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タカシの外資系物語

ブルな気持ちで !2004.09.16

ゴルゴ登場 !

我が家では、今年の 6 月から犬を飼い始めました。フレンチ・ブルドッグ ( オス ) で、名前は「GORGO ( ゴルゴ )」。「ゴルゴ 13 から取ったの ?」とよく聞かれるのですが、そんなにカッコいいもんではありません。うちの奥さんと一緒に、ゴルゴンゾーラのパスタを食べているときに、なんとなく響きがいいので決めました ( 「ゴルゴン」でもよかったのですが、なんか防虫剤みたいなのでやめました …… )


実は私、これまで犬を飼った経験がなかったのです。というか、犬を抱いたことも、さわったことすらほとんどありませんでした。「オバケの Q 太郎」の Q ちゃんほどではないですが、何となく犬との接触を避けていたように思います ( ちなみに、Q ちゃんは犬が大の苦手です )。


実際にゴルゴを飼うまでは、「犬なんてどれでも同じようなもんだろう ……」と考えていたのですが、犬でも種類によってかなり違うことがわかりました。特に、日本犬と比較をするとよくわかります。柴犬などの日本犬は「キリッ !」としていて、高倉健みたいに颯爽と風を切って歩いているのですが、うちのゴルゴはいつも落ち着きなく「ブヒブヒブヒ ……」( ブタさんか、おまえは …… )。


ほかの犬とすれ違うときには、一人 ( 一匹 ? ) で興奮して大暴れし、のた打ち回っています。ほとんどの犬がゴルゴの様子を見て、思わず後ずさりするぐらいですから、いったい何が起こったんだ ! 宇宙人でも攻めてきたのか ! というぐらいの迫力です。


ゴルゴ 「ブヒブヒブヒーー ! ブヒ ! ブヒブヒブヒーーーーーー !( 何かわからんが、もー、たまらーーん ! いぇい、いぇーーーーーい ! 頭突きで突進じゃーーーーー ! ドーーン ! )」


すれ違う犬 「( な、なんじゃこいつ …… こわっ ! …… 近寄らんようにしとこう …… 一応、形だけでも挨拶しとくか …… ) ワ、ワン ……」


ゴルゴにしてみれば、「一緒に遊ぼうよ !」というお誘いのつもりなのですが、あまりにもハイテンションなために、多くの犬は引いてしまうようです。


また、ゴルゴの毛色は「バイド」という種類でして、白地に黒のブチが入っています。パッと見た目は「牛」です。なので、イメージ的には、かなり小型の「暴れ牛」が道端で暴れまわっていると思っていただければ間違いないと思います。

ブルとベア

さて、「暴れ牛」として活躍中 ( ? ) のフレンチブル、ゴルゴ。実は私、銀行員時代に「ブル」という言葉を、仕事で頻繁に使っていました。「ブル ( Bull ) 」というのは、株式や為替などのマーケットの世界では馴染み深い言葉なのです。


マーケットの世界では、マーケット ( 相場 ) が上昇する ( つまり、値段が上がる ) と考えることを「ブル ( Bull ) 」、マーケットが下落すると考えることを「ベア ( Bear ) 」と言います。「ブル ( Bull ) 」 = 雄牛は角を下から上に突き上げることから、マーケットに関して強気な意見を持つことを「ブル」と呼ぶようになりました。一方、「ベア ( Bear ) 」は「熊」のことで、熊は腕を上から下に振り下ろすことから、マーケットに関して弱気な意見を持つことを「ベア」と呼んでいます。


世界の金融の中心である NY のウォールストリートには、巨大な「ブル ( 雄牛 ) 」の彫像があります。そこは観光名所になっていて、その雄牛の股間 (!) をさわると、「相場で負けない = 勝負に勝つ」と言われています。私も NY に出張した際に立ち寄ったのですが、あまりに観光客が多く、雄牛はさわれずじまいでした ( だから、今でも勝負運が弱いのかも、トホホ …… )。

相場を操る方法

ここで重要なのは、「ブル」「ベア」というのは、実際に相場が動いている状態ではなく、今後どのように動くかということについての、参加者の「意見・考え方」を示しているという点です。「ブルな相場」というのは、みんなが強気で必ず値上がりすると信じている相場のことを指します。


例えば、バブル期の日本の株式や不動産の相場などは、まさに「超ブル相場」だったといえます。買えば必ず値上がりすると、みんなが信じていると、相場は驚異的なまでに上昇を続けます。逆に、ベア相場というのは、価格が下落するとみんなが一様に考えている状況のことです。1987 年に起こった株式市場の大暴落「ブラック・マンデー」などは、「ベア相場」の典型です。


