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タカシの外資系物語

Simplify the Process! ( その 2 )2009.03.24

“必要ない作業” って、あるの?

前回の続き) 役員クラスがトップダウンで社内の承認プロセスを簡略化しても、いつの間にか、現場がプロセスを元通りに戻してしまう (=複雑にしてしまう) ・・・ これぞ、会社世界の七不思議 ! 前回は、こんな話をしました。


もちろん、元に戻った方が好ましいケースもありえます。


A さん 「役員の決定事項で、最後の確認作業において、伝票の枚数を数えなくてもよくなったんだけど・・・ だれもチェックしないから、ミスが増えてきたよね ? 」
B さん 「同感。われわれだけでも自主的にチェックしよっか ? 」
こんな感じで、あまりにも簡略化しすぎて、本来チェックすべきだった部分が甘すぎるようだと、現場は自己復元的にプロセスを増やしたりすることもあります。本当にチェックが足りないなら、現場の判断で増やした方がいいこともあるでしょう。


しかし、ここで問題にしているプロセスは、だれがどう見たって必要ない作業のことを言っています。「“だれがどう見たって必要ない作業”なんて、あるの ? 」 確かに、少し言いすぎかもしれません。じゃ、言い方を変えて、“作業の当事者 (組織) には意味がなくはないが、プロセス全体から見ると、ほとんど意味のない作業” としておきましょう (ほとんど変わっていませんが・・・)。


この手の 「ムダ」 は、組織をまたがった作業プロセスにおいて、頻発します。例えば、こんな感じ・・・ (以下、()は組織、<>は作業プロセス を意味するものとします)。


(○○部)<伝票を起票する> → (○○部)<科目毎の伝票をまとめ、合計枚数を数える> → (○○部)<まとめた伝票をファイルし、△△部に渡す> → (△△部)<ファイルの伝票をばらして、合計枚数を数える> → (△△部)<伝票の金額を会計システムに入力する> ・・・


以上は、社内で日常的に見受けられるプロセスですが、大いなるムダが存在しています。どこでしょう ? あ、もちろん、このご時世に紙の伝票なんて起票せずに、電子化してシステムにやらせちゃえよ! という議論はあります。ここでは、システム化の議論はいったん忘れて、純粋にムダなプロセスを探してみてください。もう、おわかりでしょう? それは、「合計枚数を数える」というプロセスです。では、なぜムダと言えるのでしょうか ?

組織」のために ! ・・・は、ムダ ?

まず、○○部は何のために、「合計枚数を数える」のか? この部分だけ見ると、純粋に枚数が何枚かをチェックしているように思えます。では次に、それを受け取った△△部は、なぜすぐに、再度、「合計枚数を数える」のか??? △△部の立場に立って見てみると、もし○○部が申告した合計枚数が違った場合に、黙って受け取ったのでは△△部のせいにされるので、それを避けるためのチェックをしているのです。つまり、何かトラブルが起こったときに、「私のせいじゃないよ!」と、組織の責任を明確にするためのチェックなのです。おそらく、次に伝票を受け取った××部でも、最初のプロセスは、同様に<合計枚数を数える>となっているに違いありません。


もちろん、違う場所に運搬しているような場合は、「本当に全ての伝票が運ばれてきているだろーな ? 」と、枚数をチェックすることにも意味はあるでしょう。しかし、多くの企業では、同じフロアの真横にある部署や課に伝票を渡す際にも、組織が違っていれば、枚数を確認するようなチェックをしています。


本当に枚数を「チェックする」というプロセス と 自分の組織の責任回避をするために枚数を「チェックする」というプロセス・・・ これらは、どの程度の割合で存在すると思われますか ? 私はこれでも、プロセス改革を得意とするITコンサルなので、このあたりはコンサルの専門分野です。私が多くの企業で調査した結果、両者の割合は、なんと 「 1 : 2 」です。つまり、大雑把にいうと、企業に存在するプロセスのうち、 3 分の 2 は必要ない可能性があるということです。組織が部分最適に躍起になって、全体最適の視点が欠けている典型例といえるでしょう。

外資が陥る “ワナ”

話を元に戻しましょう。上記例のように、せっかく簡略化したプロセスを、組織の都合だけで複雑化してしまう。根本の原因は何か ? 1 つの理由として、「人の配分がおかしい」ということが挙げられます。本当に忙しくて、人を潤沢に配置すべきところが手薄で、すでに足りているところに余剰人員がいる。すると、人は自分で仕事を作ってしまうのです。ですから、プロセスの簡略化を進める際には、適切な人員数についても同時並行で策を打たなければ、このようなことが起こりがちです。


以上述べたようなことは、実は日系企業よりも、外資系企業の方が発生する可能性が高いといえます。なぜか? それは、外資系企業では、「営業する人」「企画する人」「処理プロセス(事務)を進める人」といった具合に、役割分担が明確になっており、特定の処理プロセスの専門家が、その処理のみを仕事としているケースが多いからです。
それしかやっていない組織に対して、単に処理の簡略化を要求しても、時間が余れば、人はチェックを始めます。また、専門家であるがゆえ、より完璧さを追求するために、過度なチェックを始めるという側面もあると思います。


一方、多くの日系企業では、外資系企業のように役割分担が明確でなく、ほとんどの人は、「なんでも」やらなければなりません。外資系企業ほど効率的でないために、時間がない。時間がないので、自己増殖的なチェックなどが限定的になる部分があります。もちろん、元来日本人は過度にチェックをするのが好きな人種 (というか文化) なので、時間がない中でも、自分なりのチェックを始めてしまう傾向は強いのですが。そんなことしてるから、毎日残業になってしまうんですけど・・・


とかく、人というものは、自分で仕事を作りがちです。それは、日系も外資系も同じ。むしろ、外資系企業の方が、その傾向は高いといえます。重要なことは、トップダウン的な意思決定と、それに伴う人員の最適配置やルールの変更、また組織を超えた全体最適の視点を醸成すること。ま、日系だろうが、外資系だろうが、同じような悩みを抱えているというわけですね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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