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タカシの外資系物語

トヨタ・リコール問題 と 外資流対応 ( その 2 )2010.03.30

責められたときこそ、正直に !

 (前回の続き) アメリカをはじめとするグローバル社会でビジネスを行う上で、品質問題等のトラブルが発生した場合、どのように対応するか ? 前回のコラムでは、トヨタのリコール問題を例に取り、私なりの考え(対策 4 か条)の 1 つをお話しました。それは、「( 1 ) 謝罪するが、非は認めない」 ということです。

 

ここで誤解いただきたくないのですが、不良品や瑕疵等、明らかにこちらに問題がある場合は、非を認めるのは当然です。しかし、問題の原因が明らかでない、または、もしかしたら問題そのものが怪しいかもしれない・・・ という場合には、安易に非を認めるべきではない。とりあえず、謝罪だけはしておこう・・・ と言っています。なぜなら、非があろうがなかろうが、その当事者として関与したことについては、とりあえず謝罪しておくのがエチケットだからです。「私は悪くないけど、ゴメン ! 」 こんな感じですね。

 

日本では、“「ゴメン」(謝罪)” と “「私が悪い」(非を認める)” は 1 セットと考えるのが普通なので、自分が悪くないのに謝罪することについて抵抗感があるかもしれません。しかし、アメリカでは両者を切り離して考えることができます。今回、トヨタが必要以上に叩かれた理由は、とりあえずの「ゴメン ! 」がなかったからではないかと思います。

 

では、「対策 4 か条」の残りの 3 つをお話しましょう。

 

2 つめは、「( 2 ) 今わかっていることを明確に話す」 ということです。もちろん、問題が発生した当初は、わかっていることがほとんどない状況もあり得る。極端な話、何もわからないかもしれない。それでもいいんです、「何もわからない」と言えばいい。「わからないこと が わかっている」、何だか、ソクラテスの「無知の知」みたいですが・・・

 

ここでのポイントは、「とにかく正直に話す」ということです。責められたときこそ、正直に話す。なぜか ? それは、この段階で下手なウソをついて、後からそのウソがばれた場合、致命的な事態になる可能性が高いからです。

 

ここ数年起こった品質・クレーム問題のうち、会社の存立自体が危うくなった(ex. 倒産した)ものを見ると、そのほとんどが、発覚当初に何らかの「ウソ」をついてごまかそうとしています。しかし、この手のウソは必ずばれるもの。なぜなら、相手はこちらが話す一言一句に興味津々(それも悪意を持って)なわけですから、時間の経過とともに、十中八九、暴かれてしまうのが世の常というものです。

 

では、責められて窮地に立った際、なぜ苦し紛れのウソをついてしまうのでしょうか ? それは、状況を把握していないこと(=知らないこと)を正直に話して、その点を責められるのを恐れているからではないかと思います。そして、このように考える傾向は、日本人に強いように思います。

とにかく、先に進める !

ウソをつくぐらいなら、「知らんもんは、知らん ! 」と開き直った方がいい。 え ? 謝罪時に、そんな開き直りは無理だろ、って ? そのために、3 つめのポイントをご紹介しましょう。それは、「( 3 ) すでに対策に着手し、成果を上げていることを強調する」 ということです。

 

何か問題が発生した場合、原因が 1 つに特定できることは稀でして、たいていは複数の理由が絡み合っているものです。理想的には、全ての理由が解明されて、対策が講じられることですが、なかなかそうもいきません。そんなとき、何を優先するか ?

 

多くのアメリカ人は、わからないことがあってもいいから、わかっている原因について、少しでも対策が打たれていることを好みます。アメリカ人にとっては、停滞は「悪」でしかありません。どんなに些細なことでもいいから、前に進んでいることが重要です。
一方、日本人は、まず原因の全貌を明らかにすることを重視する傾向が強いように思います。「想定される理由を全てリストアップせよ ! 」 こんな感じ。100 %とは言わないまでも、相当程度、明らかにされていないと進まないわけですね。

 

こんなエピソードがあります。数年前、「無駄な出力帳票をやめて、電子化する」というプロジェクトを、アメリカと日本の金融機関に対して実施したことがあります。対象の帳票を特定するアプローチについて、私からいくつかの方法を提示したのですが、アメリカの金融機関が採用したのは、「今そこにある無駄な帳票から電子化を始める」というもの。とりあえず目に見えるところから着手しようという発想です。

 

一方、日本の金融機関が採用したのは、「まず、全ての出力帳票とその用途・頻度をリストアップし、必要性を検討する」というものでした。それはそれで、日本人らしい発想だなと思ったのですが、大きな問題が 1 つ。いつまでたっても、リストアップが終わらない ! 準備に時間がかかり過ぎるのです。放っておいたら、リストアップだけで 3 ヶ月ぐらいかかりそうな勢いだったので、途中からアメリカ式の方法も並行して実施するように提言しました。策の実行に当たっては、全体感を把握することに加え、即効性も重要だということです。バランスの問題ですよね。

 

「( 2 ) 今わかっていることを明確に話す」 
「( 3 ) すでに対策に着手し、成果を上げていることを強調する」 
この 2 つの観点で見ても、今回のトヨタの対応は十分とはいえなかった。当初、アクセルペダルの問題を、「ユーザーの感覚の問題」としてしまった段階で、( 2 )や( 3 )に言及する余地を無くしてしまったように思います。

 

日本の冠たるグローバル企業であるトヨタですら、こうなってしまうのですから、今回の出来事は本当に人ごとではありません。みなさんも、十分な心構えが必要だということです。

 

さて、ひとたびクレームを受けたら、じっと耐え忍ぶしか手はないのか ? 実はそうではありません。クレームを受けた側にも、反撃の機会はあるのです。そこで 4 つめのポイントとして、「( 4 ) 相手の痛いところに触れる」を挙げたいと思います。これについては・・・、次回のコラムでお話しましょう。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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