では、ブルがベアになる瞬間(またはその逆)には、いったい何が起こるのでしょうか。イメージとしてはこんな感じだと思います。まず、相場が上昇を続け、みんなが浮かれているときに、「いや、ちょっと待てよ。そろそろ下がるんじゃないか …… 」と考える人が出てきます。


ブルくん 「いぇーい ! 楽しいなったら、うれしいな、っと ! さぁー、みんなで飲めや歌えの大騒ぎだぁーー ! 相場よ、もっともっと上がれーー ! イヤッホーー ! ラリホー !」


ベアくん 「ブルくん、ちょっと落ち着いて聞きなさいよ。お祭り騒ぎもそろそろおしまいじゃないかね。こんな上昇相場はいつまでも続くもんじゃないし ……」


このときに、ブルくんが「うるせぇな !」とベアくんの弱気な意見を呑み込んでしまえば、そのままブル相場が継続します。逆に、ベアくんの意見に同調する者が現れて、「そう言われてみれば、そろそろ下がるかも ……」とみんなが考え出せば、相場は反転して下落を始めます。


では、一体どこのだれが、「そろそろ下がる ( 上がる ) んじゃない ?」と言い出すのでしょうか。相場の世界で有名なのは、「ヘッジファンド」と呼ばれるグループです。ヘッジファンドは世界中の資産家や投資家からお金を集め、それをマーケットで運用して儲けています。


相場というのは、上昇している最中に買ったり、下落しているときに売っても、実はそれほど儲かりません。一番おいしいのは、上昇が止まる頂点で売り、下落が止まる谷底で買うことです。つまり、上の例で言えば、お祭り騒ぎのブルくんを説得して、みんなをベアな気持ちにさせ、自分はその直前に売っておけばいいということになります。


ヘッジファンドの手口のほとんどは、ブル相場をベアに転換させる ( またはその逆 ) に他なりません。彼らは豊富な資金量にモノを言わせてマーケットに乗り込んでくるのですが、その方法は見事というほかありません。「そろそろ下がるよー」( ブルからベアへ )、「もっと買うべきじゃない ?」( ベアからブルへ ) という囁きに乗せられて、マーケットが彼らの意のままに動くのです。


私も銀行でディーラーをやっていたときには、ヘッジファンドに幾度となく泣かされました…… ( もちろん、ヘッジファンドがいつも相場に勝つわけではありません。特に、外国為替の相場においては、政変や戦争が起こった場合には、ヘッジファンドの「意見」など全く無視して相場が動くこともあります )。

新しいトレンドを生み出す外資の戦略

ヘッジファンドが相場で用いる手口は、ビジネス一般の世界にも当てはまります。今までだれも考えつかなかった商品やサービスを市場に投入することで、一般大衆の目を違う方向に向けることができれば、同業他社よりも利幅の厚いビジネスが展開できます。


例えば、我が家ではゴルゴを飼い始めたのを機に、掃除機を外国製のやつに買い換えました。「直接サイクロン方式」と呼ばれるイギリス製のその掃除機、7 万円と高額ながら、爆発的な勢いで売れており、在庫切れの状態が続いているようです。「ほとんどのホコリを吸い出す高性能なのに、価格がそれなりに安い」という戦略を進めてきた日系メーカーと、「完全にすべてのホコリを吸い出す “超” 高性能だから、価格が高い」という極端な戦略で勝負に出たイギリス外資系メーカーの構図。外資がうまく日本市場に入り込んだ好事例でしょう。


上記の日系メーカーの戦略では、トップかそれに次ぐ企業ぐらいしか成功しないといわれています。つまり、まわりと同じことをしていたのでは、結局のところ、自力に勝る企業しか生き残れないのです。日本の自動車業界などは、その典型ではないでしょうか。業界で生き残るためには、ヘッジファンドや外資の掃除機メーカーがとったような、大衆の目先を変える戦略、新しいトレンドを作る戦略が必要だということです。 
  
みなさんが勤める会社が、同業他社と同じことをしていて、かつ業界トップクラスのシェアがないようなら、用心、用心。数年後には、その業界には日系のトップ企業と外資系しか残っていないかもしれませんよ。


え ? なんかブルー ( Blue = 憂鬱 ) な気分になってきた、どうしてくれるんだ、って ? ま、大丈夫ですよ、大丈夫。気分を楽にして頑張って行きましょう ! うちのゴルゴみたいに、ブル( Bull = 上昇志向 ) な気分で、ね ?

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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