようで、白い答案を見た教授は「思考力が薄弱」と判断した・・・ とのこと。


    「何でもいいから書け・・・って、そんな無茶苦茶な・・・」 と、いうのが正直な感想でしょう。ま、確かに、“一文字も書かずに空白で出すとは何事か!” についてはわからんでもないですが、それ以外の部分は、われわれ日本人には理解するのが難しいと思います。

     

    タカシ、一発勝負で “必死のパッチ” ?!

    しかし! ですよ、みなさん。インド人が、文字通り上記のような “非合理的な” 教育を受けているだけとしたら、なぜ、あれほどまでに数学が得意で、ゼロの発明までして、世界のIT業界をリードするような存在になり得たのか? なぜ、会議でわれ先にと、インド風英語をマシンガンのように繰り出して、その場を仕切ることができるのか? もしかしたら、インド人の教育・評価方法は非合理的ではなく、グローバル時代に必須の能力を伸ばすのに、最適なのかもしれません。ということで、今回のコラムでは、テストの評価とグローバル人材 について、考えてみたいと思います。


    個人的な見解として、日本の教育におけるテストの問題点(ここでは、グローバル人材育成に適しているかどうかは、いったん棚に上げて)は、以下3点だと思っています。


    (1) (大学入試という観点で見ると) チャンスが1回しかない 
    (2) (これも大学入試がメインですが・・・) マークシート方式が主体である = いまや、記述式は、難関国立大の2次試験ぐらいしか見当たらない 
    (3) 対話方式でない ≒ 解答に至るプロセス や コミュニケーション能力が評価できない


    順に見ていきましょう。まず、(1)について。実は、これには私も泣かされました。私は経済的な問題で、「現役かつ国公立」 というのが、大学進学の条件でした。もし不合格なら即就職、人生計画メチャクチャでんがな・・・(T-T) ま、今になって振り返ってみると、高卒でいったん就職したところで、人生なんて、いかようにも変えられるんですけどね・・・ 

    しかし、当時18歳だった私は、この大学入試を失敗したら、人生終わり・・ とばかりに、まさに “必死のパッチ” でした(※ “必死のパッチ” というのは、関西人がよく使う言葉で、とにかく、最大限に、MAX必死である! ことを表しています。一説には、将棋で “桂馬” を打たれて逃げ道がなくなった様子を形容しているようです。桂馬の動きというのは、股引(=パッチ)に似ているので、そういう表現になったとか・・・)。


    で、結果、私は地元の某国公立大学に合格しました。実は今でも、「あのときに、私立の併願ができていれば・・・、浪人する余裕があれば・・・、京大とかにチャレンジしたかったのになぁ・・・」 と思うことがあります。でも、それって、実は言い訳なんですよね。できるやつは一発勝負で東大でも京大でも合格するんです。これまでに私が出会った、本当に頭のいいやつは、みんなそうでした。言い訳は見苦しい。自分の出身大学に誇りを持たねば・・・ね!

    入試の “分散” にメリットはあるか?!

    最近、政府の 『教育再生会議』 が、一発勝負の入試を見直すような提言を出しています。しかし、問題の本質は、「回数」ではないのだと思います。うちの奥さんは神奈川県の出身で、中学時代に 「ア・テスト」 というのを受けています。「ア・テスト」というのは、アチーブメント・テストの略で、「ア・テスト」の結果と実際の高校入試を総合して、合否を判定するという仕組みでした。要は、入試が2回に分散されているということです。


    しかし、すったもんだの末、この制度はなくなりました。理由は様々あるようです(詳しく知りたい方は、ネットに山ほど解説されていますので、それを参照ください)が、結局のところ、ペーパーテストという尺度でのみ、それも自己主張ができない選択形式主体のテストでのみ、能力を評価しようとしている点は、改善されなかったということでしょう。複数回のテストは、当日体調が悪かった人を救済するぐらいのもんであって、あまりメリットはなかった、ということです。


    ならば、海外(特に、アメリカ)のように、基礎的な学力は担保した上で、面接や課外活動などをより重視するように、入試方式を切り替えた方がいいと思います。高校であっても、落第するやつは落第させればいいし、授業料の支払いが苦しくなったら、少し休学してお金を貯めて、また復学してもいいでしょう。現役なら22歳、1浪で23歳 でなければならない、という画一的な考えが、画一的なテストを生んでおり、結果、画一的な人材しか社会に出てこないのだと思います。


    外資系に勤めていると、様々な学歴のバックグラウンドを持った人材に出会います。例えば、ドイツなどは大学の卒業時点の年齢が高いですし、韓国などは徴兵制度があって、卒業が遅れたりします。また逆に、いわゆる 「飛び級」 も一般的で、以前私が一緒に仕事をしたタイ人などは、19歳で名門スタンフォード大学を卒業していました。


    ただ、平均的にみると、25~6歳で大学を卒業する人が多いように思います。でも、彼ら・彼女らの一部は、30代後半には、役員に昇進したりする。一方、日本で最も偏差値が高いと言われる、東大法学部を現役ストレートで卒業して、30代で企業の役員になる人が、果たしているかどうか。最近、灘や開成などの超難関高校を卒業してすぐに、海外の大学に進学する学生も増えてきたと聞きます。つまり、学生のニーズと、制度が全く合っていないわけです。本当にグローバル人材を育成したいなら、制度が先取りして、グローバル人材育成の受け皿を作る必要がある、というのが私の意見です。


    次回は、「(2) マークシート方式」 の功罪についてお話しましょう。

     

    (次回へ続く)

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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