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タカシの外資系物語

トヨタ・リコール問題 と 外資流対応 ( その 3 )2010.04.06

責められる側の“言い分”

 (前回の続き) これまで 2 回のコラムでは、アメリカをはじめとするグローバル社会でビジネスを行う上で、品質問題等のトラブルが発生した場合の対処法として、以下 3 つのお話をしました。

( 1 ) 謝罪するが、(原因が明らかになるまで)非は認めない
( 2 ) 今わかっていることを明確に話す
( 3 ) すでに対策に着手し、成果を上げていることを強調する

今回は 4 つめのポイントとして、「( 4 ) 相手の痛いところに触れる」 のお話をしたいと思います。

 

このポイント、実は ( 1 )~( 3 ) に比べると、かなり異色です。なぜなら、( 1 )~( 3 ) は「謝罪して、事情を話して、対策を講じて・・・」と、ほぼ当たり前の対応をしているのに比べ、( 4 ) は攻守逆転、「反撃」をしているわけですから。

 

責められたときの反撃について、日本ではよく、「窮鼠猫を噛む」とか、「逆ギレ」、ひいては「盗人猛々しい」なんていう言い方をされたりします。しかし、責められる側にだって言い分はあるわけで、それを正当な形で表現すべしと言っているだけです。

 

実は、日本社会とアメリカ社会を比較すると、上記の点が非常に対照的です。簡単な例を示して、ご説明しましょう。
今ここに、2 人の兄弟がいるとします。弟が兄のおやつに手を出したために、兄が弟を叩いてしまい、結果、弟が泣き出してしまったとします。

 

【日本の場合】
兄 「こらっ !(ガツン ! )」
弟 「えーーん、えーーん ! 」
母親 「あらあら ! 一体、どうしたの ? 」
兄 「だって、コイツが僕のおやつをとるんだもの ! 」
母親 「何言ってんの ! お兄ちゃんなんだから、それぐらい我慢しなさい ! 手を出したアンタが悪い !(ガツン ! )」
兄 「(う、うそーーん !(T-T)) えーーん、えーーん ! 」

 

【アメリカの場合】
母親 「あらあら ! 一体、どうしたの ? 」
兄 「だって、コイツが僕のおやつをとるんだもの ! 」
母親 「どうして、お兄ちゃんの分に手を出したの ? ちゃんと、同じだけあげてるじゃない。そんなことしたら、叩かれても仕方ないわよ ! 」
弟 「えーーん、えーーん ! ごめんなさーーい ! もうしましぇーーん ! 」
兄 「お兄ちゃんも悪いわよ ! 弟に手を出してどうすんのよ !(ガツン ! )」
兄 「(う、うそーーん !(T-T)) えーーん、えーーん ! 」

 

さて、みなさん、この 2 つの違いがわかりますか ?

「事実」 よりも 「状況」 を重視する日本

2 つの例とも、弟を叩いたお兄ちゃんは、逆にお母さんに叩かれているわけで、この部分は変わりません。しかし、お兄ちゃんのおやつに手を出した弟に対する対応が、根本的に違います。日本の場合は、どんな事情があろうとも、悪いのは完全に兄の方であって、弟はほとんど悪くない。兄側に弁解の余地は認められていません。これは、「兄は弟をいじめてはいけない」「最初に手を出して、泣かせた方が悪い」という、日本的道徳の基準が前提となって、判断されているからです。日本的道徳基準においては、直接の「原因」や「背景」は、あまり関係ない。何らかの絶対的な基準と照らし合わせた「状況」の方が、「事実」よりも優先される傾向があるからです。

 

一方、アメリカの場合は、最初に手を出した兄を叱りつつも、その根本原因(=おやつをとった)を作った弟の方を、より強く叱っています。アメリカでは、「状況」よりも、「事実」「原因」「背景」の方を重視するというわけです。

日本社会においては、アメリカのように道理や理屈で判断されることよりも、一方的に日本的道徳基準に照らして、半ば理不尽に判断されてしまうことも多いのではないでしょうかね。

 

さて、私がここで言いたいのは、アメリカ人に対しては、一方的に責められるだけではなく、何か言い返してみよう。アメリカ人は、状況で決め付けるようなことはせずに、道理や理屈で判断することが多いので、うまくいくかもしれないよ・・・ と言っています。日本的には、「盗人猛々しい」ような状況であっても、「どうせ聞いてはくれない・・・」と、最初から諦めてはいけないということです。

 

では、何を言うか ? どうせ言うなら、責めている側を「おおっ !(汗っ)」とたじろがせ、聴衆を惹きつけるような内容がいいはずです。ということで、「( 4 ) 相手の痛いところに触れる」 というのが有効だといえるのです。

あなたも私も “同じ船”?

これは私事ですが、以前、あるプロジェクトで大トラブルを出したときに、本社のアメリカ人役員から、えらく責められたことがあります。具体的には、期限内にプロジェクトが終わらなくなって、「すみましぇーーん !(T-T)」となったわけですが、このとき私は、謝罪して対策を述べるとともに、以下の通り、彼の「痛いところ」にも触れるようなコメントをしました。

 

・ 日本支社の役員(=本社のアメリカ人役員の子分)も、この案件については Go サインを出していたこと
・ もしこの案件ができないとなると、日本のマーケットでわが社に関する悪い噂(風評)がたつということ
・ 私以下のメンバーがやる気をなくして他社に移った場合、クライアントごと、他社に引き抜かれる可能性があるということ

 

等々。 一見すると、かなり強引で、それこそ「盗人猛々しい」という気がしなくもないのですが・・・。結果、アメリカ人役員は、追加人員の投入を許可してくれました(もちろん、私には思いっきり厳しい処分が下されたわけですが)。

 

ここで重要なことは、アメリカ人役員に逆ギレすることでもなければ、役員を恫喝することでもなく、「あなたも私も、同じ船に乗っているのだ」ということを示すことなのです。つまり、「さっきからあなたは私を責め立てているが、この問題は、あなた自身にも降りかかってくる問題なのですよ ! 」と説明するわけですね。

 

トヨタのリコール問題であれば、アメリカ現地での雇用問題がこれに当たります。「トヨタを叩きすぎると、何万人もの、現地雇用に影響が出る・・・」 このことは事実なわけですが、これを、あからさまではなく、暗示的に示すと非常に効果がある。私の問題はあなたの問題、みんなで解決しよーじゃあーりませんかーーーーーーーーっ ! ま、ここまで開き直るためには、かなり強い心臓が必要なのは言うまでもありませんけど。

 

さて、今回のトヨタ・リコール問題。クレームへの対応という観点で見てみると、実に興味深い視点が出てきます。グローバル社会でビジネスを成功させるためには、まず何よりも、相手を知らなければなりません。そして、トラブルが発生した場合に、どのように振舞うのかについては、今後、日本がグローバル人材を輩出していく上で、大きな課題であるように思います。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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