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タカシの外資系物語

楽しい「残業」 ?2005.03.22

風呂敷残業の 2 人

今日は連休前の金曜日。終電近い電車内で、まだ 20 代とおぼしき会社員 2 人組が、大荷物を抱えて何やらブツブツ文句を言っています。


「んったく、よー。なんで週末まで家で仕事しなきゃなんないわけ ? 勘弁してくれよな ・・・・・・ 」


「おまけに、家で作業やるから残業代ももらえないしね ・・・・・・」


「そーだよ、訴えてやる ! 」


「ま、その気持ちもわからんでもないけど ・・・・・・ でもさ、企画書を締め切りまでに上げられなかった俺たちも悪いんだからさ ・・・・・・ 」


なーるほど、その大荷物は週末に家で仕事するのに必要な資料のようです。つまり、一昔前でいうところの「風呂敷残業」というわけですね。え ? 風呂敷残業って何だって ? 確かに、最近ではめっきり聞かなくなった言葉です。「風呂敷残業」というのは、仕事の書類を風呂敷に包んで持ち帰って、自宅で残業することを指します。 5 年ぐらい前なら、データをフロッピーに入れて持ち帰って、自宅で残業する「フロッピー残業」、最近では自分のプライベートメールに資料を送って自宅で残業する「 E メール残業」なんて言葉もあるようです。時代が移るにつれて、言葉は変わったものの、自宅で残業することには変わりありません。できればどんな形式であれ、自宅には仕事を持ち帰りたくないものです。


さて、外資系企業に勤めていると、「残業はあるんですか ? 残業した場合、残業代って出るんですか ? 」という質問をよく受けます。かく言う私も、外資系企業に初めて転職したとき、その会社の人事部の人に同じような質問をしたような気がします。でも、 2 回目の転職では、このような質問はしませんでした。というか、いつの間にか、日系企業でいうところの「残業」という概念が頭の中からなくなっていたために、質問そのものが思いつかなかったという方が近いかもしれません。これは一体、どういうことなのでしょうか ?

残業するのは、誰のせい ?

当たり前のことですが、外資系企業にだって「残業」はあります。その証拠に、私だって終電に近い電車で帰宅しているわけで、この日だって夜の 11 時過ぎまで働いていました。また、風呂敷には包んでいないものの、資料を持ち帰って、週末に自宅で仕事もしています ( PC を持ち歩いていますので、データはその中です。「ハードディスク残業」 ってな感じでしょうかね )。


しかし、私が上記の若者と違うところは、「( 会社を ) 訴えてやる ! 」とは思っていないところです。会社に遅くまで残って残業しているのも、週末に自宅で仕事をしているのも、会社が悪いと言うよりは自分の仕事のやり方・要領が悪いのだと思っています ( 半ば、諦めの境地 )。上の若者が会話の最後で言っていますが、「企画書を締め切りまでに上げられなかった俺も悪いんだからさ ・・・・・・ 」に近い心境で残業をしているイメージです。


外資系企業には、「より多くの業績を上げたのだから、給料を上げてくれ」と言う人はたくさんいますが、「より多くの時間働いたのだから、給料を上げてくれ」という人は一人もいません。実は、この当たり前のことが、日系企業では勘違いされている場合があるのです。

 

仕事における 2 つの「質」

そもそも、仕事には「質」という観点で、以下の 2 種類が存在します。


【仕事 A 】 ・・・ 働いた時間にほぼ比例して成果が上がるもの。工場の組み立て作業や多くのパート労働などが当てはまる。


【仕事 B 】 ・・・ 成果が働いた時間に比例しないもの。営業活動や企画業務などが当てはまる。


仕事 A というのは、いわゆる「ブルーカラー」であり、仕事 B は「ホワイトカラー」なのですが、一人の労働者の仕事というのは、このような「襟 ( カラー )」の色だけでスパッと 2 分割できるものではありません。どんな仕事にも A の要素と B の要素は混在しているわけで、だれでも 2 種類の質の仕事をしているのです ( 確かに、仕事 B の割合が大きい人のほうが、より給料が高いのは事実ですが )。


さて、社員が残業代を「時間に応じて」請求できるのはどちらの分野かと言うと、これは「仕事 A 」の方です。このような質の仕事において、サービス残業や未払い残業が発生した場合、企業は社員に残業代を支払わねばなりません。


一方で、「仕事 B 」で残業が発生した場合、残業代はどうなるのでしょうか。仕事 B というのは、長時間働いたからといって、それに伴った成果が出るかどうかわからない分野です。そういう仕事で残業が発生してしまう理由は、以下のうちのいずれかだと思います。


( 1 ) 本人の能力、スキルが低い 

( 2 ) 指示を出した上司の見込みが甘い ( 締め切り設定が甘い )


( 1 ) の場合は自分が悪いのですから、無償で残業するのは当然です。「訴えてやる ! 」も何も、自分の能力の問題なのですから、自分で何とかするしかありません。( 2 ) の場合は、締め切りに間に合わずに、深夜や週末に残業が発生することになったことを上司に訴え、締め切りを再設定することで、残業を回避すればいいのです。


「そんな合理的に考えるのは無理でっしゃろ ? 」と思われるかもしれません。私もそう思います。残業になりそうだから、仕事の締め切りを再設定するなんてこと、現実的にできるはずはありません。なので、実際には諦めて残業する ( = ( 1 )) しかないのです。


しかし、これが外資の考え方なのです。外資では、仕事 A で残業が出た場合には、残業代を支払ってくれますが、仕事 B の残業では基本的に残業代は出ません。多くの人の残業は、仕事 B がほとんどでしょうから、要するに、外資ではほとんどの人の残業代は出ないということになります。

会社と社員の「ギブ & テイク」

一方で、私が外資系を魅力的だと感じるのは、「成果を上げさえすれば、どこで仕事をしても構わない」という考え方です。日系企業では、成果を上げていようがいまいが、とりあえず朝早くから会社に行かなければなりません。しかし、外資なら「昨日遅くまで提案書を書いていたので、今日は昼から行きます」なんてのが通用します。締め切りまでに仕事が上がらなかったら残業しなければならない一方で、早く仕上がれば、ある程度は自分の思うようにスケジュールを組ませてもらえるわけで、このような会社と社員との「ギブ & テイク」が徹底しているために、残業が多いというような文句が出ないような気がします。


本当にもらうべき残業代 ( 私の定義では、「仕事 A 」における残業 ) がもらえないのならば、その場合は企業に請求すべきだと思います。しかし、残業代に関して文句を言っている人の多くは、「仕事 B 」において、自分の能力不足のせいで仕事がズルズルと長引いている人なのではないかと思います。そういう人は、外資に転職したところで残業はなくなりません ( むしろ増えるかも ! )。自分で残業しないような仕事のやり方を見つけるしか、残業をなくす手段はないのです。


「評価の問題だよ ・・・・・・ 」などと、企業における成果主義評価の体系が確立されるのを待っていても仕方ありません。評価体系がどうであろうが、短い時間で成果を上げたヤツが勝つのは間違いないわけで、それに応じた仕事の仕方をやるしかないのですから。


さてさて、来週の金曜日、また同じ電車であの若者たちに会えるでしょうかね ・・・・・・ おっと、忘れていました。来週の金曜日の夜は、うちの奥さんと食事をする約束です。残った仕事は、週末にでも片付けるつもりです。残業が多くても、それなりに生活をエンジョイすることは可能なんだと思いますよ、では !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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