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タカシの外資系物語

告白! “タカシ復活” までの 道程 (その2)2013.10.08

    “うつ” って、どんな感じなの?

    (前回の続き) 今回から本格的に、私がはまった 「うつ」 の話を始めましょう。実は、前回のコラムで、ドラマ 『半沢直樹』の話をしたのには理由がありまして・・・、それは、読者のみなさんに、「“うつ” って、どんな感じなのか?」 を伝えたかったからなのです。


    ドラマ中、半沢直樹の同期で、近藤直弼という人が出てきます(滝藤賢一さんが演じられました)。この近藤さん、支店勤務時代に、過酷なノルマによる極度のストレスを与え続けられた結果、統合失調症を患い、半年間休職したという設定でした。ドラマでは、関連のメーカーに出向し、半沢の仇である、大和田常務の不正を暴きます。結局は、最後の最後に半沢を裏切って(大和田常務に寝返って)、かねてより希望していた銀行の広報部に復帰を果たすことになります。ま、「半沢を裏切った」と言っても、半沢は近藤を許すのですが・・・。同期入社の友情というか、同じ釜の飯を食った仲間同士の信頼というか、ビジネスパーソンにとっては、心を深く動かされるエピソードが展開されるわけです。


    ドラマの前半で、近藤は出向先メーカーの経理部長として、出向元の銀行に融資を依頼するため、日参します。ところが、銀行は近藤をいじめるかのように、彼を罵倒し、融資の実行を渋るのです。その場面で、近藤は持病の統合失調症を再発しかけます。そのときの俳優さんの演技と映像表現が、私が経験した “うつ” 状態にそっくりなのです。


    まず、ありえないほどの動悸に襲われます(体全身がドクッドクッと脈打つ感じ)。体中に脂汗が出たかと思うと、急に周囲の景色が回りだし、立っていることはおろか、座っていても静止できなくて、体がグルグル回りだします。次に、体の中で、ドロっとした黒い液体が、上から下へ、ポタポタと流れ出します。最初は、体の中にいる私の分身みたいな小人が、そのしずくを一滴ずつ拭き取っているのですが、そのうち間に合わなくなって、体全体をドロっとした黒い液体が充満し、目・口・鼻・耳・毛穴、ありとあらゆる穴からその液体が溢れ出してくる・・・ そんなイメージです。

    家族を愛しているからこそ・・・

    「うーーん・・・、申し訳ないが、よくわからん・・・」 そりゃそうでしょう。“うつ” など経験しない方がいいに決まっていますから、わからんでいいのです。敢えて、どんな感じなのかを説明すると、ドラマ『半沢直樹』の近藤のような感じだと思っていただければいいと思います(もちろん、人によって症状や感じ方は違います)。


    「どこかの部位が痛むのか?」 と、よく聞かれるのですが、痛いわけではないのです。確かに、動悸がハンパじゃなく激しいので、心臓の周辺・胸全体は、やや痛いです。でも、その痛みは我慢できます。それよりも、私の場合は、私の体内から溢れ出た黒い液体が職場や電車内、自宅を汚してしまいそうで、「すぐに、どこかに行かなくちゃ。この場から、姿を消さなくちゃ・・・」 という思いで焦り、もがいている感じが、もーう、耐えられませんでした。 私がかかった心療内科医によると、この 「どこかに行かなくちゃ」 「姿を消さなくちゃ」 という感情を抱くのは、重度のうつ病における典型的なパターンで、最悪の場合、「姿を消す」 => 「失踪する」 or 「自殺する」 という結果を招くこともあるそうです。


    ただし、たいていの場合、うつ病の発症初期は肉体的にも疲れきっています。だから、思うように体が動かない。動けないということは、失踪や自殺といった、具体的な行動を取ることができない。だから、発症初期は、かえって安心なのだそうです。気をつけないといけないのは、退院時と復職時で、うつ病は治っていないが、体力だけは回復しているので、失踪や自殺といった行為に走る患者が多いとのことです(退院時と復職時、私の場合はどうだったのか? については、後述します)。


    さて、みなさん、ここで1つ、疑問がわきませんか? それは、「大切な家族や友人、職場の仲間を残して、どうして 失踪 や 自殺 という発想に至るのか?」 ということです。私は、発症以前から、どうしてこういう悲しい結果となる人が多いんだろう、と不思議に思っていました。しかし、いざ自分が当事者となってみて、その理由がわかったのです。 
    「大切な家族のためなら、仕事なんてどうでもいい、地位もプライドも捨てていい、道端に生えている雑草を食ってでも生き抜いてやる!」 私は、発症以前も、発症時も、そして今でも、そう考えています。その一方で、この半年間、常に 「どこかに行かなくちゃ」 「姿を消さなくちゃ」 という感情に、激しく苛まれ、支配されました。正直言って、自殺を考えたこともありました。 なぜか? それは、「自分をどこかに追いやって、消し去ってしまわないと、大切な家族や友人、職場の仲間に迷惑がかかる」 と考えてしまうからなのです。失踪や自殺という行為こそが、大切な家族を守ることだ! という発想を持ってしまうのです。うつ病の恐ろしさは、こういう点にあるのです。

    “アナタがいなくても、会社は潰れない!”

