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タカシの外資系物語

タカシの昇進試験 ( その 3 )2008.04.22

    部下の育成より、自分でやった方が早い ?

    前回の続き )

    審査官 「タカシ、あなたの “後継者=ポスト・タカシ” は誰なの ? 」
    私 「 … 」

     

    私は今、昇進試験の面接を受けています。面接の審査官から厳しい質問をされ、答えに窮している私。同じタイトルでのコラムは今回で 3 回目なのですが、実は 1 回目の 1 行目の状況から、ほとんど先に進んでいません … 。ここらで少し、話を進めることにしましょう。

     

    私 「実は … ( な、なんて答えるべきなんだろ ? 「後継者はいません。なぜなら、育成していないからです」 なーんて言っちゃったら、昇進試験落ちるかも …。えーん、どうしよーー(T-T) )」

    審査官 「ん ? どうしたの ? 」

    私 「じ、実は … ( でも、いないのは事実だし。変なウソつくより、正直に話した方が、印象いいかも … ) 」

    そもそも、どうして私には後継者がいないのでしょうか ? 最大の理由は、私が後継者を育成しようとしていなかったからです。しかし、これは「理由」というよりは、私の「ミス」。前回お話したとおり、マネージャーの最大の仕事の 1 つが、「 ( 自分の次の ) マネージャーを作ること」だとすれば、私はその仕事をサボっていたことになります。

     

    では、なぜサボってしまったのでしょう。 1 つには、育成するのが面倒だったからです。「面倒」というと語弊があるのですが、結局のところ、部下の育成とは、自分の仕事の一部を部下に投げて、経験させなければなりません。自分の仕事を部下に伝え、不足する部分を教えてやらねばならない … 自分なら 1 時間でできる作業を、部下にやらせると数日かかる … 「そんなことなら、自分でやった方が早いわーーー ! 」 とばかりに、自分で全てをやってしまう … こんなことを繰り返していたのでは、部下など育成出来るはずがありません。

     

    先日もこんなことがありました。部下の A くんがお客様に提案する場に同席した時のこと。

     

    お客様 「A さん、この部分がよくわからなかったんですけど … 」

    A くん 「は、はい … 」

    お客様 「なんか説明と矛盾しているような気がするんだけどなぁ … 」

    A くん 「いや、それはですねぇ … 」

    イライラするわぁーーーーーーーーーー ! 早く答えんかいーーーーーーーーーーーっ ! ( 怒 ! )

     

    お客様からの質問になかなか答えない A くんを見て、私は思わず立ち上がって、自ら説明してしまいました。

     

    結局、提案自体はうまく進み、A くんからも 「いやぁ、タカシさんのおかげで助かりました。私ひとりだったら、どうなったことか … 」 という感想をもらったのですが、これって本当に正しいことをしているのかどうか … むしろ、あの場面ではグッとこらえて、A くんに任せてみるべきだったのではないか … という気もします。いや、後継者育成の観点からは、絶対そうすべきだったはず。でも、私はお客様との関係がこじれるのを恐れて、結局自分でやってしまったのです。

    “プレイヤー” と “マネージャー” のはざまで

    世の多くのマネージャー予備軍は、私と同じジレンマにあるように思います。私はプレイヤーとしてそれほど優秀だとは思いませんが、そんな私でも、自分が得意とし、慣れ親しんだ仕事については、「俺が、俺が … 」という意識が出てしまいます。マネージャーになって、自分のスキルを部下に移転する時期になっても、依然として、自分がプレイヤーとして振舞ってしまう。その結果、部下が全く育たない … という悪循環です。

     

    全く昇進しないつもりなら、それでもいいでしょう。しかし、少しでも上に行くつもりがあるのなら、自分の仕事を引き継いでおかなければ、昇進後の自分の仕事が回らなくなるのは明らかです。

     

    特に、外資系企業というのは、日系に比べて、自分のスキルを部下に移転しないマネージャーが多いように思います。そもそも、「スーパー・プレイヤー」だけが評価される土壌があるのに加え、部下の育成といった時間のかかることは評価されにくいのも大きな要因でしょう。

     

    外資が日本において「ビジネスの継続性 =Business Continuity 」を追求するためには、「いかに売ったか ? 」 だけではなく、「いかに部下を育てたか ? ≒ その部下たちが収益に貢献したか ? 」 も、マネージャーの評価指標をすべきだと思います。また、そのプロセスを進めるためにも、自分の配下スタッフのうち、「次代を担ってくれそうなタレント=自分の後継者」を指定して、意識的に教育していくような制度も必要でしょう。

    面接試験「タカシの回答」と、その結果 …

    私 「実は、後継者育成については、ほとんど達成できていません。しかし、私は自分が出来なかった理由について、分析が出来ています。すでに、数名のタレントに目をつけており、今後 1 年間のうちに、彼ら・彼女らに、Post Takashi ( タカシの後継者 ) となってもらうためのカリキュラムを受けてもらう予定です … 」

     

    審査官 「…challenging…」

    私 「へ ? 」

    審査官 「あなたの言うとおり、後継者育成は非常に難しい ( challenging ) 問題だね … わかりました、これで面接を終わりましょう ! 」

    がーーーーーーーーーーーん ! コメント、それだけ ? こりゃ落ちたな … (T-T)

     

    それから数日後のこと、US 本社の副社長名で、ウェブサイトに以下のアナウンスがされていました。

     

    I’m very pleased to announce today the names of the newly appointed Associate Partners. These appointments recognize the significant contributions each individual has made for our clients, our people and our business. 
    Please join me in congratulating our colleagues and in wishing each of them continued success.
    === New Associate Partners ===
    - Takashi Nara
    - ・・・
    Regards,

     

    しょ、昇進したわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T) 奇跡じゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T)(T-T) えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ ! 思わず、踊ってしもたわーーーーーーーっ !

     

    今思うと、審査官も後継者育成については、私と同じ悩みを抱えていたのではないかと思います。外資で「challenging」という言葉を使うときは、決まって、「すごく難しい、簡単には解決できない事柄」を指すことが多いので、彼自身もこの問題が難しいことは理解していたはず。(『Be "Challenging" !』 参照 )もしかしたら、審査も大目に見てくれたのかもしれませんね。

     

    さて、次に狙うは、いよいよ「パートナー」です。そのときの面接試験では、今回のように困ることがないよう、早速「Post Takashi」の育成を開始したいと思います。では !

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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