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タカシの外資系物語

「アンガー・マネジメント」 は使えるか ? ( その 3 )2009.11.17

"怒り" を記録する !

前回の続き) 前回のコラムでは、「アンガー・マネジメント」の短期策である「(心では怒っていても)怒りの行動に出ないようにする」ための策についてお話しました。今回は、中長期策としての「根本的に、怒らないような思考構造を作る」ための策に話を移したいと思います。


みなさんもお気付きの通り、上記の短期策と中長期策は、難易度がかなり違います。短期策は、表面に出さなければ心の中で怒っていてもいいわけですが、一方の中長期策は、「そもそも怒ってはイカン ! 」と言っているわけです。このことは、言うは易し、しかし実践は非常に難しい。「アンガー・マネジメント」の世界でも、時間をかけてゆっくり実践していきましょう・・・ということで、中長期策に位置づけられているのも納得です。


では、怒らないためにはどうするか ? アンガー・マネジメントでは、まずは、自分が怒ったことを記録する「アンガー・ログ(anger log)」をつけるべし、となっています。アンガー・ログとは、怒りに関する日記帳みたいなものだと考えてください。「○月○日、部下 A の言動に怒る」「△日、妻の行動に対して嫌味を言う」・・・等々。


アンガー・ログの目的は、自分の怒りの傾向を把握することにあるのですが、ログをつけること自体、直接的に怒りの削減に効果があります。例えば、「あいつ、ムカつくなぁ~」と怒りを感じると同時に、「あ、怒ったから、アンガー・ログつけなきゃ ! 」と考える自分を想像してみてください。ある意味、冷静で客観的な自分が登場することで、怒りそのものが収まってくるような気がしませんか ?


また、怒るたびにアンガー・ログをつけなければならないと思うと、怒ること自体が面倒になるという効果もあります。これは、何かを食べるたびにログをつけていくことでダイエットを進める「レコーディング・ダイエット」にも通ずる部分があります。


いずれにしても、アンガー・ログを記録することで、いくらかの怒りは削減されるわけですが、それでもなくならない怒りが存在します。それについては、アンガー・ログを分析して、「自分は、どんな時間帯に、どんな場面で、どんな相手に対して、怒る傾向にあるのか ? 」を洗い出してみるわけです。

タカシ、その "怒り" の傾向

実は私、社内のトレーニングでアンガー・マネジメントを受講した直後の1週間ぐらい、アンガー・ログをつけてみたことがあります。結果、ログの個数は 40 個。なんと、1 日当たり、5 回以上も怒っていたことになります。怒るたびに、相手が部下ならば説教をたれ、家族ならば気まずい雰囲気を経験しているわけですから、精神衛生上よくないのはもちろんのこと、非効率なこと甚だしい ! 「怒るってことは、本当に人生を損しているよなぁ・・・トホホ・・・(T-T)」 こう感じることも、アンガー・ログをつける効用として現れます。


では、私はどのような局面で怒る傾向にあるのか ? これについては、以下の通り、一定の傾向が見られました。

(1) 部下との関係において ・・・ 仕事に関する指示・方針を仰ぎに来た際、「そんなこともわからねぇのか ! 」と怒ることが多い
(2) 妻との関係において ・・・ 夜遅く帰宅した際、妻から何か話しかけられた場合に、意味もなく怒ることが多い
(3) 社会一般の事象において ・・・ 駅や雑踏などで、すれ違いざまに肩がぶつかったとき(というか、肩がこすれた程度でも)は、ほぼ 100 %怒っている


まず (1) ですが、上記の理由だけを見ると、何となく私が正しいように見えなくもありません。しかし、よくよく考えてみると、私が部下に指示・方針を伝えるのは当たり前のことであって、一方的に怒られる筋合いのものではないでしょう。私の言い分は、「そんなこともわからねぇのか ! 」なのですが、部下にしてみれば、わからんから私のところに来ているわけですから。また、私自身がわかっているのも当たり前でして、部下よりも知識と経験があるから、マネージャーという地位にいる。そのように見ると、かなり身勝手かつ一方的な言い分で怒っていることがわかります。

