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タカシの外資系物語

外資系と CSR ( その 2 )2004.08.03

前回述べたように、最近では日系企業においても、CSR の積極的な取り組みが見られるようになってきました。しかし、これだけ積極的に取り組むようになってきた一方で、その成果となると、具体的にピンとこないというのが現実ではないでしょうか。これは一体、どうしてなのでしょう ?


日系企業の CSR がパッとしない一番の理由は、取り組みの範囲が偏っているからです。CSR には、「1. 経済的側面」「2. 社会的側面」「3. 環境的側面」の 3 つがある(これらを、トリプルボトムラインといいます。前回コラム参照)のですが、日本企業の取り組みの大半は「1」「3」に集中しすぎており、「2」があまりにも弱いのです。


例えば、「1」は収益を上げるということです。普通の企業は収益獲得を第一の目標としているはずですから、この部分はすべての企業が力を入れています。


次に「3」ですが、これも活発に取り組まれています。これは余談になりますが、知り合いの建設会社の社長によると、最近では ISO14001 を取得していないと、公共団体が発注する工事の入札に参加させてもらえないとのこと。一方で、ISO 取得のためには数百万円かかるらしく、取得費用が捻出できない中小企業は、高い技術力を持っているにもかかわらず、工事に参加できないでいるようです。その社長いわく、「ISO が大企業の寡占化を進めている」というのは、まさにその通りかもしれません。ISO 取得を含め、自社が行っている環境経営をマーケットにアピールするためには、何よりもまずお金がかかります。逆に言えば、お金さえかければ、実際には大したことをしていなくても、それなりに取り組んでいるように見せかけることが可能なわけです。


日系企業の CSR の問題は、まさにこの部分にあると思います。つまり、お金をかければそれなりに格好がつく分野にしか、力を入れていないのです。また、取り組み内容がショボいにもかかわらず、広告宣伝の力でそれなりに取り組んでいるかのように見せているため、マーケットもだまされてしまうケースが多いのだと思います。


日系企業が CSR の中でもとりわけ環境分野にだけ力を入れ、過剰なまでの対外アピール(広告宣伝)をするのには理由があります。それは、「2. 社会的側面」への取り組みの弱さをカモフラージュしているからなのです。環境経営ブームに便乗することで、世間の目をそらしているのです。しかし、これが付け焼刃の対応であることは明らかです。なぜなら、日系企業の CSR への取り組みはパッとしないことが、私を含め、多くの人が認識し始めているからです。今こそ、日系企業は社会的側面への取り組みを必要とされているのではないでしょうか。


では、CSR における社会的側面とは何なのでしょう。一般には、社会貢献活動や働き甲斐のある職場を作ることなどがこれにあたります。企業にとって一番取り組みやすいのは、ボランティア活動や芸術活動への寄付などです。なぜ取り組みやすいかというと、お金を出せば済むからです。つまり、ISO 取得と同じ論理が働いているわけです。


一方、外資系企業における CSR の考え方は、日系企業とはかなり異なります。もちろん、外資系企業においても環境経営やボランティア活動、寄付などは実施されています。しかしそれらの活動は、「当たり前のこと」として考えられていて、そのことを声高にアピールするような風潮はありません。


むしろ外資系企業が力を入れているのは、社会的側面のうちの「働き甲斐のある職場を作る」という部分です。では、働き甲斐のある職場とは何か ? これについても、外資系企業は具体的かつ明確です。


以下は、私が勤めている外資系企業が、「働き甲斐のある職場の実現」ということで、具体的に説明している内容です。


(1) 女性の登用 - わが社の管理職の 3 割は女性です。また、専務クラスにも女性がいます。


(2) SOHO のすすめ - わが社では、基本的にはどこで仕事をしてもいいことになっています。もちろん、SOHO も可能(ま、実際には完全に SOHO が実現している社員はいないのですが、会社がそのためのインフラを提供してくれていることは事実です)。


(3) プロフェッショナルとしての評価 - わが社の評価体系は、ハイリスク・ハイリターンからローリスク・ローリターンまでの 3 段階のうち、社員が希望するものを選択できるようになっています。また、評価のほとんどは数値化されており、情実人事が入り込む余地はほとんどありません。

 

(4) 障害者の積極活用 - わが社では、バックオフィス部門を中心に、障害を持つ方を積極的に雇用しています。同時に、仕事を通じて PC スキル等を身につけることによって、他の企業でも活躍できる人材を育成しています。


などなど……


もちろんわが社でも ISO を取得していますし、ボランティアや寄付も行っています。しかし、これらの活動よりも、「働き甲斐のある職場を作る」活動の方に、より力を入れています。つまり、わが社の CSR の優先順位としては、まず社員が一番で、その次に外部が来るのです。その理由は簡単でして、社員に手厚くすることで気持ちよく働いてもらえば収益も上がる、収益が上がれば対外的な貢献もできる、対外的な貢献をすることで社員が会社に誇りを持ち、また頑張る……このような、「CSR サイクル」を回しているのです。 
  
このように、わが社では CSR を経営管理の仕組みとして活用しています。その結果、女性の登用や働きやすいオフィス環境がマスコミに取り上げられたりして、CSR への取り組みが活発であるという評価を得ています。


一方で、日系企業の CSR は、経営とは離れた部分で進められているような気がします。みんなが環境に取り組んでいるから ISO を取得しよう、ライバル企業もやっているからボランティアにも取り組もう…… そこには経営としてのポリシーが感じられません。他社と同じようにやっておけば、文句を言われることはないだろうという、「横並び」的な考え以外の何ものでもありません。


また、日系企業においては、ISO やボランティアなどの投資に関しては、責任が明確ではありません。それが企業のためになろうがなるまいが、だれも責任を追及されないのです。一方で、外資系企業では、たとえそれが CSR に関する活動であっても、リターンのなかった投資に対しては、責任を追及されます。そういうこともあり、経営者は対外的なボランティアよりも、自社の内部への投資、例えば働き甲斐のある職場作りにお金をかけるのです。


いずれにしても、CSR に関しては、その本質を理解し、理にかなった投資をしている外資系企業の方が、より効果を上げていることは間違いなさそうです。日系企業も表面的に格好をつけるのはそろそろやめて、自社の社員のためにお金を使うべきではないでしょうか。CSR とは、まず自社の社員に対してお金をかけて、満足させてやること。そのことが、対外的な企業責任を果たすことにもつながることになるのですから。


みなさんも、自分の会社が取り組んでいる CSR 施策を点検してみてはいかがでしょうかね。社員のためにお金を使っていないようなら、要注意ですよ !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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