    ではここで、事の経緯を、時系列で追ってみましょう。

     


    ・4/3(水) 22:00 → 地方出張から自宅に戻る。「少し具合が悪いので、明日は休むかもしれない・・・」と、奥さんに告げて、就寝


    ・4/4(木) 6:00 → 朝一番に重要なミーティングがあるため、少し早め(6時)に起床。体が超重く、動けない。そのうち、上記に述べたような症状(激しい動悸・発汗・ドロっとした黒い液体で体が充満する感じ)におそわれ、立てなくなる。何とか、同僚(部下のユカ子さん)に、連絡だけは入れておこうと、BlackBerryにて 「少し具合が悪いので、少なくとも午前中はお休みをいただきます。もしかしたら、終日休みになるかもしれません。また、連絡します」とメールを送る  (※実際に、ユカ子さんに送った文面をみると、「少しぐ」 とだけ書かれていました。これでは何のこっちゃわかりませんが、ユカ子さんはこの文面を見て、これはタダ事ではない、と察したそうです


    ・4/4(木) 7:00 → 胸を押さえて苦しんでいる私を見て、奥さんが救急車を呼ぶ。奥さん、救急士とも、心臓系の発作(心筋梗塞・狭心症等)の可能性が高いと判断し、近くの総合病院に搬送される。奥さんが耳元で叫んでいるのを感じ、涙があふれて止まらない(この“涙”は、前述の ドロっとした黒い液体 なんですよね、自分の意識としては・・・。自分では、顔が液体まみれで真っ黒になっているような錯覚を覚える)。キャスターに乗せられた瞬間、意識を失う


    ・4/4(木) 12:00 → 病院のベッドで目を覚ます。心配そうに寄り添う奥さんと子供の顔を見て、また、涙があふれる(=黒い液体ドロドロ)。主治医いわく、「軽い狭心症の発作だと思います。1週間ほどで退院できると思うので、安心してください」とのこと。それを聞いてホッとした一方、いつまでたっても、“黒い涙” があふれて止まらない。ショックで涙腺壊れたのかな・・・?(T-T)


    ・4/4(木) 深夜 → 激しい動悸が再発し、引き続き、“黒い涙” があふれて止まらない。宿直の医師が来て、精神安定剤を投与。明朝、再度、専門医による診断を受けるよう指示される


    ・4/5(金) 10:00 → 昨日の朝、処置してくれた心臓外科の主治医に、再度診断してもらう。主治医いわく、「奈良さん・・・、これって、結果的に狭心症に近い症状が出ているんですが、根本原因は精神的な疾患の疑いが強いと思います。すぐに手配しますから、心療内科の診察を受けてください!」 昨晩投与された精神安定剤で、症状は治まっていたが、この主治医の一言で、再度、激しい動悸 と 例の “黒い涙” が止まらなくなる


    ・4/5(金) 15:00 → 心療内科棟に行き、まず、問診表(アンケート)と心理学のテストみたいなものを受けさせられる。その後、心療内科の主治医との面談を1時間程度実施。面談の途中で、またもや “黒い涙” が止まらなくなり、嗚咽のため通常に会話できなくなる。主治医が看護士に、うちの奥さんを診察室に入れるよう指示する。顔をくしゃくしゃにして泣いている私と奥さんを前に、主治医が以下のように告げる


    診療内科の主治医 「奈良さん・・・、奥さんもよく聞いてください。奈良さんは、重度の適応障害、つまり “うつ” の症状が出ています。しばらくの間、入院して、検査をしましょう。なーに、心配ありません。あなたには、奥さんとお子さんがいるじゃないですか。病院側も、万全の体制で対応しますから、安心してください・・・」

    私 「う、うつ ですか? 私が・・・?」

    主治医 「そうです。珍しい病気ではありません。ただ、しばらく会社は休んでください。パソコンも携帯も仕事上の資料も、病室には、絶対に持ち込まないように・・・」 
    私 「あのぅ・・・、どれくらい休めばいいんでしょうか?」 
    主治医 「個人差があるので、何とも言えませんが・・・ 3ヶ月で復帰した人もいますし、長くかかる人もいる。ま、しばらくは仕事のことは忘れて、ゆっくり休んでください」

    私 「そうしたいのはヤマヤマなんですが、仕掛の仕事やトラブルの案件を多数抱えてまして・・・ 入院する前に、同僚と部下に連絡して・・・」

    主治医 「奈良さん! あなたがいなくても、会社は絶対に潰れません! でも、あなたがいなくなったら、残された奥さんとお子さんはどうするんだ! 絶対に仕事をしてはいけません!! 仕事をしたいなら、どうぞ、別の病院に行ってください!!」

    私 「は、はい・・・ わかりました・・・ (そんなにキレなくても・・・、こっちは病人なんだぞ! ちょっと電話したり、メールしたりするぐらい、いいじゃんか・・・)」

    主治医 「とりあえず、6月末まで休職の上、療養を要する旨の診断書を出します。奥さん、会社の方に連絡をして、処理を進めてもらってください」 
    私 「いやいや、それぐらい、私が自分で・・・」 
    主治医 「絶対に、ダメっ!」


    後から奥さんに聞いたのですが、主治医から、以下のような話があったそうです。

    (1)奈良さんは、放っておくと、“自殺” する恐れがあります。当面は、病室にて、付き添ってください 
    (2)私の経験上、奈良さんと似た症例の場合、最低でも、復職までに1年、通常は1年半~2年程度かかります。生活面含め、いろいろと大変だと思いますが、それを念頭に置いて、今後の生活プランを立ててください 
    (3)最低3ヶ月は、仕事を想起させるようなもの(PC・携帯・資料・専門書)などを与えないでください。直近の2週間は、新聞も読ませないでください。仕事を思い起こさせると困るので。


    奥さんのショックたるや、いかがなものか・・・。これではまるで、旦那が再起不能だと言われているようなもんですから・・・。


    この日から、主治医の先生と奥さんと私の “過酷なる戦い” が始まりました。具体的な内容は、次回お話いたしましょう。 

    (次回続く)

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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