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タカシの外資系物語

SE とコンサル ( その 2 )2004.10.14

SEとコンサルを定義する

前回は、SEとコンサルの間に存在する典型的な「確執」についてお話しました。


そもそも「コンサルタント」というのは、顧客である企業に対して、どのような戦略を取るべきか、どの方向に向かうべきかを指南する存在(であるはず)です。ですから、場合によっては「その施策は間違っている。そんなことをしてはいけない !」という結論を導くこともありえます。例えば、ある企業が、予算数十億円といった大規模なシステム開発プロジェクトを計画していたとしても、コンサル結果としてそれを否定する可能性もあるわけです。


一方、SE やプログラマは、システムを開発することを前提として成り立っている職種です。何らかの情報システムを開発することが決定した後で、そのシステムを具体的に構築する作業を担当するわけです。つまりコンサルのように、システム開発そのものの実施可否を議論することは期待されていません。


身近な例として、野球のチームを想像してください。コンサルの役割は、監督やコーチの補佐役です。だれを先発させるか、打順はどうするか、どこでピッチャーを変えるか、このような戦略・戦術を練るお手伝いをするのがコンサルの仕事です。一方、SE やプログラマは実際にプレーする選手にあたります。ですから、個人的には強攻策に出たくても、バントのサインが出ればバントをせざるをえません。

「SE・コンサル問題」の本質

では、SE とコンサル間の確執においては、何が問題の本質なのでしょうか。それは、以下の 2 点に集約できます。


(1)コンサルがシステムのことを知らない

野球で言えば、監督やコーチの補佐役が野球を全く知らない状況だと思ってください。私の同僚にも、「システム開発のことを知らなくても、コンサルはできる」という輩がいますが、はっきり言ってそれは無理です。システム開発を知らなければ、コンサルはできません !(断言 !) 確かに、野球の監督やコーチの中には、選手としては無名でパッとしなかった人も結構います。サッカーのワールドカップで日本代表の指揮を執ったトルシエ監督だって、選手時代はイマイチだったようです。しかし、しかしですよ、彼らは名選手ではなかったかもしれませんが、野球やサッカーのことは、十分すぎるぐらい知っているのです。一方で、コンサルなのにシステム開発のことを知らない人は、IT に関してほとんど何も知らないのです。これでは、IT 戦略について、チーム(= 顧客先の企業)をよりよい方向に導くことなどできるはずがありません。


(2) コンサルの方が SE・プログラマよりも給与水準が高い

確かに野球やサッカーにおいても、ごく平凡な選手よりは、監督やコーチの方が給料をたくさんもらっているのかもしれません。しかし野球の場合、スター選手については監督やコーチの何十倍もの給料をもらっています。一方で、IT 業界の場合には、「スーパー SE」と呼ばれるような、非常に優れた SE やプログラマであっても、コンサルより高い給料をもらっている例はほとんどありません。


加えて、(1)で述べたように、コンサルの中にはシステムを理解していない人が多数いるわけですから、SE・プログラマが「ふざけんなよ !」と怒るのも、仕方がないと思います。

世の中コンサルだらけ

以上のような問題が起こった一番の理由は、「世の中にコンサルタントが多すぎる」ということです。現在の IT 業界は、いわば「猫も杓子もコンサルタント」という状況で、マーケットの需要をはるかに上回るコンサルが存在しています。本来なら、「コンサル - SE - プログラマ」の順にピラミッド型の人員構成になるはずが、現状では、SE とほぼ同数程度のコンサルが存在します。人員構成が大きく歪んでいるにもかかわらず、給料だけは上から順番に差を付けているものですから、SE とプログラマがその割を食っているわけです。ですから、人員構成に合わせた適正な給与水準に是正するためには、コンサルの給料をめちゃくちゃに引き下げ、その分を SE とプログラマに回すべきなのです。

すべては外資のせい ?

そして、世の中を「コンサル供給過多」状態に陥れた真犯人は、何を隠そう、外資系コンサルティング会社に他なりません。


外資系コンサルティング会社そのものの歴史は古いのですが、めざましい発展を遂げたのは、ここ 10年ぐらいといっていいでしょう。そもそもは、経営者に対して戦略立案のサポートをするような、いわゆる「経営コンサルティング」を売り物にしていました。しかし、経営者の指南役だけでは、儲からんわけです。なぜなら、そのような案件では、多くのコンサルタントを必要としないからです。コンサル会社としては、より多くのコンサルタントをプロジェクトに突っ込んだ方が儲かるわけですから、より大規模な案件を取りたいと考えます。


では、コンサル会社にとって、大規模案件とは何か ? それこそ「システム開発プロジェクト」なのです。システム開発プロジェクトは、通常の経営コンサル案件に比べて、数十倍、数百倍の費用がかかります。コンサル会社にとっては、システム開発ほどおいしい案件はありません。 
  
システム開発案件が多くなるにつれ、そこに関与するコンサル、いわゆる「IT コンサルタント」を増やす必要がありました。今でこそ、外資コンサル会社に新卒で入社する人が増えましたが、当時は中途採用がほとんどでした。外資コンサル会社としては、一流企業を辞めた人材を中心に、中途採用を大幅に増やしていきました。


一方で、外資コンサルに中途入社する人たちは、それほど IT やシステム開発に詳しくありませんでした。彼ら(彼女ら)は、元いた企業での業務経験は豊富でしたが、それをシステム化するような作業は、ほとんど経験したことがありません。コンサル会社への採用時には、「システム開発の経験なんて、なくても大丈夫 ! あなたは業務経験が豊富だから OK !」みたいな感じで採用されていたものですから、いざ転職してみてびっくり仰天 ! 案件のほとんどは、システム開発プロジェクトだったわけですから。


「IT コンサルタント」としてプロジェクトにアサインされたのはいいのですが、システムは全くわからない。その上、たとえシステム開発をすべきではないという分析結果が出たとしても、それをクライアントに伝えることもできません。コンサル会社としては、開発プロジェクトが獲得できなければ儲からないわけですから、そんな結果を伝えさせるわけにはいかないわけです。かくして、「コンサルタントとはいうものの、本来のコンサルティングはできず、いざシステム開発になってもほとんど使えない人材」 = 「IT コンサルタント」が業界に跋扈する結果となったわけです。

コンサルとして生き残るために

私は、現状の「コンサル供給過多」状態は、近いうちに収束されていくと思います。すでに、あるコンサル会社は合併し、あるコンサル会社は SI ベンダー(SI とは System Integration のこと。システム構築を手がけているコンピュータ・メーカーなどを指す)に吸収されてしまいました。この動きが進めば、実力のあるコンサルタントのみがコンサルタントとして生き残り、それ以外の大半は、コンサルタントとして失格の烙印を押され、業界を去っていくことになります。また、力のある SE・プログラマからも、多くのコンサルタントが生まれてくると思われます。


実力がないにもかかわらず「IT コンサルタント」と称している多くの人たちに求められるのは、それこそ死に物狂いでシステム開発や IT を勉強することでしょう。必要なら、SE の見習いとして、SE の仕事を経験することが必要かもしれません。それによって現状の給与水準が下がってしまうこともあるでしょうが、コンサルタントとして生き残るためには、甘んじて受け入れる覚悟が必要です。 
  
私自身、このことを大きな戒めとして、精一杯頑張らねばなりません。胸を張って、次のように自己紹介するために。


「はじめまして ! IT コンサルタントのタカシです !」

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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