"怒り" の大半は、自己の歪んだ基準が原因

(2) なんてのは、言語道断です。仕事で疲れているのは、子育てや家事をしている妻も同じこと。自分だけが忙しいと考えて、暴君ネロのごとく威張り散らしていたのでは、話になりません。
 
(3) の怒りは、ある程度仕方ないかな・・・ とも思うのですが、(3) が発生しているのは、ほとんどが東京駅など、大規模なターミナル駅なんですね。「あーもう、うっとうしいなぁ。シャキシャキ歩けよ、シャキシャキと ! 」というのは、その駅の地理に慣れているサラリーマンとしての私であって、相手も同様にサラリーマンとは限りません。初めて都会に出てきた方かもしれない。人それぞれに事情があるわけで、自分を基準に考えてはいけないということに気付きます。
 
このように、アンガー・ログを分析すると、いかに自分勝手に怒っているか、ということが明確にわかるようになります。それがわかると、自分が当たり前と考えている基準が、いかに歪んだものか、ということを認識することができます。また、非常に恥ずかしいし、反省しなければという気分にもなります。そうなると、生まれつきの暴君でもない限り、「この考え方は改めよう・・・」ということになり、いきおい、怒る頻度は減ってきます。
 
実際に、研修を受けて、アンガー・ログをつけてからというもの、私の怒りの頻度はかなり減りました。そもそも怒りというものは、その人固有の基準や考え方に依拠している部分が多く、相当程度、偏っています。つまり、自分の歪んだ基準をいくつか改善するだけで、怒りの回数は激減する可能性が高い。現に、私がそうでしたから。上記 (1) ~ (3) を具体的に改善しただけで、怒りの数は 7 割程度減りましたので。
 
巷では、「怒らない」系の本が流行っています。これまで、この類の本は、大半が仏道にいる宗教家だったりしたわけですが、最近では、一般のビジネスマンが書いた本も見かけるようになりました。つまり、「怒らない」ということは、宗教家の専売特許ではなく、一般のわれわれにも実践可能だということなのでしょう。
 
このテーマの 1 回目でも述べたように、外資系企業では、アンガー・マネジメントの研修が積極的に行われています。その最大の目的は、怒ることによる仕事の非効率をなくすことにあるのですが、いわゆるワークライフバランスを実践する意味でも貢献しているように思います。
 
「仕事は怒られてナンボ ! 」 私など、この考えを持つ典型的な世代なのですが、一方では、「仕事は怒らないでナンボ ! 」という側面もある。その方が相手も気持ちいいし、自分も爽快に仕事を進めることができます。私自身も、自分勝手な怒りについては、アンガー・マネジメントを活用して極小化していくつもりです。みなさんも、是非、お試しください !
 
部下 A くん 「タカシさん、明日の打ち合わせの資料ですが、前回分のアウトラインも付けておいた方がいいでしょうか ? 」
私 「え ?(カチン ! ) お前、そんなこともわからねぇのか、・・・ って、わからないよな、きちんと指示しなきゃ。(落ち着け、落ち着け・・・) で、A くんはどう思う ? 付けた方がいいか、付けなくてもいいか・・・ (ふー、危なかった・・・)」
部下Aくん 「だーかーらー、それを聞きにきたんですよ。どうします ? 」
私 「(ブチッ ! ="切れた"音)な、なんやとーーーーーーーーーー !(怒 ! ) それぐらい自分で考えろやーーーーーーーーーーーっ !(怒 ! 怒 ! ) ハァハァハァ・・・」
 
・・・ 若手に対する「愛のムチ」は、今後とも継続していこうと思っている今日この頃です。決して、怒っているわけではありませんから・・・

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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