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タカシの外資系物語

外資における“自由”雑感2011.06.07

「タカシはいいよなぁ・・・ 自由だから ! 」 を解析する

「タカシはいいよなぁ・・・ 外資系のマネージャー職なら、個人主義で仕事ができるから、自由気ままだろ ? 」


これは、日系企業に勤める友人から、これまで何度も、そりゃーもう、耳にタコができるぐらい聞かされてきたセリフです。「外資 → 個人主義 → 自由気まま」という、極めて短絡的なロジックをもとにしたステレオタイプ的発言・・・。そもそも、企業に勤めている以上、「自由気まま」なんてことはありえないわけでして、この点だけ見ても、かなり偏った考えであることがわかります。
一方で、日系企業に勤める多くのビジネスパーソンにとって、冒頭のセリフはそれほど違和感なく感じられるのではないでしょうか ? 今回のコラムでは、「外資 → 個人主義 → 自由」に潜む矛盾・誤解について、私の考えをお話したいと思います。


まず、「外資は自由なのか ? 」という点について考えてみます。確かに、外資ではサービス残業も少ないし、飲み会に無理やり参加させられるようなこともありません。しかし、業務中の時間が自由に使えるかというと、そんなことありえません。業務中に各人が自由気ままな行動に出たら、企業としての体をなしません(当たり前)。


次に、「個人主義」について考えてみましょう。一般に、「○○主義」というのは、各人の立場によって定義がまちまちなので、注意が必要です。ここでいう、「個人主義」とは何か ? おそらくは、「(日々の業務において)他人に干渉されずに、仕事ができる」「他人のことを気にせずに、自分の仕事に没頭できる」程度の話だと思われます。対義語としては、「団体主義」「組織主義」といった感じでしょうか。ま、このような意味合いなら、冒頭のセリフも、 1 つの意見としてわからなくもない。全面的に肯定はしませんが、部分的には納得できます(実は、外資の大半は、「個人主義」ではありません。これについては、後述します)。


以上を考慮すると、冒頭のセリフは、以下のように修正されるべきだといえます。


「タカシはいいよなぁ・・・ 外資系のマネージャー職なら、(日々の業務においては)他人に干渉されずに仕事ができるし、業務時間外は自由だろ ? 」


なんか、おかしな言い回しになってしまいますね。当たり前のことを言っているだけで、それほど羨ましい感じがしないと思いませんか ? 

“自由” なのは、外資 or 日系 ?!

実際には、冒頭のセリフで言及されている部分において、外資と日系で大きな差異があるわけではありません。外資だって、サービス残業はない代わりに、仕事の残りは自宅でやっている。仕事中にあれこれと干渉してくる人だって相当数います。一方、日系だって、残業をしない、飲み会に行かないといったポリシーを貫き通す人もいれば、マイペースで(他人に構わずに)仕事をする人もいる。要は、個人の意識の問題。結局のところ、冒頭のセリフも、「強いて言えば、~ の傾向が強いイメージがある」という程度の話であって、「全くその通りだ ! 」と断言できる内容には程遠いように思います。

 

私見ですが、「個人主義で、自由気まま」な職業人は、「自営業」しかありえません。会社に勤めている以上は、一定以上の束縛は当然であって、それが嫌なら起業すればいい・・・ ということになると思います。


さて、もう少し本質に迫ってみましょう。「個人主義」「自由度」という観点において、本当に外資の方が日系よりも優位なのか ? 私は外資に 10 年以上勤務していますが、「あぁー、俺って自由だなぁー!」と思ったことが、ほとんどありません。むしろ、日系企業にいたときの方が、自由度が大きかったという印象を持っています。なぜでしょうか ? 


1 つの理由として、外資系企業というのは、「やるべきことがあらかじめ決められている」からだと思います。「グローバル(世界規模)で統一した企業戦略」といったものから、「文書のフォーマットやテンプレート、処理のマニュアル」といった現場レベルのものまで、その多くは、あらかじめ決められています。決められた “枠” の中で、スタッフはいかに正確かつ速く処理をするか、マネージャーはスタッフの尻を叩いて仕事を進めさせるか、それを問われています。「レールはすでに敷かれているんだ! 速く走れ、おりゃーーーーーー ! 」と、一心不乱にムチで叩いている・・・というのが、外資のマネージャーの実態であり、主業務なのです。そこには、“現場での調整” “創意工夫” という観点が抜けています。よって、自由度が低いように感じるし、やっていて、何だかむなしいのではないかと思うのです。

イノベーションを生むための “自由”

一方、日系企業はどうか? 企業戦略やマニュアル・フォーマット類の統一感がない(極めて弱い)替わりに、それを “創意工夫” で補うという「余地」が存在します。そのために、現場に対する「権限委譲(delegation)」を、暗黙のうちに行っているのです。

例えば、かの有名な「トヨタ生産方式」における、「多能工」や「自働化」の概念は、現場に自由度を与え、現場に創意工夫を期待する(現場は自立的に工夫できる!という信念を持つ)という前提がなければ成り立ちません。トヨタに代表されるように、現場に権限の与えられた職場は、やっぱり楽しい。日系企業の良さというのは、このあたりに見出されるべきなのだと思います。


現在の日系企業は、どちらかというと、外資の方式を積極的に取り入れる動きを見せています。個人固有の能力に頼らず、全てを標準化することで、一定品質の働き手を作る。マネージャーに相応の報酬を与えて、日々、ムチで叩かせる・・・。この方法は、効率性・わかりやすさという観点では優れているのでしょうが、何か物足りない。楽しくない。イノベーションを生むための、“自由” がない。


かく言う私も、見えない“ムチ” を両手に携えながら、この原稿を書いています。自由になりたいと懇願して受け入れたアメリカ方式は、実は、決して自由ではなかった、という矛盾。


「タカシはいいよなぁ・・・ 外資で “自由” に働けるから ! 」


「何言ってんだよ、お前の方が、よっぽど “自由” なんだぜ ! 」


ま、立場によって、いろいろな感じ方があるわけで・・・。日系・外資折衷のベストな案を作ることも、われわれの世代に課せられた要件なのかもしれません。 以上、外資マネージャーの独り言でした。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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