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タカシの外資系物語

ディスクローズしすぎ ?2005.08.23

「我々は間違っていた」発言の波紋

去る 8 月 9 日のこと、米 NASA が打ち上げたスペースシャトル・ディスカバリー号が、約 2 週間の飛行を終えて、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に無事着陸しました。しかし打ち上げ直後から、機体の損傷が多数見つかって、帰還の安全が議論の的になるなど、緊迫した宇宙飛行であったことはみなさんもご存知の通りです。


機体が損傷していた件について、 NASA のパーソンズ計画部長は会見で、「間違いをおかした時には、素直に認めなくてはいけない。我々は間違っていた」という声明を発表しました。しかし、その時点で、スペースシャトルはまだ宇宙にいたのです。「間違っていた ・・・ 非常に申し訳ない ・・・ あとは幸運を祈る、 Good Luck ! 」 と言われたところで、野口さんを含めた飛行士のみなさんにはどうすることもできません。結局は、野口さん・ロビンソン両飛行士がシャトルの修復作業を実施したわけですが、実際のところ、この修復作業が機体損傷のリスクを大幅に軽減したわけではなく、 NASA の面目を保つためのパフォーマンスに過ぎなかったことは否定できないでしょう。


私は、シャトルの機体が損傷したことについて、事前の整備が悪いとか、計画が甘いとか、そんなことを言いたいのではありません。確かに整備は 100 % 完璧に近いことが理想であることはいうまでもありませんが、そもそも人間がやることに「絶対」なんてことはありえないわけで、プロジェクトに失敗はつきものです。また本件は「宇宙飛行」のプロジェクトなわけで、伊豆や箱根に旅行をしているのとは違います。どんなに準備をしていたとしても、大気圏突入時にリスクがあることぐらいは、野口さんほか飛行士のみなさんも認識していたはずです。だから、地上で大騒ぎをしていた我々の気持ちとは裏腹に、野口さんの本心としては、「宇宙に行ってるんですから、これぐらいのリスクは想定内ですよ ! 」という感じではないかと思います。


今回の件で私が問題に感じたのは、まだシャトルが宇宙にいる段階で、 NASA が「間違っていた ・・・ 」と発表したことについてです。こんな発表をして、一体だれにどんな得があるのでしょうか。もしも、何か事故が起こったときに、「だから間違ったって、事前に言ってたじゃん ! 」とでも逆ギレするつもりだったんでしょうか。結局のところ、この発表は、何もできない一般大衆に、いたずらに不安心理を与えた以外の何ものでもなかったように思います。

話す外資、隠す日系

「起こったことを包み隠さずに、何でも正直に話すこと」 一般には、「ディスクロージャー ( 情報開示 )」と言われ、欧米を中心に、優れた企業は例外なくディスクロージャーに積極的に取り組んでいます。従来、日系企業はディスクロージャーが進んでおらず、会計情報や品質情報の隠匿によって、多くの不祥事が起こっているのは周知の事実。最近では、日系企業においても、積極的なディスクローズを中心にした企業ガバナンス ( 企業統治;会社全体をどのように管理するかということ ) を一番の目標に掲げる企業も多くなってきました。

 


これまでの日系企業というのは、「よくない情報」をことごとく隠し続けてきました。なぜ隠してきたかというと、当事者たちが「そのうち景気が回復してよくなるだろう、何事もなく笑える日が来るだろう ・・・ 」と考えたからです。もちろん、人命にかかわるような品質情報を隠すことは、そもそもやってはいけないことですが、それ以外の会計情報などについては、当事者の「何とかしたい ・・・ 」という意識が情報隠しにつながっているケースが多いと思います。「今発表したら会社を潰すことになる ・・・ 隠し通せるところまで、何とか隠してみよう ・・・ 」粉飾決算で逮捕された会社幹部の多くは、このように考えていたように思います。実際に、銀行の不良債権問題がなかなか片付かなかった大きな理由は、銀行幹部の多くが、「情報を隠匿してごまかす能力」が高かったからこそ起こった事象です。そのことが正しい行動だとは全く思いませんが、私も日系企業に勤めていた身としては、彼らの気持ちはわからんでもありません。その能力を、もっと前向きなことに使えばよかったのでしょうが、当事者の立場ではそういう考えに及ばなかったのでしょう。

何でも話せばいいのか ?

では、欧米流の「何でもディスクローズ」という姿勢が正しいかというと、私は一概にそうとも思いません。もちろん、人命にかかわるような内容だとか、商法で規定されているような会計情報の開示義務において、真実を述べることは当たり前のことです。しかし、ディスクローズしても仕方のないことを、タイミングも考えずに言いまくることについては賛成できない面もあります。何か起こったらすぐにディスクローズするのではなく、その影響を考えて、適切なタイミングで発表することを検討してもいいのではないかと思うのです。


冒頭のシャトルの件に戻ると、シャトルがまだ宇宙にいる段階で、あれほど大々的に「間違い」を発表することはなかったのではないでしょうか。発表の段階では、シャトルを放棄して、ロシア宇宙船「ソユーズ」で地球に帰還する案もあったようですが、アメリカ当局には、ロシアに頭を下げてソユーズを借りる気は毛頭なかったとのこと。それなら、あの「我々は間違っていた」発言は、担当者の責任逃れでしかないように思います。


外資系企業に勤めていると、末端の業務にまで、「ディスクローズ」の文化が染み渡っていることに気付きます。確かに、社員が不正を犯さずに仕事を進める上では、非常に効果を上げているものの、一方では、単なる「言い訳・責任逃れ」のためにやっているような部分もあるのです。

言い訳ではないディスクロージャー

例えば、セールスの進捗管理情報などについて入れる際でも、「提案時の人数が不足し、提案書が不十分」とか、「競合先が日本的な接待攻勢を仕掛けて、顧客に取り入っている」とか、そんな言い訳を並べることに注力しているように思えます。もちろん担当者としては、事前にできる限りの言い訳を並べておけば、失敗したときに説明がしやすくなります。しかし、ビジネスで重要なことは、事前に言い訳を考えて、失敗したときの「保険」をかけておくことではなく、どのような困難があろうとも仕事を取ろうと努力することにあるに決まっています。言い訳を考える暇があったら、今できる最善の策を講じることを優先した方がいいに決まっているのです。


このように、外資の「ディスクローズ」には、「本来、開示しなければならない情報」と「言い訳」が混在しています。何でもかんでも、開示すればいいってなもんでもないでしょう。逆に、従来の日系企業は、どちらの情報も開示してこなかったわけです。どちらのアクションも、かなり極端なわけで、開示すべき情報は開示する一方で、言い訳せずに、自分で知恵を絞って、リスクを冒すべきところでは、リスクを取る必要があるように思います。


何も言わない方がいいのか、すべて言う方がいいのか前者 ( 従来の日系企業 ) よりは、後者 ( 外資系 ) の方がいいのでしょうが、「ディスクローズしすぎ ・・・ 」ってのも、どうなんでしょうか。ま、私の場合は、英語が不得手なために、本来伝えるべき情報を伝えきれずに、よく怒られているのですがね ・・・ ( トホホ ・・・ ) みなさんは、どう思われますかね ?

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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