グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

SME がやって来た!(その3)2013.03.19

    SMEによる “尋問” 開始!

    ((前回の続き) 日本法人の新規案件積み増しのため、US本社の社長から特命を受けて、遠路はるばるやってきたSMEたち。クライアント担当責任者の一人であるタカシ、この一週間は、どうしても調整できないお客様との予定以外、全てをキャンセルにして、彼ら・彼女らと対峙することになりました。SMEとのセッションに対して、タカシが準備した(というか、拝み倒して来てもらった)のは、バイリンガルのナオミさん。さて、どうなりますことやら・・・ 


    SME 「タカシ、早速始めようか! まずは、タカシの担当しているクライアントの、現時点における見込み案件を教えてくれ」 
    私 「OK・・・」 
    SME 「どれどれ、うーーむ・・・ 現時点の見込みが、TOTAL 100(※) か・・・。よし、この一週間で、これを150にしようじゃないか! (※ちょっと露骨なので、単位なしとさせてください・・・ 数字もイメージです・・・)」 
    私 「・・・(無茶言うなよ、無理やりひねり出して、この数字なのにぃ・・・(T-T))」 

      

     TOTAL 100 を 150 にする・・・ ま、“常識” 的に考えると、無理な話です。だから、いきおい、アプローチは 日本人の感覚としては “非常識” なものにならざるをえない。 


    SME 「例えばこの、『新マーケティングシステムの開発』 という案件、現在、見込み案件として10としているよな?」 
    私 「Yes、その通りだね・・・」 
    SME 「この案件は、システム開発 “のみ” を指しているよな?」 
    私 「Yes・・・(なんか、嫌な予感・・・)」 
    SME 「マーケティングシステムを作る前に、そもそも、このクライアントの戦略上、マーケティングがどのように位置づけられるのか? が、よくわからんな・・・。 次に、新しいマーケティングシステムを使って、具体的に何がしたいのか? も、さっぱりわからん・・・。 まずは、それを説明してくれ・・・」 

    高度な英語力 + 粘り強く、真摯な態度 で・・・

    私 「・・・ ・・・ 以上が、クライアントのマーケティング戦略と達成目標です・・・」 
    SME 「ダメだな、こりゃ・・・ システムを作る以前に、戦略と達成目標が不明確すぎる!」 
    私 「いやいや、ちょっと待ってくださいよ! 日本の会社は、“戦略” とか、“達成目標” とか、バシッと決まっていないことが多い・・・ ちゅうか、ほとんど、こんな感じなんだ。“戦略” がない! なんて言い出したら、話がややこしくなる・・・ (T-T)」 
    SME 「???」 
    私 「さらに、マーケティングの分野は、やってみないとわからない、つまり、成果を正確に見積もれない要素が大きい。これは、クライアントも認識している。だから、初めから大きなシステムを作るんじゃなくて、プロトタイプ(試行)で成果を確認しながら、進めることで、合意もしているんだ・・・ (T-T)」 
    SME 「???」 
    私 「だから、ちゃぶ台をひっくり返すような真似をしたくない!!!」 


     SMEと対峙する際に最も重要なこと、それは 「言うべきことは必ず “言う” 」 です。本社社長の命を受けたSMEは、“超” 強気です。そもそも、ジャパンは 「ダメな子ちゃん」 だという前提で、乗り込んできている。よって、こちらの言い分に対して、聞く耳を持たずに進めようとします。 


     このような状況においては、こちらの言い分を漏れなく正確に伝えることができる、高度なコミュニケーション能力が必須となります。「こんな複雑な話、微妙なニュアンス、英語で伝えきれんわーーーっ!」 とヤケになってしまうと、それで終わり。真摯に、粘り強く、説明することが重要なのです。 
     説明は、自分自身で行うのがベターですが、だれかに頼んでも構わないと思います。だから私は、バイリンガルのナオミさんに同席をお願いしたのです。無理にカッコをつけてはいけません。自力で無理そうなら、適任者にお願いする。自分の英語力でどこまでできるか(自分の英語力の限界)を、普段から客観的に認識しておくことも重要なのです。 


    私 「ナオミさん・・・、英語での説明をお願いできるかな?」 
    ナオミ 「OK! ペラペラペラ・・・」 


     ここで、忘れてはいけないのは、英語での説明を、ナオミさんに任せっきりにしないこと。ナオミさんはこちらの言いたいことを通訳して、代弁しているだけで、話し手はあくまでも “自分” です。ナオミさんが話す際には常に横について、必要に応じて補足説明をすること。加えて、SMEの目を見ながら、「こういうことなんだ、理解してくれ!」と必死に訴えること。 このような姿勢を忘れてはいけません。 

    SMEとの なが~い お付き合いが始まる?!

    SME 「OK! タカシ・・・ お前の言い分はわかった・・・」 


    ホッ・・・、何とかわかってくれたか・・・(T-T) ナオミさん、ありがとう・・・(T-T)(T-T) 


    SME 「このクライアントも含め、日本企業には、俺が言ったような視点・・・、つまり、戦略をきちんと整理したり、目標値を公式に明示したりする姿勢が、抜け落ちているということだよな?」 
    私 「そうそう・・・」 
    SME 「逆にいうと、戦略をきちんと整理したり、目標値を設定するような提案は、受けたことがない、ということだよな?」 
    私 「そうそう・・・ん(?)」 
    SME 「だったら、正々堂々と提案しようじゃないか? いやぁ、良かった良かった・・・ 以前に同様の提案をして、断られたのなら難しかったところだがな・・・ ハッハッハ!」 
    私 「ハッハッハ・・・(やぶへび やんけ・・・(T-T)(T-T)(T-T))」 


     何のことはない、必死の説得空しく、新しい提案エリアとして、新規に積み増しされてしまいました・・・トホホ・・・。なんやねん、それ! 


     ただ、冷静に考えると、SMEの言っていることは “正論” なのです。戦略なしにシステム開発を進めた結果、後になって、「そもそも、なんで、こんな大金使って、システムを作ってるんだ!」と、クライアントの経営陣が暴れだすのは、よくあること。提案してお金をもらえるかどうかは別として、初期の段階で “正論” をぶつけてみるのは必須です。「どーせ、お金取れないし・・・」と諦めて、何もしないという態度は、日本法人の悪弊なんです。それを、思い出させてくれる意味でも、SMEの来日というのは、それなりに意味がある。仕事の進め方が硬直化したとき、今回のように “外圧” を使って、軌道修正するのは、短期で大きな変革をするためには有効な手段だと思います。 


    で、金曜日の午後・・・ 


    SME 「よーーし、これで 現時点の見込みが、TOTAL 150になった・・・ タカシ、ご苦労さん!」 
    私 「Th、Thank you・・・(ヘロヘロでんがな・・・)」 


    SME 「あ、いい忘れてたが、進捗状況を確認するために、2週間後に再度、日本に来るから。スケジュール空けて、待っていてくれよ!」 
    私 「ギャフン!(古い言い回し!)」 


    次回 「SMEが “また” やって来た!(仮題)」 をお楽しみに! って、まだ足らんのかーーーーーーーーーーーーーーっ! これからが大変な、SME対応でした。では! トホホ・・・ 

    • このエントリーをはてなブックマークに追加

    外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    合わせて読みたい

    ---