グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

財政破綻国は“働きすぎ” ? ( その 2 )2011.10.11

日本人が長時間働いても、イマイチ成果が出ない理由とは ?

前回の続き) 前回のコラムでは、財政破綻が問題となっているギリシャが、実はドイツよりも国民の労働時間が長いという統計がある・・・ というお話しました。財政破綻といえば、日本も同様の状態にあります。加えて、日本の労働時間も世界屈指なわけでして・・・ ということは、国民が働きすぎる国の財政は破綻する ? なんていう仮説もありえるわけです。ま、このあたりの検証は、専門家諸兄に任せるとして、今回のコラムでは、「長時間、それなりの質を保って働いているのに、どうして成果が出ないのか ? 」という点について、ビジネスの観点から検討してみたいと思います。

「長時間、それなりの質を保って働いているのに、どうして成果が出ないのか ? (または、成果が劣るのか ? )」 これには、いくつかの理由が想定されます。

 

【想定される理由】
(1) 仕事の質はそれなりに高くても、“それ以外の条件” が劣っているため、同じアウトプット産出のために時間がかかる
(2) 仕事の質はそれなりに高くても、アウトプット産出にとって “意味のないこと( = ムダ)” に時間をかけ過ぎている
(3) 実は、日本人の仕事の質は高い・・・というのは “幻想” で、欧米に比して、高くない


まず (1) についてですが、例えば、日本の場合なら、天然資源が少ないといったことが、“それ以外の条件” に該当します。ま、この理由は、ある程度当たっているんでしょう。石油や鉄がバンバン採れる国に比べれば、それを輸入して日本に持ち込むだけでも、カネと手間がかかるのは、直感的に理解できます。

 

ただし、日本の国土は狭いので、輸送コストは欧米先進国より比較的低いなど、優位な点もある。今回のテーマにおける文脈に沿って言えば、「 (1) の要因は否定できないが、それが直接、長時間労働につながっているとは言い切れない」という感じでしょうか。

 

少し余談になりますが、そう言えば、「日本には天然資源がない。だから、われわれ国民は汗水たらして働かねばならない・・・」というフレーズ、子供の頃、よく聞きませんでした ? 30 年以上前、私が小学生の頃にはよく耳にしたのですが、最近はあまり聞かなくなったような・・・ ま、これは一種の国家的プロパガンダですから、個人的には好みではなのですが。しかし、このような発想があったからこそ、戦争に負けた小国が、高度成長を達成できたというのも事実でしょう。日本が経済大国になって以降、その地位に満足して、頑張ることを辞めたことが、経済停滞の一因であるような気もします。

“企画部” の仕事って、何だっけ ?

 

次は (2) の理由。私はやはり、この要因が大きいように思います。日本人の仕事ぶり(ワークスタイル)というのは、「一生懸命やっているんだけれども、ムダなことをしている」部分が相当ある。ただし、全ての分野で、この状況が該当しているわけではない。製造分野の仕事ぶりは、世界屈指の効率性を維持しているのですが、それ以外の分野 = サービス分野や企画などの本部業務 の効率性が極端に低いんですよね、日本の場合。

 

高度成長期における発展というのは、イコール、製造分野での発展ですから、効率的な日本の仕事ぶりは世界的にも優位でした。欧米先進国よりも比較的低い賃金の国民が、昼夜を忘れて長時間、死に物狂いで働くのですから、そりゃ世界一にもなるでしょう。結果、「ジャパン・アズ・No1 」なんて、もてはやされていたわけです。

 

しかし、 1980 年代以降、日本が先進国の地位を確立すると、どうも具合が悪くなってきました。思うように発展しなくなった日本は、結果、血迷ってバブルを自分で作って、自爆することになります・・・

 

1980 年代以降というのは、ハード(製造分野)の時代ではなく、ソフト(サービスやアイデア)の時代です。サービス分野や企画などの本部業務の効率性が、雌雄を決するわけです。しかし、この分野での日本は、ことのほか弱かった。言い換えると、この分野において、欧米先進国と同程度のアウトプットを出すのに、時間をかけ過ぎているのです。

 

例えば、企業の「企画部」なんてのは、その典型です。「企画部」というと、なんかこう、アイデアを出し合って、バリバリ企画している、カッコいいイメージがありますが、とんでもない ! 私が知る限り、日本企業の「企画部」で、企画のために使っている時間など、ほとんどありません。では、何に時間をかけているのか。それは、「企画のための調整」「企画のための準備(材料集め)」です。経営戦略立案のための各部調整、競合他社と横並びでいることを目的とした計数集め・・・ こんな作業ばかりです。斬新なアイデアなんて、出やしない。というか、調整と準備に時間を使い過ぎてしまい、本来の「企画(アイデアを出して、実行プランを練る)」にまで手が回らないのです。

 

一方、欧米企業で「Planning Division」といえば、その主業務は、その名の通り、「Planning」です。企業理念やポリシーが明確なので、各部調整はほとんど必要なし(みんな、1 つの目標に向かって、ベクトルが揃っている。というか、ベクトルが揃っていない人材はクビになる・・・の方が正しいか ? )。情報収集はシステムが自動で行ってくれる。だから、「Planning」に専念できるわけです。

 

IT コンサルタントの立場から補足しておくと、近年の欧米企業における IT 投資の多くは、「Planning」 を実践するための材料を集める仕組み作りに振り向けられています(いわゆる、「戦略的IT投資」)。一方、日本企業では、既存ルーティン業務の保守に、依然として多くの IT 投資が使われている。この差はやはり大きいと思います。

1 時間、席に座っていられますか ?

 

最後に (3) ですが・・・ これを認めてしまうと、「長時間、それなりの質を保って働いているのに、どうして成果が出ないのか ? 」という仮説命題そのものを否定しているので、議論にならんのですが・・・
ただ、長時間働いていると、質が落ちてくる、というのは、それなりに正しいと思います。人間、そんなに長時間、集中力を継続できるもんでもない。1 日 8 時間労働とはいうものの、実際のところ、集中して仕事をしているのは、2 - 3 時間程度ではないでしょうか。

 

「集中力の継続」という観点だけで見ると、日本人の方が、欧米人のそれより高いように思います。これはひとえに、学生時代の訓練のたまものかな・・・、と思います。私はニューヨークに 3 ヶ月程度滞在したことがあるのですが、そのときに、同僚の子供の参観日(“Family Day” とか言ってました)に行ったことがあります。見ると、小学 5 年生にもかかわらず、児童は歩き放題、しゃべり放題。 1 コマ 45 分の時間、机でじっとしていられる忍耐力は、日本固有のものだと実感しました(最近の小学校は、先生の“ガバナンス”が弱く、児童は歩き放題、しゃべり放題で、欧米化が進んでいるという噂。10 年後には、「集中力の継続」という点での優位性も薄れてくるかもしれません)。

 

さて、ギリシャ危機から、かなり発展・飛躍したお話をしてしまいました。個人的には、「これだけ長期間、長時間働いてきたし、これからも働くのに、無駄なことはしたくないな・・・」という、漠然とした思いがあります。みんな一生懸命働いているのだから、それを何とか成果に結び付けたい・・・。もっと言うと、「ジャパン・アズ・No1 」よ再び ! なーんてのにも、期待したいし。ま、ちょっと古風なおっさんの独り言でした。では ! 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム

合わせて読みたい

---