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タカシの外資系物語

成果の上がる 役員の関与とコミットメント (その2)2012.12.18

    役員が怒る理由

    (前回の続き) プロジェクトを成功させる上での最大の要因は、「経営陣の関与とコミットメント」である・・・ でも、そもそもやる気がなかったり、やる気はあってもピントはずれの役員連中を、どのようにコミットさせるのか?! この難題に対して、同僚のアメリカ人は、「役員というのは、“権限” を持った “道具(ツール)” と見なして、使い倒せばいいのだ!」という、目から鱗のアドバイスをくれました。では、「社長をはじめとした役員をを使い倒す」 とは、具体的にどういうことなのでしょうか?  


     前回のコラムでも少し述べましたが、私自身が担当する案件について、役員のReview(レビュー:状況報告をしてコメントをこらうこと)を受けた際、こんなやり取りがありました。 

      

    私 「・・・という状況です。現状のコンサルティング・プロジェクトは順調なのですが、後続フェーズといして、より大きい提案をぶつける上で、内容がイマイチとの評価を受けておりまして・・・」 
    John役員(アメリカ人) 「タカシ・・・ 後続の案件が見込めるという理由で、現状のコンサルは、かなりの値引きをしたんじゃなかったっけ?」 
    私 「は、はぁ・・・(T-T)」 
    John役員 「つまり、その投資は無駄に終わりそうだ、と言っているんだな・・・」 
    私 「い、いや・・・(T-T)(T-T)」 
    John役員 「もしそうなったら、お前のチームの人数を半減する! 成果を出せないチームに、リソースは必要ない!!」 
    私 「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン(T-T)(T-T)(T-T)」 


     ありがちなパターンです。役員を、「自分より偉い人 決して、逆らえない人」と捉えると、これ以上前に進まなくなります。 
    ここで発想の転換。この役員だって、案件が獲得できなくて、実績が上がらなければ困るはず。特に、外資の場合には、即クビになる可能性もある。だから、役員であるJohnが本当にやりたいことは、私をいじめてチームの人数を減らすことではなく、どうにかして案件を獲得することなのです。役員にいじめられると、つい 「この人は、単に部下をいじめることに生きがいを感じているのではないか? 私はこの人に潰されるのではないだろうか?」という考えに陥りがちですが、それは間違いです。役員にしてみれば、「自分を使ってほしいのに、その案も出さないまま、少し怒るとすぐ凹む」から、イライラして怒り続けるのです。 

    困ったら・・・ 役員を脅す?!

     「このままではダメだ・・・ 自分の力ではどうにもならん・・・(T-T)」 そう思ったら、役員を使う。使って、使って、使い倒す! 怒られて凹むんじゃなくて、『このままでは、前フェーズでの投資が水の泡になりますぜ・・・』って、逆に脅すぐらいの迫り方をすればいい。 


    前述のレビュー後、私は再度、Johnとの面談機会をを設定してもらい、以下のようなRequirement(要望事項)を突き付けました。 


    「次フェーズ獲得のためには、○○部門のBさん と ロサンゼルス支社のMr. C の 参画が必須である。至急、手配に動いてほしい」 


    John役員 「・・・これが満たされれば、次のフェーズも取れるのか?」 
    私 「ま、そうすね(高飛車!)」 
    John役員 「いつまでに必要なんだ?」 
    私 「来週の初めには来てもらわないと無理っすね(クチャクチャと、チューインガム噛んでる風!!)」 
    John役員 「ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・ ロス支社なら、支社長のRobertに言えばいいかな・・・?」 
    私 「ん? ま、まさか、役員のくせに、この程度の調整ができないんすかっ?(完全にナメてる!!!)」 
    John役員 「す、すんましぇーーん (T-T) 至急、手配させてもらいまーーーっす (T-T)(T-T)」 


    ま、これは誇張しすぎとはいえ、イメージこんなもんです。役員は、、“権限” を持った “道具(ツール)”。使われてナンボ、実際に機能してナンボ なのです。 

    先回りして、役員の仕事を肩代わり?!

    とはいえ、役員をイジめても仕方ありません(図に乗ると、こっちがクビになる!)。役員のカバー範囲は広いわけで、私の案件だけを見ているわけではない。だから、時間がない。そこは配慮してやる必要があります。また一般に、役員の実務能力はお世辞にも高くありませんから、その点も多めに見てやる。つまり、あまり多くを求めてはいかんのです。欲しいのは、彼(彼女)の “権限” です。そこだけを有効活用できるように、うまく回さなければなりません。 


     例えば、外資でよくやるのは、「依頼メールを代わりに書いてやる」ということ。上述の会話の場合、私が依頼した役員のJohnは、ロス支社長のRobertに依頼する流れになります。このようなことが想定できるなら、先回りして、JohnがRobertに送るメールを作っておいてやるのです。 


     (私がJohnのために準備したメール)

    John, pls send the request mail to Robert(LA) as follows. 
    -------------------------------------------------------------------------------- 
    Dear Robert 
    I have request you for SME(*) resources LA, ・・・ 
    ・・・ 
    ・・・ 
    (* SME = Subject matter expert その分野の「専門家」という意味)

     


     外資では、あらゆるやりとりについて、evidence(証拠)を残します。これは、後で、言った言わない・・・ とならないためでして、どんなに親しい間柄でも、決して口約束はしない。メールはポピュラーなevidence手段で、この手のやり取りでも多用されます。ときには、会社の戦略を揺るがすような重要事項も、メールの「OK!」がevidenceになっていたりして、びっくりすることもあるくらい・・・ 
     一方、日系の場合は、役員同士の “握り” は、密談で交わされ、evidenceなど残さないのが普通です。なので、役員の作業を肩代わりできない傾向がある。このことも、日系企業において、一般社員が役員を使い切れていない理由の1つのように思います。 


     いずれにしても、役員は 「自分より偉い人 決して、逆らえない人」 ではなく、「“権限” を持った “道具(ツール)”」 です。どんどん使ってやりましょう! 


    ちなみに、私はこの方針で役員を使い倒して、結果、怒られたことは一度もありません。むしろ、役員を使わずに自分で抱え込んだときに、厳しい非難を受けることが大半です。日系企業には、自分が使い倒されることに不慣れな役員が多いかもしれませんが、みなさんも是非トライしていただければと思います。強面で有名な役員も、結構喜ぶかもしれませんよ!

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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