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タカシの外資系物語

外資に巣食う "救急車を追う人" !? ( その 2 )2007.04.03

ambulance chaser 登場

( 前回の続き ) 今回は、外資に存在する 「 ambulance chaser ( 救急車を追う人 ) 」 の実態についてお話しします。 


ここで、少しおさらいをしましょう。 ambulance chaser と呼ばれる弁護士は、なぜ救急車を追うのか ? それは、救急車の行く先には、交通事故などの「トラブル」が存在し、そのトラブルに介入することで弁護費用を稼ぐことができるからです。つまり、トラブルというのは、「儲かる」わけです。 


では、ビジネスの世界ではどうでしょうか ? 当然のことながら、トラブルは発生しないにこしたことはありません。しかし、ビジネスにトラブルはつきもの。企業においても、トラブルを解決することによって、高い評価を得ようとする ambulance chaser もどきのビジネスマンが多数存在するのです。 

  
「タカシさーん、困ったことになりましたよ … 」 
「どうしたの ? 」 


うちのチームのオサムくんが困った顔でやってきました。 


オサムくん 「先週、 US 本社に申請した○○プロジェクトの件なんですけど、 Description incomplete ( 記載内容不備 ) で差し戻されちゃいましたよ。あさってからプロジェクト開始なのに、これじゃ外注さんに発注かけられない … (T-T) (T-T) (T-T) 」 


このプロジェクトでは、外注スタッフにお手伝いいただく予定なのですが、 US 本社の承認が下りないために、外注スタッフを入れることができない状況になっているのです。 


「うーむ、こりゃ困ったぞ … 」 オサムと私が途方に暮れているところへ、ヒタヒタを迫り来る足音。 


「What’s wrong, Takashi?」 


… 契約部門のジョセフです。こいつ、日本語ペラペラなので、おそらくはオサムと私が話していた会話を聞いていたはず。ジョセフは US 本社の契約部門に顔が利くので、このトラブルを解決することで自分の株を上げようと考えているに違いありません。 


え ? ちょっと待てって ? ジョセフは純粋に親切心から心配しているのに、私が穿った見方をしているんじゃないかって ? そりゃ同じ会社の仲間ですから、力を合わせてトラブルを解決しようとしているに決まっています。しかし、ジョセフのような ambulance chaser は成果を独り占めしようとする傾向が強いため、一緒に仕事をするには注意を要するのです。以下で詳しくご説明しましょう。

「僕が一緒に行ってやろうか ? 」

さて、次にジョセフはどのような行動に出るか ? それは、99% 決まっています。 


「OK, Takashi. I can help you. But, first, you had better report to Thomas, sector leader. Shall I go together? 」 ( タカシ、喜んで手助けするよ。でも、まずは上司の Thomas にレポートした方がいい。僕が一緒に行ってやろうか ? ) 


キターーーーーーーーーーーーーーッ(゜∀゜) !これが恐怖の「上司のところに一緒に行ってやろうか」作戦。この甘い誘いに乗ってしまうとどうなるでしょう。状況としては、オサムと私が自分たちの力で何とかしようとしていたところに、ジョセフがやってきて「まずは、上司に報告・相談すべきだ」 と言ったわけです。外資にかかわらず、困ったことが起きたときには、上司に相談するというのは常識、全くもって正論。よって、上司に相談もせずに内緒で何とかしようとしていたオサムと私は「悪」、私たちを説得して上司に報告することを促したジョセフは「善」という構図が、容易に成り立ちます。 


また、ジョセフが上司の Thomas に報告したがっている最大の理由は、ジョセフがこのトラブルを解決した際に、 Thomas レベルの人間がそのことを認識していないと、意味がないからなのです。ジョセフにとっては、私から「いやー、助かったよ。本当にありがとう ! 」と言われても、うれしくも何ともありません。私の上司レベル ( つまり、ジョセフの上司と同じレベル ) から、「ありがとう。君の上司にも伝えておくから … 」と言わせなければ、意味はないのです。 


ジョセフ 「Shall I go together? 」      


… どーするよ、タカシ ! ピーーンチ !

ambulance chaser を活用せよ !

アメリカン・スタンダードに慣れたビジネスパーソンというのは、程度の差こそあれ、大なり小なりジョセフのような行動をとる傾向にあります。それは、自分だけが点数稼ぎをしたいというようなセコい考えではなく、体にしみついた「カルチャー」のようなものです。つまりジョセフは、オサムや私を窮地に立たせようなどという気は毛頭なく、自分が評価されて、トラブルも解決すればそれでいいのです。悪気は全くありません。 


一方、日本人的な考え方においては、ジョセフのような行動は、何となく疎ましく思われがちです。日本人は、「オレが、オレが … 」というのを嫌いますし、トラブルにしてもできるだけ大事にせずに解決することを好むからです。しかし、このことがスピード感の欠如を招いているのも事実です。今、一番重要なことは何でしょう ? それは、トラブルを解決することです。極端なことを言えば、トラブルさえ解決できれば、それがだれの成果であろうが、会社としては仕事を前に進めることができるからです。 


では、外資において、ジョセフのような ambulance chaser にはどのように対処すべきか ? それは、「常にこちらが主導権を握り、 ambulance chaser を活用する」ということです。上記の例で、私がなぜピンチに陥っているかというと、すでに主導権をジョセフに握られているからに他なりません。このまま Thomas のところに行っても、ずっとジョセフに話を仕切られ、オサムと私は、何だか能無しのような感じになってしまうことでしょう。そうならないためには、私が主導権を握り、ジョセフを使うことが必要です。 


ジョセフ 「 Shall I go together? 」      


私 「OK! とりあえず、オレ 1 人で Thomas に話してくるわ。至急、本社の契約部門と話す必要が出てくるだろうから、そのときは頼むよ」 


ジョセフ 「え ? 」 


私 「なんだ ? 助けてくれるって、言ってくれたんじゃなかったっけ ? 」 


「Thomas!」 


「Oh, Takashi. Come in!」 


私は早速、 Thomas のところに行って、状況を報告しました。 US 本社の契約部門との交渉は、ジョセフにお願いすることも含めて。ジョセフには申し訳ありませんが、すでに 「 ambulance chaser としてジョセフが評価される」 という状況ではなく、「社内の有効なリソースをうまく使ったタカシが評価される」という状況です。これぞ、秘技「ambulance chaser 返し」の術 ! 


… と、Thomas、何やら落ち着かない様子です。 


私 「どうしたの ? 」 


Thomas 「いやね、ちょっと別件の契約関係で本社とモメててね。こっちの方が厄介かもしれんな。うーむ、こりゃ困ったぞ … 」 Thomasが途方に暮れているところへ、ヒタヒタを迫り来る足音。 


「 OK, Thomas. I can help you. But, first, you had better report to Peter, General Manager. Shall I go together?」 ( Thomas、喜んで手助けするよ。でも、まずは日本支社長の Peter にレポートした方がいい。僕が一緒に行ってやろうか ? ) 


… お、おそるべし、ambulance chaser …

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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