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タカシの外資系物語

外資流! 「辞めたい」人への 説得策(その3) - 外資に残る理由2012.10.09

    アメリカ人が “不寛容” になる人とは?

    (前回の続き) 転職を検討している若手社員を引き止めるため、タカシは、「短期海外研修(≒短期MBA)」を “ニンジン” とする策を頻繁に使っています。先日、転職話を持ちかけられたAくんに対して、タカシが同様のオファーをしたところ、「短期MBAって、意味あります? そんなに魅力的じゃないんですけど・・・」と、予想外の反応・・・(T-T)。さて、タカシはAくんを、どのように説得したのでしょうか・・・? 


    Aくん 「海外のMBAプログラムって、ホントに楽しいですか? ためになる? 英語の苦手な日本人が、ネイティブの中に混じって数週間過ごすなんて、苦痛なだけでしょ?」 


     短期MBAに代表される海外研修では、以下のような “苦痛” が想定されます。というか、私も実感として味わいました・・・(T-T)。

    (1) 英語の壁  
    (2) 予習(宿題)がハンパなく多い  
    (3) 日本に残してきた仕事が気になる 


     しかし、実はこれらの “苦痛” は、考えようによっては大した話ではない。もっというと、“メリット” と考えてもいいくらいだったりする。 


     まず、「(1) 英語の壁」 は、帰国子女でもない限り、日本人ならだれでも該当することです。「日本人なんだから、英語がnativeのようにいかないのは当然でしょ? あなたたちに、それを受け入れる “度量” はないの?」 ぐらいの考えで、太っ腹に構えた方がいい。 


     実際、英語native、特にアメリカ人は、英語ができないことに寛容です。一方で、黙り込んで、議論に参加しない姿勢には、極めて不寛容。だから、日本語混じりで構わないので、積極的に発言したほうがいい。英語nativeしかいない、失敗しても仕事に影響を与えるわけではない、こんな贅沢な “英会話教室” なんて、いくら望んでも日本では実現しないわけですから、存分に堪能した方がいいに決まっている! 


     また、積極的に議論に参加していると、日本人の強みを見せつけることも可能だったりします。もう、かれこれ10年以上前のことになりますが、ロサンゼルスで、あるソフトウェアの研修に参加したときのこと。当然のごとく、私の英語はボロボロだったのですが、それにひるまずに研修チームの中心に居座っていたところ、「タカシの計算力はすごいな! You, super computer!」と、メンバーから絶賛されたことがあります。「24 + 57 + 79 = 160!」って、瞬時に計算しただけなんですけどね。経験上、計算の正確さ・速さで、外国人に負けたことはありません。よく、インド人の計算力はすごいと言われますが、私の方がすごいと思います。だって、インド人に負けたことないですもん、実際・・・と、自画自賛。ま、私は珠算2級なので、日本人の中でも計算が速いほうだと思いますが、日本人の大半は、計算力では外国人に負けないと思います。要するに、自分の強み・個性を発揮すれば、英語の壁など問題にならん、ということです。 

    バカになれ?!

     次に、「(2) 予習がハンパなく多い」という点に苦労する日本人は、確かに多い。私も短期MBAに参加した際、「明日までに関連の論文5本読んで要約してくること」「来週までに、課題図書5冊を読んで疑問点を挙げてくること」 など、人間業とは思えない課題を与えられて、閉口したことがあります。 


     「よーーし、これも試練。徹夜して頑張るぞ!」 基本的な姿勢はそれでいいのですが、少し立ち止まって、落ち着いて考えてみましょう。まともにやったら、週末ぶっ通しで勉強する羽目になる。2年の長期MBAならそれもいいでしょうが、短期MBAでそんなことをしてしまったら、大きな目的の1つである “人脈構築” が全くできなくなります。週末は、クラスメートと一緒に、どっか遊びに行きたいじゃないですか!、っていうか、勉強以上に、そっちの方が大事だし!! 


