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○○ Consulting Japan Managers,
Attached below is the ○○ Consulting Japan 1st Pricing and Proposal Delegation is effective February XX, 2012 ・・・
( ○○コンサルティング・ジャパン マネジャー各位
2012 年度 1 回目となる 提案価格決定に関する “権限委譲” を、2012 年 2 月XX日より発効します。詳細は以下の通り・・・ )
先日、上記のようなメールがマネージャー・レベル以上に届きました。内容は、いわゆる “権限委譲 = Delegation” に関する連絡です。差出人は、部門トップの上級役員。メールが届いたのは 「 2 月XX日」 でしたので、正式アナウンス & 即日発効 ! 結構急いでいますね、こりゃ・・・
そもそも、 “権限委譲” とは何か ? ここでいう “権限” とは、決裁権限のことを言っています。わが社はコンサルティング会社という性格上、全てのビジネスはクライアントへの提案から始まります。提案される各案件の性質は、規模(≒価格)・内容(戦略立案主体か、システム開発主体か)・難易度(.これまで同様の案件を手がけたことがあるか否か、等)などの切り口で分類されますが、最もわかりやすいのは「価格規模」ですよね。「価格が大きい提案は、より上級役員の承認が必要・・・」というように、価格規模に応じて、提案可否の承認をするランクが決められています(実際には、内容・難易度によっても決裁権限レベルは異なってくる)。
“権限委譲” というのは、通常のルールで決められた決裁権限レベルを、下位レベルでも OK とすることを指します。例えば、こんな感じ。
【 通常ルール 】 【 “権限委譲” 後 】
役員 1億以上 3億以上
部長 5,000万 – 1億 1億以上 (通常時の役員権限)
課長 1,000万 – 5,000万 5,000万 – 1億 (通常時の部長権限)
主任 1,000万未満 1,000万 – 5,000万 (通常時の課長権限) ・・・
みなさんの会社でも同様のルールがあろうかと思います。では、どのような状況で “権限委譲” が実施されるのでしょうか ?
権限委譲が行われる状況(タイミング)は、大きく分けて、2 つあります。
(1)決裁権限者が長期不在となるとき
(2)決裁完了時間を短縮化するため = 決裁プロセスを省略するため
(1)に関しては、多くの企業で平常時から運用ルールがあらかじめ決められていると思います。部長が海外出張なので、課長がその代行をする・・・ なんてのは、頻繁に起こりますからね。
ここで、外資ならではの取り組みを 1 つ。多くの外資系企業では、権限の“代行者” 以外に、“Bench” というのが設定されています。“Bench” というのは、上位の権限者が何らかの理由で、「復帰のメドなく、長期離脱する」ことを想定した際の代行を指します。例えば、急に退職するとか、極端な話ですが、事故で死んじゃうとか・・・ (“Bench”は、「仕事がなくてヒマな人」という意味にも使われます。意味が両極端で違いますので注意!)
「つまり・・・、“Bench” って “代行者” と同じじゃねーーの ? 」 微妙に違うんですねぇ、これが・・・ “代行者” は、現時点、たまたまその権限者の下にいるだけの人であって、その人が将来において、上位ランクに昇進するとは限らない。一方、“Bench” に指定される人というのは、次の昇進者、つまり現状の決裁権限者の “後継者” という意味合いが強いのです。
日系企業の場合、現状の “代行者” は、同時に “Bench” であることが多いように思います。もちろん、外資の場合も同様のパターンはあり得ますが、可能性としては低い。“後継者” は現状の “代行者” ではなく、“Bench” から選ばれることの方が圧倒的に多い。“Bench” は “代行者” より年齢の低い人が指名されていることがほとんどなので、いきおい、“後継者” は若手からの抜擢人事となるわけです。
上記の選抜方式は、外資における上層部(エリート)育成の考え方に根ざしています。多くの外資では、年功序列を否定する(というか、そもそもそんな考えが存在しない)とともに、より多くの若手に昇進のチャンスを与え、長時間かけて育成し、競争させます。「次は誰 ? 」がわからない状態で競わせる。それによって、日系企業には見られないような、若手幹部候補生の著しい成長を促し、その人材に次世代を託して行くというわけです。
実は私、数年前に、ある役員から、「君は私の “Bench” に指定されているから、頑張ってくれたまえ ! 」と言われたことがあります。「おいおい、えらいこっちゃーーーーっ ! 」とドキドキしていたのですが、最近になって、その役員が会社を去りました(別の会社の上級役員になりました。連れてってくれよ、んったくぅ・・・)。で、その後釜には、当然のように、私以外の人が・・・。ということで、私の 「“Bench” =次の役員後継者候補」 という図式は、海の藻屑と消えたわけです、トホホ・・・(T-T) ちなみに、後継の役員は、外部の会社から新規で採用された人なので、私を含め、全ての “Bench” 要員がお眼鏡にはかなわなかったということです。“外部” て・・・、そんなんありか・・・(T-T)(T-T)いずれにしても、そう簡単に昇進はできないということですな。
(2)について、企業が決裁プロセスを省略する必要に迫られる状況は、以下 2 つパターンです(ここでは、「既存の決裁プロセスそのものに欠陥があり、それを改善する場合」は除いています)。
(A)案件が山のようにあり、次々にサバいていく必要があるとき = 通常のプロセスでは間に合わないとき
(B)案件がほとんどなく、プロセスを省略することで、案件そのものの上申を促すとき = プロセスを楽にして、推進しやすくしている
私はこれまでの外資系勤務経験で、おそらく数十回の権限委譲を経験していますが、パターン(A)は、1 回か 2 回しかなかったように思います。そのほとんどは、(B)パターン・・・。本日わが社で出されたアナウンスも、間違いなく(B)パターン。つまり、現在、案件がほとんどないのです。「決裁プロセスを楽にしてやる。頼むから、案件をたくさん上げてきてくれ・・・(T-T)」 これが、わが社経営が、このアナウンスに込めた “意思” なのです。
景気が悪いですからねぇ・・・、ま、仕方ないか、アハハ・・・ などと、笑ってはいられない。アナウンスが出た直後から、わが社のマネージャー陣は、「とにかく提案だ、提案をかき集めろ ! 」と、かけずり回っています。というのも、この後のアクションとして、その “効果” を確認するための「モニタリング」が開始されることがほぼ間違いないからです。経営の思惑として、権限委譲によりプロセスを省力化したにもかかわらず、案件数が伸びないというのは、マネージャーの怠慢であるという意識が強いので、こうなる。でも、ですよ・・・、案件が少ないのは、世の中全体の景気が悪いことが主要因であって、決裁プロセスを省力化したからといって、急に案件数が増えるわけではないのは自明です。それでもなお、わが社の経営が権限委譲を決めたのは、多分に、マネージャー陣に対して、強烈なプレッシャーをかけているに相違ない。結果次第では、後続に “血の大粛清”(リストラ) が控えている可能性もある。つまり、権限委譲というのは、経営がヤバくなっているシグナルとも言えるわけです。
次回のコラムでは、権限委譲の “受け手” = 下位に位置づけられる社員 の課題についてお話したいと思います。では !
(次回へ続く)
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1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。
みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。
書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