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タカシの外資系物語

ビジネス英語・中級者への道 ( その 2 )2006.12.19

動く歩道」のアナウンスとは ?

( 前回の続き ) 今回は、「外資系企業では、否定文 ( notの入った文章 ) を極力使わない方がいい」ということについて、お話します。

 


本題に入る前に、理解をより深めるために、英語と日本語の根本的な考え方の違いを説明したいと思います。ではここで、質問。みなさんは、空港などで「動く歩道」に乗ったことがあると思いますが、その終了間際、どのようなアナウンスが流れているかご存知でしょうか ?


「動く歩道の終了間際 ? そりゃ、『もうすぐ終わります ! 』って、言ってんじゃないの ? 」 正解です。日本では、「もうすぐ終了します」というアナウンスが流れています。では、欧米ではどうか ?  英語圏の空港では、「Watch your step!」というアナウンスが流れています。


これら両者の違いは何でしょう。


●日本語のアナウンス … 「もうすぐ終了します」 → ( ということは、もうすぐ動く歩道がなくなるんだから、足元に注意しなければならない ) → 足元に気をつける


●英語のアナウンス … 「Watch your step! ( 足元に注意しなさい )」 → 足元に気をつける


英語の場合は、日本語の ( カッコ内 ) の思考プロセスが省略されて、より直接的な表現になっていることがおわかりになると思います。英語の場合は、動く歩道がもうすぐなくなることは優先順位の低いこと、はっきりいうと二の次であって、「その結果、何が起こるのか」ということがより重視されたアナウンスになっています。要するに、アナウンスは聞き手に何をさせたいのかを明確に告げなければ意味がないのです。


このことは、ビジネスで英語を使う上で、重要なポイントとなってきます。つまり、


●日本語的会話構成 … 「理由・結果・対策」 という順ではなく、


●ビジネス英語的会話構成 … 「( 「だから、どうするの ? 」という ) 対策・( その対策をとる原因となった ) 結果・ ( その結果が導かれた ) 理由」


という順に、会話の優先順位を構成すべきなのです。


ここで誤解いただきたくないのですが、私は「日本語が論理的で、英語が非論理的だ」と言いたいわけではありません。日本語も英語も論理的だという前提のもと、ビジネスで英語を話す順序として、上記の優先順位の方が「理解されやすい」 または 「評価される」と言っているのです。

できない … だから、どうするの ?

本論に戻りましょう。なぜ、「外資系企業では、否定文 ( notの入った文章 ) を極力使わない方がいい」のでしょうか ? それは、否定文 ( notの入った文章 ) は、「( 「だから、どうするの ? 」という ) 対策」を説明する文章にはなり得ないからです。もちろん、結果や理由を語る際に、否定文を使うケースはありえます。しかし。否定文では、「自分の主張 ( 言いたいこと ) 」を表現しにくいことを念頭に置くべきです。


例えば、前回コラムでお話した、締め切りに間に合わないときに使う表現を考えてみましょう。 「 I can not do this work by the deadline... 」と言われても、聞き手としては、実は何もうれしくありません。「だから、どうするの ? 」がないと、ビジネス英語としては失格です。


このような場合には、「Please assign two additional workers, to meet the deadline ( 締め切りを守るために、 2 名の追加要員をアサインしてください ) 」と言えば、聞き手は何をして欲しいのか( 自分に要求されていること ) が、直接的にわかります。「なぜ間に合わないのだ ? 」と問われたら、「 Because I must do another work with higher priority ( 別の優先順位の高い仕事を先にやらねばならないからです ) 」と言えばいいのです。これらの会話には、「 not 」は一切使われていません。


ビジネスにおいて「 not 」を使っていたのでは、前向きな展開を生み出しません。「できないことはわかった。だから、どうするんだ ! 」 外資のビジネス英語を使いこなすということは、常に前向きに仕事を進めていく意識を持つことと同義だといえるでしょう。

「 not 」を使ってしまった場合の対処法

とは言いながら、すべての会話で「not」を使わずに、肯定文だけで話をするのは限界があります。また、日本人は「 pessimist ( 悲観主義者 )」な人が多いので、ついつい「 not 」を使いがち。では、「 not 」を使ってしまった場合は、どうすればいいのか。 


それは、「すぐに “Because” と言って、肯定文で理由を述べる」ということです。ここでのポイントは 2 つ、「すぐに “Because”」 と 「理由は肯定文」 です。


まず、すぐに理由を述べないと、自分ができないことの正当性を示す機会を失うことになります。外資では基本的に、「単にできない」=「能無し」 を意味しますから、自分が「能無し」ではなく、何らかの理由があってできないということを説明しなければなりません。また、外資のマネージャーは、できないと言っている人の理由など、くどくど聞いている時間などない、と考える人が多いので、その瞬間に言うことが重要です。万が一「 not 」を口に出してしまった場合は、たとえ理由が思い浮かばなくても、反射的に「 because 」と口に出すぐらいの心構えでいる必要があるでしょう。理由は後付けでも、何とかなります。重要なのは、理由があることを、相手に示すことです。


次に、「 because 」の後は、なぜ肯定文で話さねばならないのか。英語には、「二重否定」という表現があります。例えば、「 I cannot live without you ( あなたなしでは生きられない ) 」と表現することで、「私の人生はあなたが全て ! 」という、非常に強い肯定を示すことができます。しかし、二重否定というのは非常に難しい表現でして、ビジネス英語の会話の中で、これがスムーズに出せる日本人などほとんどいません。


多くの日本人が、二重否定のイメージで、「 I can not do this work by the deadline, because I have little time ( 時間がほとんどないので、締め切りに間に合いません ) 」 という英語を使います。しかし、この文章はいわゆる「二重否定」ではなくて、「単に否定文を二度繰り返しているだけ」に過ぎません。これでは、「私には時間を作り出す能力もないし、( 時間があったとしても ) 締め切りに間に合わせる能力もありません」という、自らダメ出しを 2 回していることになります。


一方、「 I can not do this work by the deadline, because I must do another work with higher priority ( 別の優先順位の高い仕事を先にやらねばならないので、締め切りに間に合いません ) 」のように、 because の後を肯定文にすれば、何となく格好はつきます。


このように、「 not 」は自分の評価を自らおとしめる可能性がある、恐るべき表現なのです。「 not 」はできるだけ使わない、仮に使っても、その理由は肯定文で … ということを、常に心がける必要があるということです。


以上、 2 回にわたって、少しハイレベルなビジネス英語の話をしました。これらの内容は、英語のスキルをいうよりは、「ビジネスのやり方・考え方そのものともいえます。逆にいうと、たとえ英語がそれほど流暢ではなくても、ここでお話したことのツボを押さえることができれば、外資でやっていくことができるということなのかもしれません。みなさんも、是非参考にしてみてください !


本年のコラムは、これにて終了です。みなさん、よいお年を ! 来年も引き続き、『タカシの外資系物語』 をよろしくお願いいたします。 

Merry Christmas & Happy New Year! Takashi Nara

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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