     そもそも、英語nativeのクラスメートを見ていると、どうも、課題をきちんとこなしているようには思えない。よくよく聞いてみると、 
    「タカシ、こんな山のような課題、アメリカ人の俺たちだって無理だよ! まさか、真面目にやろうと思ってるの? You are CRAZY!」 
    とのこと。じゃ、どないせぇっちゅうねん? それは、「山を張る」のです。授業で取り上げそうな部分はどこか? その部分だけ、重点的に予習する。山がはずれたら、観念して、必死で授業についていく。短期MBAの場合、「落第」というのは基本的にないので、この方法でも通用します。そうすれば、余裕を持った滞在生活が送るというわけ。 
     実はこれ、言い方を変えると、「捨てるものを決める」ということと同意。実際のビジネス、仕事術って、究極的には 「何を捨てるか?」 に尽きます。その練習・訓練だと思えばいいのです。 


     最後の「(3) 日本に残してきた仕事が気になる」については、一言・・・ 「気にするな、無視すればいい!」です。あなた一人が数ヶ月いなくなったところで、何も変わりません。組織というのは、そういうもんです。仮に、あなた一人がいなくなったために、会社が潰れるようであれば、そんな組織にはいない方がいい。そもそも海外研修を打診されたということは、あなたが勤めている会社は、あなたが数ヶ月いない程度で影響が出るような脆弱な組織ではないし、あなたが腰を落ち着けて研修を受けることを保証してくれたわけです。大手を振って、仕事を忘れてもいいのです! 


     あと、この手の研修を成功させる最大の “コツ” は、「バカになる」 ことです。既存のしがらみを忘れて、恥ずかしさも忘れて、冷めた自分も否定して、どっぷりと研修にハマること。そうすれば、どこの国に行こうが、何語で実施されようが、研修は楽しいし、価値あるものになるはずです。 
    かの、スティーブ・ジョブズも言っています。 Stay hungry ! Stay foolish ! 

    他者の “普通” に触れる経験は、あるか?

     さて、そもそも、海外研修に参加する最大の “メリット” とは何でしょうか? それは、

    「本当の異文化に触れ、異文化と付き合い、自分のビジネス対象として視野に入れる能力を身につける」

    ということです。 


     海外研修に参加すると、本当にとんでもない奴がいっぱいいます。研修初日から、「時差ボケで半日休む」奴とか、研修を勝手に抜けだして買い物に行く奴とか。人に意見にケチをつけまくるくせに、自分の番になるとからっきし駄目な奴とか、2日目ぐらいで、「面白くない!」と帰国する奴とか(←こういう人、結構多いです、実際・・・) 
     思わず、「普通の奴はおらんのかい、普通の奴はーーーっ!!(怒)」 と叫びたくなるのですが、じゃ、“普通” って、何なのか? 平均的な日本人の考え方をモノサシにして、勝手に “普通” と思っているだけではないのか?  


     今後、日本が生き残っていくためには、内需に頼っていたのでは、どうにもならない。いかに、海外で売るか? が重要であることは、日本人全員が理解していると思います。そのような状況の中で、自分の “普通” を押し付けることに意味があるのか? 他者の “普通” = 日本人にとっての “異質” を理解しなくていいのか? ということなんです。  


     「今の職場で、他者の “普通” を理解する経験が積めるか? そういうチャンスが用意されているか?」というのは、転職する or 今の会社に残る を考える上で、大きな判断基準だと思います。技能としての資格は、独学でもナントカなります。しかし、「他者の “普通” を理解する経験」というのは、組織的に対応してもらわなければ、経験することは難しい。 


     突き詰めると、「仕事が面白くない」というのは、他者の “普通” = 自分にとっての “異質” に触れる機会がないからなのだと思います。上述の “異質” な奴らに触れると、本当に笑ってしまうほど面白い。ものすごく、刺激を受ける。そして、次に、「では、この人たちに何か売るとしたら?」「この人たちと一緒にビジネスをするとしたら?」を考えてみる。そして、研修という場で、自分の考えを擬似的に実践してみる。最初は失敗する。修正して、再度トライしてみる・・・ これは本当に、価値ある経験となります。  


     外資系企業というのは、日系企業に比べると、格段にそういう経験を積みやすいはずで、それを経験せずに外資系企業間を Job Hopperのごとく転職しまくっても、仕事は一向に面白くないし、スキルも身につかないし、給料も上がらないのだと思います。 



     Aくん 「・・・なるほどねぇ・・・、タカシさんの言いたいことは、よくわかりました。海外研修には、是非行かせてください。研修参加後、とりあえず半年間、他者の “普通” に触れるために奔走してみます。また、相談します・・・」 


     ホッ・・・! Aくん、ナントカ思いとどまってくれたようで、良かった、良かった・・・(T-T)。と、後ろから聞きなれたアメリカ人の声が・・・ 


    「Hi, Takashi ! Let’s review your proposal to XXX bank !」 


     上司のJohnが呼んでいます。私もまた、日々、他者の “普通” をハンドルする難しさを痛感する毎日です・・・(T-T)(T-T) 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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