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タカシの外資系物語

外資における上司の「義務」って ?2007.07.17

マネージャーは見本を示せ !

先日、あるミーティングでのこと。そのミーティングとは、月に 1 回実施されている部門全体の連絡会みたいなものでして、総勢 100 名程度が参加します。一般スタッフを対象にしていることもあり、それほど緊急性もないことから、私は会議室の端の方に座って PC を膝の上に置き、いわゆる「内職」をしていたのです。


「ま、忙しいんだから、ちょっとぐらい許してもらえるだろ … 」


会議が始まって、 5 分程経過した頃でしょうか。私の肩をしきりに叩く人がいます。同僚のマネージャー、 Richard でした。


Richard 「Hey, Takashi! Now we are in the meeting! You are a manager, aren’t you?!」( タカシ、今はミーティング中だぞ ! お前はマネージャーのくせに、何やってんだ ! )


私 「O, OK! Sorry... 」


ちょっとぐらい、いいじゃねぇか … と思いつつも、悪いのは会議中に内職をした私の方です。私はスゴスゴと PC をしまいつつ、ふと周りを見渡してみました。するとどうでしょう ! 私以外にも、多くの日本人マネージャーやスタッフが「内職」をしているではありませんか ! 一方、 Richard をはじめとする外国人マネージャーやスタッフは、一切内職などせずに会議に聞き入っています。これはどういうわけなのでしょうか ?


会議終了後、私はこの謎を解明するために、Richard から話を聞くことにしました。


私 「Hi, Richard. さっきは済まなかった。これからは気を付けるよ … ところで、さ ? 会議中の内職はよくないのはわかっているんだけど … どうして日本人は内職しちゃうんだろね ?」


Richard 「知るか、んなもん … 自分に聞いてみろ !」


私 「は、はぁ …( ま、そりゃそうなんだが …(T-T) )」


Richard 「スタッフは仕方ないかもしれんが、少なくともマネージャーは絶対いかん ! マネージャーが会議中に内職なんてやったら、スタッフがそれを真似するだろ ? 上に立つ者は、常に見本を示さなきゃ …」


私 「ご、ごもっともでやんす …(T-T)」

マネージャーは Wii を手放せ !?

そういえば、こんなこともありました。あれは、去年のクリスマス・イベントのビンゴ大会でのこと。1 等の賞品は、任天堂の「Wii」でした。


「よーし、 Wii を狙うぞぉーー」


みんなの目は真剣そのもの。数字の発表も 8 回目に突入、そろそろビンゴの人が出てもおかしくありません。


「Next number is … 47 !」


「BINGO !」


あっちゃー …Wii取られたぁ …(T-T) 見ると、ビンゴが揃ったのは、マネージャーの Peter でした。


「Thank you! ミナサン、ドモ、アリガトウ !」


Peter は賞品が置いてある台のところに行って、 1 等の Wii を手に取り … と思いきや、Wii ではなく末等のチョコレート詰め合わせを手にとって、一言。


「Wii ハ、残シテオキマスネ ! ミナサン、オ楽シミクダサイ !」


何と、Peter は 1 等の権利を放棄したのです ! 結局、Wii は Peter の次にビンゴが揃った、サポート部門の A 子さんの手に渡りました。


さて、みなさん。冒頭の Richard の話、そして、Peter の話 … これらは共通した考え方・思想に基づいています。その思想を、「ノブレス・オブリージュ (noblesse oblige)」と言います。


ノブレス・オブリージュとはフランス語で、そもそもは「貴族の義務」という意味です。高い地位に立つ人は、自分より低い地位の人々の規範になるとともに、自分の欲求を抑えてでも公衆のために役立つように振舞うことを「良し」とする考え方を指しています。


この考え方のポイントは、「社会的責任」または「義務」として捉えられていることでしょう。やらなかったからといって、法的に罰せられるようなものではないのですが、社会的に軽蔑を受けると考えられているのです。特に、欧米の上流階級層にとっては、社会的な軽蔑を受けるぐらいなら、法的な罰を受けた方がマシだというような、一種の強迫観念があります。よって、ノブレス・オブリージュを徹底することは、彼らの重要な義務だといえます。

「ノブレス・オブリージュ」はツライよ …

さて、マネージャー・レベルの日本人が外資系企業でうまくやっていくためには、「ノブレス・オブリージュ」の理解が不可欠です。これらの背景を知らずに、Richard や Peter の振る舞いを見ると、「キザなやつ」とか、「カッコつけやがって」などと思いたくなるのですが、決してそうではありません。彼らは「義務」でやっているのですから、誤解してはいけないのです。


会議中に内職をするのをグッとこらえ、ビンゴで Wii がゲットできる権利を放棄し … 何やら、えらくストレスがかかるように思われるかもしれませんが、実はこれって、日本の「武士道精神」にも相通じるものがあると思いませんか ? 欧米のやり方はビジネスライクで、思いやりもへったくれもないように考えがちですが、実は思いやりを失くしているのは、むしろ日本人の方だったりするのです。上司が部下の規範となり、部下が楽しむために自分の利益を還元する … これって、当たり前のことなのです。


外資のビジネスの根底に流れる文化的な背景を理解することは、日本人が外資と共存するために必要不可欠なことです。ノブレス・オブリージュはその一例に過ぎませんが、現代の日本人には教えられるところの多い考え方のように思われます。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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