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タカシの外資系物語

TOO BIG TO FAIL2008.12.16

英語が嫌いなタカシの屁理屈

以前からこのコラムでも繰り返し述べている通り、私は英語があまり得意ではありません。今でこそ、必要に迫られて、それなりに話し、それなりに聞けるようになりましたが、学生の頃はそりゃもうヒドイもんでした。当時の「共通一次試験」 (今でいう「センター試験」) でも、 200 点満点で 120 点以上取った記憶がありません (模試でも、本番でも・・・) 。

 

なぜか ? 簡単にいうと、「勉強しなかったから」です。では、なぜ勉強しなかったのか ? それにはいくつかの理由があります。1 つには、他の科目に比べて、点数を上げるための努力が半端ではなく大変なように思えたからです。例えば、英単語や英熟語を覚えるとしても、付け焼刃の努力で点数が上がるわけではありません。来る日も来る日も単語帳を片手に、何千もの単語を覚えるくらいなら、他の暗記系科目 (私の場合、日本史や生物) で努力した方が、「努力一単位あたりの成果」 が高いように思っていましたし、実感としてそうでした。英語を 20 点上げるよりも、日本史と生物を 10 点ずつ上げる方が、はるかに楽だったように思います (こんな不埒な考えだから、後々、泣きをみるのですが・・・)。

 

2 つめの理由は、衝撃的です。中学生当時、私は洋楽に夢中でした。マイケル・ジャクソンの 『スリラー』 が全盛の時代でしたし、日本の歌手から脱却して、なんか大人になったような気分に浸れたからです。みなさんにも同様の経験があるのではないでしょうか。そんなとき、 BON JOVI という、イカした (死語 ? ) バンドが登場しました。その彼らの曲の 1 つに、「She don’t know me」というのがあったのです。


「don’t って、何やねん ! 主語が She やねんから、三単現 (懐かし ! )の doesn’t ちゃうんかーーーーーー!ハァハァハァ・・・」 言語の多様性を理解していなかった私は、規則通りにいかない文法にイライラし、英語を学ぶ気力を一気に失ってしまいました。今思うと、アホみたいな話なんですが・・・

 

最後の理由は、構文を中心とした英語の学習体系に、なんとなく違和感を持っていたからです。例えば、「too ~ to ・・・」という構文があります。これは、「あまりに ~ なので、・・・できない」と訳す、とされています。

 

(A) This bag is too heavy for me to carry. (このカバンは重すぎて、私には持ち運べない)

この構文は、以下の形に書き換えることができます。

(B) This bag is so heavy that I cannot carry it. (このカバンは重すぎて、私には持ち運べない)
ご存知の通り、上記の構文書き換え問題は、入試に頻出します。黙って法則通りに書き換えていけばいいのでしょうが、偏屈者の私は、常に違和感を持っていたのです。「(A) と (B) って、ちょっとニュアンス違うんじゃないの?」

大きすぎて、潰せない!

(B) はいいんですよ、「cannot」っていう否定語が入っているので、「あぁ、なるほど、重すぎて持ち運べないんだな!」っていうのが、直感的にわかります。でも、(A)って、文章のどこにも否定語は出てきません。

 

(A) を直訳すると、「このカバンは、私が持ち運ぶには(for me to carry)、重すぎる(too heavy)」となります。日本語的には、「このカバンは重すぎて、私には持ち運べない」とほとんど同義というのは理解できます。でも、「not」を用いている(B)と同様の、強い否定の意味があるというのには、少し違和感があるのです。「not って言ってないんだから、頑張れば、持ち運べるようになるんじゃないか?」「カバンの中身を小分けにするとか、台車を使うとかすれば、何とか持てるんじゃないだろうか?」「なんとか工夫しようぜ、おい!」 そんな気がしませんかね ?

 

「おいおい、タカシ。仕事のやりすぎで疲れてるんじゃないのか ? 大丈夫か ?!」 心配ご無用 ! 私はいたって元気です。実は、長々と私の持論をお話したのは、最近になって、その持論を確信する出来事が起こったからなんです。それをお話しましょう。

 

「too big to fail」 という言葉があります。これは、「大きすぎて、潰せない」 と訳します。大企業が倒産の危機に瀕した際、その企業を単純に潰してしまうと、経済に与える影響が大きすぎて、潰すことができない、という場合に使います。最近なら、アメリカの自動車ビッグスリー (GM、フォード、クライスラー) が、この 「too big to fail」 にあたります。普通の会社ならとっくに倒産しているような財務状況なのですが、下請けや孫請け、また地域経済への影響を考えると、単純に潰せない状況になっています。彼らの資金繰りを支援するために、数兆円の税金を投入するか否かについて、アメリカの議会が揺れているのは、みなさんもよくご存知だと思います。

 

そもそも今回の金融危機は、 「リーマン・ショック」 とも呼ばれています。リーマンのケースがなぜ 「ショック」 なのかというと、 「too big to fail」 に該当するにもかかわらず、米当局がリーマンを倒産に追いやったからです。リーマンという大手証券会社が倒産した場合の影響を考えずに (実際には、いろいろと考えたのでしょうが)、倒産に追いやったことについては、米当局の責任問題に言及すべきだというような論調も見られます。実際に、リーマンの後に危機に瀕した AIG は、保険会社ということもあり、世界中で保険に入っている人の影響を加味して、「too big to fail」の原則から倒産しないで済みました (国有化されて、生き残っています)。

 

実は、私が在籍していた銀行も、 「too big to fail」 の原則によって、倒産ではなく国有化の策がとられました。銀行が国有化された当時、すでに私は銀行を去っていましたが、アカの他人の私ですら、 「私がいた銀行が倒産したら、とんでもないことになる。潰すなんて、もってのほかだ。中小の金融機関なら、いざ知らず・・・」 と思っていたように記憶しています。

工夫して、潰す

現状の 「too big to fail」 の問題は、「潰すか、潰さないか?」という、たった 2 つの選択肢の中で議論されがちです。しかし、本当にそうなのか。本当に、「大きすぎて、潰せない」のでしょうか?

 

確かに、ビッグスリーのような大企業を単純に倒産させたのでは、影響が大きすぎます。何十万人もの失職者が出るのも問題でしょう。経済に与える影響を最低限にし、かつ社員の最低限の生活を守ってやることは必要かもしれません。

 

しかし、経営の「けじめ」はつける必要があります。今回の件を招いた最大の原因は、リーマン・ショックでも何でもなく、そのような環境変化に耐えうるようにリスクをヘッジしてこなかった経営陣にあります。その経営陣が、桁はずれな退職金を受け取るのは、どう考えてもおかしい。また、そのような経営に対して投資をしていた株主が損失を被るのも仕方ないでしょう。

 

 「too big to fail」 というのは、「大きすぎて、潰せない」 ではなく、 「大きすぎて、単純に潰すのは影響が大きすぎる。だから、工夫して潰す」 ということではないかと思うのです。企業に巣食う病巣を放置したままで延命装置をつけても、それは単なる先延ばしに過ぎません。病巣のある部分を取り除いて、健康な部分を独立させる。もちろん、独立した健康体部分にも、何らかのペナルティを課すことは必要でしょうが (給料下げるとか) 。単に、「生かすか、殺すか」という議論では、また同じことを繰り返す可能性があるように思えてなりません。

 

今年の後半は、世界的な金融危機に揺れました。「こりゃ大変だ ! 」と、あたふたしている間に、もうクリスマスです。来年も厳しい環境には変わりないですが、少しでも景気に光が差すように ・・・ Merry Christmas !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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