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タカシの外資系物語

狭い世間は「知り合い」ばかり ?2007.06.19

いつ、お会いしましたっけ ?

先日、あるクライアント先でのこと。打ち合わせも無事終わり、エレベーターに乗り込もうとしたとき、担当の K 部長がこんなことをおっしゃいました。 


K 部長 「タカシさん、実はね、タカシさんとは以前にもご一緒したことがあるんですよ ! 」 


私 「あ、そうですか。それはそれは … 失礼いたしました」 


K 部長 「まさか、またお会いできるとはね … 世間って、狭いですね」 


私 「いやぁー、本当にそうですね、ハハハ … 」 … 全然、覚えとらんし … ( 汗っ ! ) 


これは、まだマシな方。表面的な会話としては、何の問題もなく終わっているので。本当に困るのは、次のようなケースです。ある会合でのこと。 


私 「○○コンサルティングのタカシと申します。どうぞ、よろしく … あっ ! 」 


先方 「はいはい、よろしく … おっ ! 」 


… 確かこの人、どっかで会ったことあるよな … はて、いつだっけ ?   


可能性としては、 4 つあります。 ( 1 ) 銀行員時代 ( 2 ) 前職の外資コンサル時代 ( 3 ) 前職の外資コンサル時代に出向していた外資系ソフトウェア・ベンダー時代 ( 4 ) 現職の外資コンサル時代。「いつお会いしましたっけ ? 」とぶしつけに聞くのも気が引けます。かといって、いつ会った人なのかわからないままでは、話していいことと悪いこととの区別がつかないので、落ち着いて会話もできません。


私 「いやーぁ、お久しぶりです。何年ぶりになりますかねぇ … 」


先方 「こりゃどうも、こんなところでお会いできるとは … 」


私 「 ( だから、何年ぶりか教えてくれやーっ ! (T-T) … ) 前回お会いしたのは確か、199 … 、いつでしたっけ ? 」


先方 「前回は色々とアドバイス頂いたにもかかわらず、全くご連絡できてなくて … 本当にご無沙汰しています」


私 「 ( だから、199 … 何年に会うたんやーーっ。(T-T) … ) いやいや、とんでもないですよ。で、いかがですか、その後は ? ( … と、話している相手が誰かもわからずに、とりあえず尋ねてみる作戦強行 ! ) 」


先方 「おかげさまで、その後 2 年かけて作った CRM システムが、昨年やっとカットオーバー ( 本番稼働 ) しまして。最初はトラブルも多かったんですが、最近やっと落ち着いてきました」


私 「( ん ? 2 年かけて作って、昨年カットオーバーということは、約 3 年前か … 3 年前に CRM システムねぇ … あっ、思い出した !! △△銀行の□□さん ! ) そうですか … 実は私、あれからすぐに転職しましてね、今は○○コンサルティングというところにいるんですよ。」


先方 「え、そうなんですか。また今度、ゆっくりお話させてくださいよ」


私 「是非是非 ! 」 … ほっ、何とか切り抜けたわい …

みんな、何となく知り合い …

以上のようなことは、営業職のように、人と接する機会の多い仕事をされている方なら、経験されたことがあると思います。一方で、「少なくとも営業をやっている以上は、いつ、どこで、だれと会ったかぐらいは、きちんと覚えているべきだ ! 」という意見もあるでしょう。それはその通り、私も否定しません。 


しかし、実際には、私自身もの覚えはかなりいい方です。にもかかわらず、こんなことが起こってしまうのは、なぜか ? これには、いくつかの理由があります。 


1 つには、比較的短期間で転職をしていることが挙げられます。「( 3 ) 前職の外資コンサル時代に出向していた外資系ソフトウェア・ベンダー時代」というのは、私にとっては転職したわけではありませんが、私に会った人にとってみれば、違う会社なので転職したようなものです。そのように考えてみると、私は次のような周期で「転職」をしたことになります。


