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タカシの外資系物語

Show Your Leadership ! の本質 ( その 3 )2011.08.30

心理学系リーダーシップ理論とは・・・

前回の続き) 今週は、コッター以降の代表的なリーダーシップ理論について、お話したいと思います。

コッター以前のリーダーシップ理論というのは、リーダー自身の振る舞いや考え方に焦点が当てられていました。しかし、リーダーシップというのはリーダー一人では決して成り立たないわけで、組織を構成する全ての人を研究対象にしなければ、不十分ではないか・・・ と考えられるようになりました。このような流れを受けて、コッター以降のリーダーシップ理論というのは、「いかにメンバーの意識を把握し、状況に応じた行動ができるか ? 」といった、リーダー本人よりも、メンバーありきの議論が展開されてきたように思います。
メンバーが A と思えば、 a を出す。 B を好めば、 b を出す・・・ といった研究内容は、極めて心理学的な要素が濃くなり、コッター以降のリーダーシップ理論は、心理学の一分野のような様相を見せているようにも思います。

 

数ある心理学系のリーダーシップ理論の中で、コッター以降に一時代を築いたといえる「EQ リーダーシップ」をご紹介いたいと思います。
「EQ」とは、「Emotional (Intelligence) Quotient」の略で、日本語に無理やり訳すと 「感情知性」。EQ を体系化したサロベイとメイヤーによると、EQ とは、「感情の意味や、複数の感情にかかわる関係を認識する能力、またそれに基づいて思考し、問題・課題を解決する能力」と説明されています。要は、他人の感情を理解し、コントロールする能力というわけです。
「EQ」では、「感情の識別」「感情の利用」「感情の理解」「感情の調整」という 4 つの領域に分けて考えます。しかし、実際の対人関係においては、この 4 つの能力が一体化して話が進んで行くわけで、重要なことは適切なバランスを保ちながら、対人関係を構築するということなのでしょう。

EQ リーダーシップで自己反省

 

「EQ」のモデルを応用して、心理学者のダニエル・ゴールドマンは、『EQ リーダーシップ』という本をまとめました。その中で、好業績のリーダーは、チームメンバーに対して、感情面における前向きな影響を与えていることが報告されています。
また、良いリーダーは、状況に合わせて、以下 6 つのリーダーシップ・スタイルを使い分けていることも指摘されています。

 

(1) ビジョン型(The Authoritative Leader)・・・共通の夢を提示して人々を動かす
(2) コーチ型(The Coach)・・・メンバー個々の希望を組織の目標に結びつける
(3) 関係重視型(The Affiliative Leader)・・・人々を互いに結びつけて調和の取れた組織を作る
(4) 民主型(The Democratic Leader)・・・メンバーからの提案を歓迎し、参加を通じてコミットメントを得る
(5) ペースセッター型(The Pacesetter)・・・ややストレッチした(やりがいのある)目標の達成をめざす
(6) 強制型(The Coercive Leader)・・・緊急時等において、明確な方向性を示すことで混乱を鎮める

 

実は、この 6 分類も、外資のマネージャー研修などで、よく引き合いに出されます。いくつかのケーススタディを通じて、自分はどの型(スタイル)が強いか・・・ と認識するというもの。ある講師は、「日本企業のマネージャーに多いスタイルは(2)(3)です。日系企業から転職したみなさん(私も含む)は、(1)(4)を高めるとともに、TPOに応じて、(5)(6)を有効に使うように心がけましょう ! 」と言っていました。なんともステレオタイプ的な見方である一方、確かに私自身も(1)(4)は弱いし、(5)(6)を的外れなタイミングで使っていることが多い。自己の振る舞いを反省(reflection)するという意味では、上記の6分類はそれなりの示唆を与えてくれます。
また、外国人のマネージャーの中には、(1)をやたらに強調する人が多い。しかし、私の経験上、(1)を強調して成功しているマネージャーは、あまりいないように思います。社長クラスのトップ・マネジメントは別として、やはり現場のマネージャー・クラスは、現場メンバーの視点に立った、practical な側面の方が重視されるかな、と個人的には思います。

EQ 結局、リーダーに必要なものって・・・、何 ?

 

さて、 3 回にわたって、リーダーシップ理論を俯瞰してみました。 が ! 依然として、何だかわかったような、わからんような、モヤモヤした感じ。リーダーシップって、何やねんっ !

 

先日、日本経済新聞に『道険し、憧れの宇宙飛行士』という記事が掲載されていました(2011/8/21 朝刊)。このたび、10 年ぶりに新人の日本人宇宙飛行士が 3 人誕生したのを受けた特集記事なのですが、その中にこんな記述がありました(私なりに、内容を簡略化してまとめています)。

・ 宇宙飛行士に選抜されるためには、知力・体力も重要だが、最も重要なのは人間性、なかでも、リーダーシップ・他人を支える力である。
・ 先輩や同僚から 一緒に仕事をしたい と思われる雰囲気も必要である。
・ 落ち込んで疲れきった表情で訓練から戻っても、見学の子供がいれば、笑顔で手を振る。
・ 一人前の飛行士に認められても、宇宙に旅立つまでがさらに長い。忍耐力も必要である。

 

この記事に記載されている 「一緒に仕事をしたい(と他人に思われている)」「苦しくても笑顔を忘れない」「忍耐力がある」 というのは、まさに、リーダーに必須の要件だと思います。これらは極めて抽象的な概念なので、理論化できないんですけど、机上でリーダーシップをクチャクチャ語るよりは、よっぽど腹に落ちる。

選抜された宇宙飛行士のある方が、「宇宙飛行士は小さい時からの純粋な憧れ」とおっしゃっています。おそらく、まずリーダーに必要な要件というのは、その仕事・自分のチーム・クライアントを、掛け値なしに “好き” になることができるか、ではないでしょうか。その前提がなければ、いくら理論を振りかざしても、フィクションの域を出ないように思う今日この頃です。

 

社長さん、部長さん、課長さん、係長さん・・・ 全てのリーダーのみなさん ! まずは、“笑顔” ! これだけで、部下の見る目が変わってきますよ ! 即、お試しあれ。では ! 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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