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タカシの外資系物語

“出戻り” ですが・・・、何か ? ( その 1 )2010.03.02

“税理士” から、突然の電話 !

プルルルー、プルルルー
「はい、奈良ですが・・・」
「奈良タカシさんですね。本社電話受付の△△です。東京本社代表電話に、“税理士の F さん” から電話が入っています」
「ぜ、税理士っ ? 」
「おつなぎしまーーーす ! 」
「ちょ、ちょっとー !(税理士って、何やねん。さては、脱税したのが、とうとう見つかったんかぁ・・・(T-T) ・・・って、脱税なんかしてへんわーーっ ! とにかく、誰やねーーん ! (T-T)(T-T))


ハァハァハァ・・・ 冒頭から取り乱してしまって、すみません。先日のこと、お客様先のプロジェクトルームにいたところ、私の携帯に電話がありました。聞くと、わが社の代表電話取次ぎで、「税理士の F さん」から電話とのこと。


自慢じゃありませんが、私は税理士さんとはお付き合いがありません。外資系勤務とはいえ、そもそも会社員ですからね。強いて言えば、確定申告をしている点は、一般の会社員のみなさんとは違うでしょうか。


「おいおい、タカシは確定申告してるらしいぜ、さぞかし高収入を・・・」 とお考えの方、残念ながら、収入が多いからやっているわけではありません。私が確定申告をしている理由は、「雑収入」があるからです。では、「雑収入」とは何か ? 詳細な定義は勘弁いただくとして、簡単に言うと、「給与所得及び退職所得以外の所得」を指します。私の場合、このコラムの原稿料は雑所得に該当します。


当然のことながら、雑所得にも所得税がかかるわけですが、使った経費で相殺することで、税金を軽くすることができる。例えば、コラムを書くために参考文献を買ったなら、それを経費として申請するのです。そのために、確定申告をしているというわけ(私は神に誓って、真っ当な申請しかしていませんので、誤解なきよう ! って、なんか、どこかの政治家みたいですが・・・)。
「はて、よくよく考えてみると、自分で確定申告書類を書いて申請してるんだから、何かあれば、税務署か国税局から直接電話があってしかるべし。じゃ、“税理士の F さん”って、一体だれじゃ ??? 」

電話の要件は・・・ ?

私 「もしもし、お電話変わりました。奈良ですが・・・」
F さん 「奈良さんですか ? お久しぶりです、○○コンサルティングの F です。以前、ご一緒してた F ですよ ! 」
私 「 F さん ? なーんだ、“税理士の F さん”って言うから、だれかと思っちゃいましたよ・・・ こちらこそ、お久しぶりです ! 」
声の主は、前職の外資コンサル会社で一緒だった F さんでした。そう言えば F さんって、税理士の資格持ってたっけ ? ( F さん、恐るべし)。F さんは今、私が元いた会社で執行役員をしています(さらに、恐るべし & うらやまし・・・(T-T))。
F さん 「本当に久しぶりですねぇ・・・」
私 「ホント、ホント・・・ で、F さん、今日は何の用件でお電話いただいたんですか ? 」
F さん 「いやぁ、本当に久しぶりだ・・・」
私 「(だから、要件は何やねん ! ) F さん ? 」
F さん 「え ? いやぁ、ちょっと同僚と昔話していた際に、奈良さんの話題になりましてね。懐かしくなって、思わず電話しちゃいました(笑)」
私 「(ははーーん、そういうことか・・・) そうですか、今はお客様先にいますんで、またこちらから電話しますよ。そのときには、飲みにでも行きませんか ? 」
F さん 「そうですね、是非 ! じゃ、積もる話はそのときにでも・・・」
・・・このクソ忙しいときに、何やねん ! わざわざ、代表電話につないでもらうような用事か !  最初はそう思いました。しかし、私はすぐに、F さんの「真の用件」を理解することができました。真の用件とは何か ? それは、「うちの会社に戻りませんか ? 」って言いたかったんです、これが !

外資の人材 “穴埋め” 策

なぜ、F さんが私に対して、元の会社に戻る勧誘をしていると言えるのか ? それは、以下の理由から判断できるのです。


【タカシが判断した理由】

( 1 ) 最近、F さんの会社(=私が元いた会社)から、シニアマネージャークラスの人材が 2 名、私が今いる会社に転職してきた
( 2 ) 外資コンサルでは、手っ取り早く、「中途採用」で人材の穴埋めを行う
( 3 ) タカシ自身も、今回の F さんと同様に、転職した人材に、「戻りませんか ? 」という勧誘をしたことがある


実は、年始のキックオフ(決起集会みたいなもの。『1 年の計は「キックオフ」にあり』参照のこと)で、「どこかで見たことある人が座ってるなぁ・・・」という人が、2 人いたのです。「はて、だれだっけ ? 」 後から組織図を見てビックリ ! 何と、ライバルである○○コンサルティング(=私が元いた会社)でシニアマネージャーをしていた N さんと T さんではないですか。私の会社に転職してきて、ちゃっかり、それなりのポストに座っているし・・・(私より、上だし・・・(T-T) 多分、給料も高いし・・・(T-T))
ということは、私が元いた○○コンサルティングでは、一気に 2 名の中核人材が抜けたことになります。これは大きな痛手。おそらく○○コンサルティングでは、大至急、同等の人材確保に動いたに違いない。これが、( 2 ) の根拠です。


一般に、何らかの理由で、ポストに穴が開いた場合には、いくつかの対応が考えられます。まず、下位の人材を「内部昇格」させる。しかし外資系では、この戦術はあまり見られません。なぜかというと、外資系企業の人事部では、「その人材が下位にいたということは、上位の力がないのである。いきなり上位に上げても、パフォーマンスを発揮するまでに時間がかかる。企業として、スタッフの育成に時間と金をかけるつもりはない ! 」 と考えているからです。


日本的発想では、「外部から連れてきた方が、慣れるまでに時間がかかるのではないか ? 」と思えなくもない。実は私もそう思います。しかし、外資では、「デキル奴は、いつ、どこでも、どの企業でも、常に、デキル ! 」という大前提に立っているので、「内部昇格」よりは「中途採用」を選択します。もちろん、パフォーマンスの上がらない中途採用者にとっては、「新しい会社になかなか慣れなくて・・・」という言い訳ができないのも確か。中途入社した日から、さも 10 年前からこの会社にいたかのようにバリバリ働く、これが外資の前提です。


他の部署・グループからの同等ポストの人材を「横スベリ」させるのも、穴埋め策としてはありえます。しかし、これまた外資ではこの戦術はとりません。なぜなら、外資の連中は、期の途中で、だれかの後を引き継ぐことを、異様に嫌うからです。これはわからんでもありません。もしかしたら、収益目標に対して、全く達成の見込みがない状態かもしれないし、人間関係が滅茶苦茶かもしれない。そもそも、期の途中で投げ出して、他社に転職しているわけですから、うまくいっていない可能性が極めて高い。ということで、「横スベリ」を受諾するやつなど、だれもいないわけです。


以上のように、ポストに穴が開いても、「内部昇格」や「横スベリ」がない以上、「中途採用」で対応することになるわけですな。では、どうして外部のヘッドハンターや人材会社に頼らずに、( 3 ) のように、会社自らが対象者に電話するのか ? 次回は、そのことからお話を始めましょう。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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