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タカシの外資系物語

“権限委譲” は出世のチャンス !? ( その 2 )2012.03.13

    権限委譲された タカシ は・・・ ?

    (前回の続き) 前回のコラムでは、外資系企業において、 “権限委譲 = Delegation” が発令されるタイミングとその意義についてお話しました。権限委譲というのは、単なる処理プロセスの省力化だけでなく、次世代を担うエリート社員選択の場になっていることを理解いただけたと思います。では、権限委譲の “受け手” = 現状の権限者より下位に位置づけられる社員(もしかしたら、未来のエリート) は、これらの施策をどのように受け止めているのでしょうか ? 



    まず、私の場合からお話しましょう。Delegation のアナウンスがされると、当然のことながら、私のところにもいくつかの権限が下りてきます。従来、100 万円の案件決裁しかできなかったものが 500 万円に引き上げられたり、スタッフの海外出張を直接指示できたり・・・ 私の場合は、「ここぞ ! 」とばかり、これまでたまっていた鬱憤を晴らすかのように、“承認しまくり”ます。だって、ルールとして正式に認められたのだから、やらなきゃ損 ! 仕事も早く進むし、何だか気分もいいし、二度おいしい !! 「ハンコ押してやるから、どんどん持ってこーーいっ ! 」 ・・・ 
    私自身こんな感じなので、Delegation のアナウンスが発令された瞬間から、私のところに承認の “待ち行列” ができます。みるみるうちに、Mail Box に 「Action Required ! (処理要)」の文字があふれます。わが社の承認プロセスは、全て電子決裁でワークフロー化されていますから、物理的にハンコを押すことはほとんどないのですが、これがハンコの時代だったら、多くの社員が私の前に列をなして壮観だったかもしれません。もちろん、内容はちゃんと見ていますから、誤解なきよう・・・ 

    秘儀 ! “権限委譲返し” !?

    多くのマネージャーは、私と同様の反応(=権限委譲されたら決裁しまくる)を示すのではないでしょうか。しかし、ごく稀に、異なる反応をするマネージャーもいるのです。 



    「私は権限委譲を受けたくない。なぜなら、この決裁責任に見合うような給料をもらっていないから・・・」 



    そりゃそうなんだけどさ・・・ ま、ここはそんなカタイこと言わなくても・・・ と思うんですが、中にはこういう頑なな人もいる。「権限を委譲するなら、同時に給料上げろ ! 」 ギスギスしてるなぁ、んったく・・・ 
    実際に、外資系企業では上記のような考え方の人が、結構います。それは、担当業務が明確に定義されており、中でも権限責任に応じてポジションが決められているからだと思います。「責任の重い人は給料も高い」 この当たり前の大原則が徹底されているわけです。 
    私の経験則でいうと、日系企業でもこの大原則は、“ほぼ” 守られていると思います。一方で、「責任はほとんどないのに、給料だけ高い人」もそれなりに存在するのも事実。実力主義ではなく、年功序列を優先した結果、このような人が出てくるわけです。さすがに以前と比べると、このような人は早期に退場させられる傾向にはあるようですが・・・ 



    権限委譲というのは、権限レベルを下げただけであって、従来の権限者から権限を剥奪したわけではない。つまり、権限委譲後も、委譲前の人が決裁してもいいわけです。例えば、部長から課長に権限委譲したにもかかわらず、課長が権限行使を拒否した場合、その決裁は部長に戻ってきます。以前私がコンサルティングを実施した会社で、こんなことがありました。その会社でも権限委譲を実施したわけですが、権限を下ろされた下位レベル社員の多くが、「権限委譲を受けたくない ! 」と言い出したから、さぁ大変 ! 結果、下位レベル社員は事案を決裁せずにそのままスルーして上位者に決裁を仰ぎに来たために、かえって承認プロセスに時間がかかるようになったとのこと。“権限委譲返し ! ”ってところでしょうか。いずれにしても、本末転倒もいいところです。 

    “権限委譲” = スキルアップ !?

    “権限委譲返し ! ” を避けるには、どうすればいいのでしょうか。まずは、権限委譲の「目的」を明確にアナウンスすることでしょう。「それぐらい、言わなくても察してくれよ・・・」ではなく、「業績回復のために、承認プロセス時間の大幅な短縮を目指している。委譲された者は、ガタガタ文句言わずに、委譲後の決裁処理を遅滞なくやれよ ! 」と、はっきり言った方がいい。 
    その上で、承認プロセスが短縮化し、結果として業績が回復した部門があれば、何らかの「報酬(ご褒美)」を与える。個人的な給料UPは難しいでしょうが、組織・チームとして頑張った結果を、チーム表彰のような形式で、具体的に表現することが重要です。個人的に文句がある人も、組織・チームとして取り組ませれば、そうそう文句は言えないはずです。 



    もう 1 つ重要なこと。それは、委譲される側の「心構え」です。あらかじめ定められた仕事をやるのは当たり前。少し上の、これまで経験したことのない、高度な判断を伴う業務をやってこそ、給料をもらう値打ちがあると考えないといけない。また、現状ランクの仕事を超越したところで “背伸び(stretch)” しなければスキルは伸びないし、それをトライする社員でなければ、経営陣も昇進させてはくれません。この手のスキルや経験、つまり、「自分が所属する会社における上位の意思決定プロセスへの関与」というのは、当たり前のことですが、本や専門学校で学べるものではありません。権限委譲というのは、またとないスキル向上のチャンスであって、それを返してしまうとは、非常にもったいないことなのです。 



    とはいえ、権限委譲に伴って下りてくるのは、スキルが向上するようなチャレンジングな決裁権限よりも、だれでもできるような面倒な作業の方が多いのかもしれません。もしそうならば、これまで、そんなしょうもない作業を自分の上長がやっていたという事実をもとに、そもそもの権限体系を見直すように動くべきなのです。 
    「私の仕事はこれだけ。これが給料分。これ以上しない ! 」 ではあまりにも寂しいし、そういう人ばかりでは、組織に活気がなくなってしまいます。そういう意味では、経営層は、権限委譲発令のタイミングをとらえて、自社の活気というか、「より上位の仕事にチャレンジする土台があるか ? 」ということをはかることも可能なわけです。 



    週末のこと。奥さんが風邪気味だというので、私が夕飯の買い物に行きました。早速、わからないことがあったので、奥さんに電話・・・ 



    私 「あのさぁ・・・ 買い物メモに “ハンバーグ用メンチ” って書いてあるんだけど・・・ メンチにも種類がいっぱいあって、値段も千差万別で、どれ買っていいのかわからんのだが・・・(T-T)」 
    奥さん 「アナタに任せるから、よろしく ! 」 



    ここでも “権限委譲” かーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T) どれ買うていいのか、分からんわーーーーーーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T)(T-T) 


      
    口ほどにもない タカシ でした・・・ 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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