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タカシの外資系物語

イチローと外資系(その 2 )2011.02.15

ヒットは多いが、○○○は低い ?

前回の続き) アメリカ人の同僚に、「イチローは、ヒット数は多いけど、○○○は一番じゃないよね!」と言われ、激高したタカシ ! われわれのヒーロー、イチローをなんやと思っとるんじゃーーーーー!(怒) ハァハァハァ・・・ と、はて、○○○って一体何なのでしょうか ? それって、ビジネスの世界にも通じる話って、本当 ?

前回のコラムは脱線話が多かったので、結論からお話します。○○○というのは、「出塁率」。つまり、アメリカ人の同僚は、
「イチローは、ヒット数は多いけど、“出塁率” は一番じゃないよね!」 
と言っているのです。これは含意に、「“ヒット数” が多いよりも、“出塁率” が高い方が、より評価が高い」と言っているわけです。
(※出塁率=(安打+四死球)/打数、打率=安打/打数 です。ちなみに犠飛の場合は、打数に含めません)
この考え方は、アメリカ人には一般的なようでして、他のアメリカ人数名に確認してみたところ、やはり同様の見解でした。私はてっきり、イチローはヒットばかりでホームランが少ないために、一部アメリカ人から評価されていないと思っていたのですが、そういうわけではないようです。


では、イチローの “出塁率” はどれくらいのものなのか? 昨年のメジャーリーグ(イチローが所属するアメリカン・リーグ)における、打撃成績を見てみましょう。


【打率】 1.J・ハミルトン .359 2.M・カブレラ .328 3.・マウアー .327 ・・・ 7.イチロー .315

【安打数】 1.イチロー 214本  2.R・カノ 200本  3.A・ベルトレ 189本(ほか 1 名)

【出塁率】 1.M・カブレラ .420 2.J・ハミルトン .411 3.J・マウアー .402 ・・・( 10 位以下)イチロー .359

(※イチローは「一番打者」なので、他のバッターより打数が多くなります。かつ、レギュラーメンバーで 162 試合に出場しているのはイチロー以外いないので、「打数 680 」は、ぶっちぎりの 1 位となっています・・・)

イチローの評価はビジネスでも共通?

 

アメリカ人同僚 「イチローは打数が多いので、いきおいヒット数も多くなる。ただし、率に直すとベスト5にも入らないよね・・・」
私 「(うーーぬぅ・・・カチンとくること言うじゃねぇか ! ) じゃ、だれが最も優れたバッターなんだよ!」
アメリカ人同僚 「M・カブレラだろうね・・・」
私 「打率 1 位のJ・ハミルトンじゃないのか ? ! 」
アメリカ人同僚 「ummm・・・ it is difficult to say which (of the two) is better・・・(そうだね、甲乙つけがたいけど・・・) でも、カブレラの方が“出塁率”が高いから、カブレラかなぁ・・・」
私 「ふーーん、ホームラン 2 位( 38 本)のM・カブレラか・・・ 結局、ホームランバッターを評価してるってわけだな・・・」
アメリカ人同僚 「いや、それは結果論だよ。もちろん、ヒットよりホームランの方がチームに貢献するし、華やかだけどね。必ずしもそうではない。ホームランをあまり打たないイチローだって、もっと出塁率が高ければ、俺は評価するけどね・・・」


読者のみなさんも、イチローの低評価ぶりには、いろいろ言いたいことがあろうかと思います(イチローは一番打者なので敬遠の四球がほとんどない。一方、3~5 番を打つホームランバッターは、敬遠の四球が多いので、いきおい、出塁率は高くなる 等)。しかし、ここはググッとこらえて、アメリカ人のものの見方・評価の仕方という点に注目することにしましょう(怒りはおさまらんが・・・)


メジャーリーグ打者の評価について、アメリカ人同僚との会話でわかったことは、以下の通り。

(1) “量(数)” よりも “率” を重視する
(2) “率” の中でも、“出塁率” が最も評価が高い
(3) “ホームラン” を最重視しているわけではない


私が確認したのは数名のアメリカ人にすぎないので、正直言って、アメリカ人の大半がこの考え方かというと怪しい部分もあります。ただ、この結果って、長年外資系企業に勤めてきた私にとっては、個人的にすごく納得感があるものなのです。つまり、この評価は、ビジネスの世界にも共通しているのです ! 

“量” と “率”  どっちが重要?

まず、(1)の「“量(数)” より “率”」について。これは以下のように勘違いしている日本人が多いように思います。

「外資系というのはボリューム(量)を重視するので、ドカン ! と取れば文句なく評価されるのではないか・・・?」 
この考えは、少し間違っています。外資の発想は、いくら量を多く取っても、結果的に収益に結びつかなければ意味がないというものだからです。


例えば、あなたが銀行員だとしましょう。銀行の基本的なビジネスモデルは、「預金を集めて、そのお金を貸し出す → 利息の差額が収益となる」ですから、その金額が大きい方が収益も大きくなるはずです。よって、預金を集めれば集めるほど、評価されるというシステムです(私が銀行に入った 20 年前も、そういう発想でした)。
しかしこの発想は、「預金さえ集めれば、お金を貸し出す先はいくらでも存在する」ことを前提としたものです。しかし、今や、貸し出す先がない! 預金を預かると、管理コストもかかる!(人件費だけでなく、銀行は預金を預かると、預金保険料という保険にも入らないといけない) ということで、預金が集まっただけでは、手放しに喜べない状況がある。実際には、預金を10億集めるより、投資信託を1,000万売って手数料を得たほうが、銀行の収益は大きかったりもするのです。


1990年代初頭にバブルが崩壊するまで、日本は右肩上がりの高度成長を続けました。高度成長というのは、上記の例で言えば、「預金さえ集めれば、お金を貸し出す先はいくらでも存在する」状態ですから、“量” を重視した。「“率” より “量”」の発想です。
一方、とうの昔に高度成長を終えていた欧米では、いくら量が多くても、収益を生まなければ意味がないと考える。「“量” より “率”」の発想が、当たり前のように染み付いているわけです。当然、われわれ日本人も、「“量” より “率”」が重要であることは、頭ではわかっているんですよね。でも、古き良き時代の名残で、日本人は、“大きい” “多い” という尺度に、極めて弱い。この意識が、アメリカにおけるイチロー評価(=日本人が思うほど、アメリカ人はイチローを評価していない)に対する違和感となって現れるように思うのです。


次回のコラムでは、残りの仮説(2)(3)についてお話しするとともに、メジャーリーグと欧米ビジネスに共通する価値観を、“量” や “率” とは違う観点からもご説明したいと思います。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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