( 1 ) 6 年半 → ( 2 ) 1 年 → ( 3 ) 1 年 → 再度 ( 2 ) 2 年半 → ( 4 ) もうすぐ 4 年


確かに、銀行員からコンサルに転職して以降というのは、かなりの頻度で会社を代わっていることになります。この期間において、いつ、どこで、だれに会ったかということについては、意識して整理しておかないと、いざというときにサッと出てこないというのも納得です。


もう 1 つの理由は、同じ業界の中で転職を繰り返しているために、お互い顔を合わせる機会が多く、それほど深く知っていなくても、何となく知り合いのような関係にあるということがあります。先に述べた K 部長も△△銀行の□□さんも、私のキャリアである ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) いずれにおいても、クライアントになり得る方です。非常に閉じられた世界 -私の場合は金融機関の IT - において、限られた顧客層を相手にしているわけですから、自分の行動範囲内で「再会」する可能性も高いというわけです。

キャスト変更しました ?!

特に外資に転職してから、「世の中はなんて狭いんだろう … 」と感じることが多くなりました。顧客だった人が売る側に変わっていたり、 A 社にいた人がライバルの B 社に移ったり … なんてことが頻繁に起こっているのですが、実際には所属している会社が変わっただけで、メンバーの顔ぶれは以前とそれほど変わっていなかったりします。キャストが日替わりで変わるだけで、登場人物全体は決められた枠内を順繰りで回しているというようなイメージです。


外資系企業は、このような機動的な労働力移動に一役買っています。「 A 社にいた人がライバルの B 社に移る」というのは、要は「引き抜き」です。しかし、日系から日系への引き抜きというのは、役員層やマーケティングなどの特定業種ではそれなりに見られるものの、現場層ではそれほど多くは見られません。日本の伝統的な考え方においては、昨日まで A 社にいた人が、今日から B 社で頑張ります、というのには抵抗感があるからでしょう。しかし、ここに外資が 1 クッション入ることで、状況はかなり変わります。日系 A 社 → 外資転職、経験積んで → 日系 B 社へ転職 というパターンが、かなり見られるようになってきました。実際に、私の同僚も、ある地方銀行から外資コンサルに転職し、今はネット系銀行のシステム部門マネージャーへとキャリアアップした人がいます。地方銀行からネット系銀行に直接転職というのは難しいですが、間に外資系企業が入ることで実現した例です。


ただ、 1 つ注意しなければならないのは、「世の中は狭い」ということです。転職を繰り返してキャリアアップを実現した人も、その多くは同じ業界で仕事をしているはずです。個人的に、チョイ役だった人が脇役になって主役を射止めたとしても、舞台の上にいるメンバーは大きくは変わっていないのです。つまり、将来、いつ、どこでお世話になるかわからないわけですから、常にそのような意識で人と接することが重要です。「この会社はオレにとってはステップアップにすぎないんだから、人との付き合いも適当にやっておこう … 」なんて人は、ステップアップなどできません。私の周りを見ても、前の会社をケンカ別れのような形で退職してきたような人は、転職後も成功できないケースの方が圧倒的に多いです。狭い世の中で不義理をしてしまうと、必ずどこかでしっぺ返しが来るということですね。


先日、東京駅を歩いていると、向こうからだれかが声をかけてきました。


「タカシさーーん ! 」


「ん ? あ、 XX 証券の C さんじゃないですか ! どうもお久しぶりです」


XX 証券の C さん、この方ははっきりと覚えています。私が今の会社に移って、初めて自力でプロジェクトを売り込んだお客様ですから、忘れるわけはありません。


私 「本当に、すっかりご無沙汰してしまって … あれからお変わりありませんか ? 」


C さん 「いや、半年前に転職しましてね。今はタカシさんと同業の●●コンサルティングにいるんですよ ! 」


げ ! C さんも「キャスト変更」 ?!  ●●コンサルティングって、ワシが前にいた会社やんけーーーーーーーーーーーっ ! いやー、世の中って、本当に狭いもんですよね。では !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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