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タカシの外資系物語

あなたは “日本” を語れますか ?2010.04.13

京都生まれ、奈良育ちのタカシ

「 あなたも “奈良タカシ” になれる ! 」

なんじゃ、こりゃーーーーーーーーーーーぁっ ! 

 

先日のこと、通勤途中の電車内で、つり革につかまりながら新聞を読んでいた私は、衝撃の見出しに思わず卒倒しそうになりました。“奈良タカシ” になれる、っちゅうのは、どういうことやねん ! そもそも、なりたいやつなんか、おるんかいな ?!

 

おそるおそる、再度見出しに目をやると・・・

「 あなたも “奈良ハカセ” になれる !」

・・・ “ タ カ シ ” ではなく、“ ハ カ セ ” でした。 “ カ ” しか合ってない。自意識過剰も甚だしい、情けないやら、はずかしいやら・・・

 

記事の内容は、「奈良検定」という検定試験の広告。最近、この手の ご当地検定・ふるさと検定 が流行っています。調べてみると、「奈良検定」だけでも類似の試験が複数あって、まさに乱立状態。一体どれが本家本元なのかわかりませんが、少しでも地方活性化につながってくれることを祈ります。

 

さて、私は“奈良タカシ”というペンネームの通り、奈良県出身です。生まれは京都。奈良にも京都にも10年以上住んでいましたので、どちらもよく知っています。

 

実は、学生時代からずっと思っていたことに、「京都や奈良に住んでいる人は、日本史が得意なはず ! 」という仮説があります。なぜなら、教科書に出ている史跡や寺社が、身近なところにあるのですから、無理に覚える必要がない。非常に有利な立場にあるわけです。私など、法隆寺の横でかくれんぼをしたり、平等院鳳凰堂の裏でサッカーをしたりして、育ちました。中世貴族の「蹴まり」もびっくりです。

 

当然のことながら、社会は日本史を選択しましたし、得意科目でもありました。京都・奈良の名所ガイドなら、下手なガイドブックよりもうまいと自負しています。

アナタ、本当ニ日本人デスカ ?

外資系企業に勤めていると、アメリカ本社からやってくる社員(多くは役員クラス)の、「接待」を任されることがあります。ま、「接待」とはいっても、日本料理をごちそうしてやる程度なのですが。

 

時間があれば、東京近郊の名所に連れて行くこともあります。定番は、浅草(浅草寺界隈)でしょうか。外国人社員の中には、「浅草など行かなくてもいいから、100 Yen Shop に連れて行って欲しい」と言う声もあり、リクエストには臨機応変に応えています(日本の 100 Yen Shop は、海外で大人気なんですよ!『外国人が喜ぶ場所とは ?』 参照のこと)。しかし、外国人社員が最も行きたがるのは、「京都・奈良」です。ただ、日帰りで行けるような場所ではないので、外国人社員のほとんどは断念することになります。

 

そんな事情もあって、夜の宴席では、京都・奈良に関する質問を受けることが結構あります。「東大寺の大仏はどのくらいデカイのか ? 」 「金閣寺は本当にゴールドで覆われているのか?」 ・・・ 上述の通り、私は“奈良ハカセ”といわれるぐらい事情通なので問題ない( ? )のですが、京都・奈良に地縁の薄い日本人社員は、回答に四苦八苦しています。質問した外国人社員も、「アナタ、本当ニ日本人デスカ ? 」・・・ とまでは言わないものの、なんか不信感というか、ぎこちない空気を漂わせています(ちなみに、東大寺の大仏、指の長さが 1.8 mなので、「指がヒト 1 人分」と言えばイメージがつきます。金閣寺は、約 20 kgの金箔が貼ってあります)。

“日本” について、何話す ?

さて、日本人なのに、東大寺や金閣寺をよく知らないことは、恥なのか ?
もちろん私とて、京都や奈良の全てを知り尽くしているわけではありません。幼少時に住んでいただけで、たまたま知っているに過ぎない部分もあります。しかし ! 東大寺・金閣寺というのは、日本を代表する歴史的建造物なわけですから、日本人ならば簡単に説明できる程度に理解しておくべきではないでしょうか。

 

以前、ロンドンでプロジェクトに参加していたとき、こんなことがありました。そのプロジェクト・チームは、日本人 3 名、アメリカ人 3 名、イギリス人 2 名、あとデンマークとタイ出身が 1 名ずつで構成されていた(『地球規模のチーム』参照のこと)のですが、チームメンバーで飲みに行ったときのこと。デンマーク人のキャスティンが、延々とアンデルセンの話を始めました。それまで知らなかったのですが、アンデルセンはデンマークを代表する作家とのことで、あの有名な「マッチ売りの少女」や「親指姫」にまつわる裏話を、面白おかしく語ってくれました。

 

一方、3 名いるはずの日本人は、キャスティンのように祖国を文化的に紹介するエピソードを、だれ一人として話すことができません。英語ができないこともありますが、それ以上に、日本の文化自体を知らなさ過ぎるのです。だから、話そうにも話せない。本当に情けない限りです。

 

(デンマーク語は、語尾に e をつける( e に変化する ? )単語が多いようで、キャスティンが書く英単語も、その 80 %は語尾に e がつけられていました。私は、キャスティンが書いた英単語から e を消し、文章全体を修正する係をしていたくらいですから、デンマーク人のキャスティンよりも、英語がよくできた( ?! )と言えなくもありません・・・)

 

その帰り、「アンデルセンの話、本当に面白かったよ ! 」と話しかけたところ、キャスティンから、次のようなコメントがありました。
「デンマークなんてマイナーな国を覚えてもらうためには、ああいう話でアメリカ人やイギリス人にインパクトを与えないと、生き残れない(Survive できない)んだよ・・・」

 

さて、日本はどうでしょう ? 3 人いても、キャスティンほどのインパクトを与えることができなかった。これは、現状の外交や国際関係にも当てはまることのように思えてなりません。

 

数年前に、一部の識者が、「英語を勉強するよりも、まずは国語を勉強するべき」という主旨の本を出して、ベストセラーになりました。私はこの論を少しアレンジして、こう言いたい。まず、国語を含めた日本文化、祖国の誇るべきものを紹介できる知識を持つべきである。同時に、英語をはじめとする外国語も積極的に勉強して、日本の良さを外国人にアピールできる人材を育成すべきである、と。

 

今の日本は、どうしようもなく中途半端な気がします。相当程度、アメリカに依存するのは仕方ないとして、日本文化に対するアイデンティティがほとんどない。これは、右翼といったイデオロギーの問題ではなくて、もっとシンプルな常識の問題です。例えば、10 ヵ国の人が一同に会した場で、あなたは何を話しますか ? という問いと同じ。日本人一人ひとりが、その人なりの “日本ハカセ” であるべきだと思うのですが、いかがでしょうかね。

 

私は早速、「奈良検定」を受検してみようと思います。“奈良ハカセ”の名に恥じぬよう。みなさんも、まずはご当地の検定試験にチャレンジして、日本マニアになってください。では !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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