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タカシの外資系物語

2007 年問題って何 ?2004.07.20

最近、「2007 年問題」というのが話題になっています。西暦 2007 年というのは、1947(昭和 22)年~1949(昭和 24)年の第 1 次ベビーブームに生まれた、いわゆる「団塊の世代」と言われる人たちが、大量に定年退職する年にあたります。その数は実に 300 万人とも言われています。


単純に考えて 300 万人もの雇用者が会社からいなくなってしまうわけですから、まず労働力不足が懸念されます。これまでの日本の労働市場は、マクロ的には、定年退職者が抜けた穴を新卒採用でまかなってきました。加えて、日本経済が停滞していたここ数年間は、企業はもっぱら人減らしの「リストラ」を進めていたわけですから、仮に定年退職者の数が新卒者より多かったとしても、結果としては問題が生じなかったわけです。


しかし、「2007 年問題」の本質は、量よりは質の問題です。最も影響を受けるのは IT 業界だと言われています。それは、なぜなのでしょうか。


日本の企業が、自社の基幹業務を人手からシステムに置き換え始めたのは、ちょうど 30 年ぐらい前のこと。当時は現在ほど、各コンピュータ・ベンダー(メーカー)にシステム構築力はなく、ベンダーは単にハードウェアを販売、供給するだけの存在でした。システムの要件定義からプログラミングという実際のシステム構築は、ユーザーである企業自身が実施していました。つまり、企業は自社の基幹システムを設計・開発・保守・運用できる人材を、自社内に抱え込んでいたわけです。そのことにより、IT 要員のスキルを自社だけのノウハウとして外部から遮断することができる点は大きなメリットでした。優秀なシステム・エンジニアを抱える企業は、他社よりも優れたシステムを構築することが可能なわけで、そのことは他社との差別化に直結していたからです。


一方で、IT の発達とともに、システムのオープン化の波が押し寄せました。ERP パッケージに代表されるように、企業の基幹業務の一部ノウハウは一般に公開され、それなりのお金を出しさえすれば、すべての企業がそのノウハウを活用できるようになっていったのです。


つまり、企業にコンピュータが導入された当時は、自社にノウハウをため込むしかなかったものが、IT のオープン化とともに社外のノウハウを活用することができるようになったわけです。この段階にきて、企業の多くは大手ベンダー SE などの外部戦力を積極的に活用するようになりました。  


そして最近では、自社の情報部門の一部または全部を外部にアウトソースする企業も増えてきました。外部にアウトソースすれば、自社内にノウハウは蓄積できませんが、自前よりもコストを低く抑えることができます。また、今後ますます情報技術発展のスピードが増していくことを考慮すれば、ノウハウを自社で抱え込むよりは、外部の専門家に任せた方がいいという判断もできます。


少しまとめてみましょう。


(1) IT 導入期~発展期(1970 年後半から 80 年代)・・・企業は自社内に IT 要員を抱え込んだ


(2) IT 安定期(90 年代半ばまで)・・・企業は自社内の IT 要員に加え、ベンダーなどの外部リソースを積極活用した

(3) IT オープン化(90 年代後半以降)・・・企業は自社内の IT 要員を削減し、開発・運用業務の多くをアウトソースしている   
上記のように、表面的には(1)~(3)という大きな流れがあったものの、実はその裏側で縁の下の力持ちとして企業の IT を支え続けていた人々がいるのです。それこそ、(1)の時期に企業に初めて IT を導入した当時活躍した担当者 = 団塊の世代の人々に他なりません。


では、どうして(1)の時代に活躍した人が、現在においてもなくてはならない存在であり続けるのでしょうか。実はここ 30 年ほどの間、IT に関する技術そのものは大きく発展しましたが、その本質は大して変わっていません。Web 技術が開発されたり、CPU の性能がよくなったといっても、それはあくまでもインターフェースや処理速度の話であって、システムの仕組みそのものの話ではありません。プログラムにしても同じことで、言語が COBOL から C+ になったとしても、業務の要件自体はそれほど変わっていないのです。


(1)の時期に IT 分野で活躍した団塊の世代の人々は、(2)(3)の時期になっても、引き続き企業の IT 分野に君臨し続けました。表面に出てくるのは Web やオープン系技術を身につけた若者にとって代わりましたが、常に団塊の世代の技術者が陰で支えることで、業務と IT との円滑な連携を助けていたわけです。


みなさんの会社のシステム部門にも、そういう人が必ずいるはずです。年のころは 50 近く、普段はあまり目立たないのですが、いざシステムのトラブルになるとどこからともなくやってきて、たちまち問題を解決してしまう、そうあの人のことを言っているのです(No.85 『奇蹟のカンパネラ』参照)。


前置きが非常に長くなってしまいましたが、2007 年問題というのは、IT 分野を実質的に仕切っていた、彼ら団塊の世代が一斉に会社からいなくなってしまうことを指しています。 
  
一方で、依然として「いったい何が問題なんだ ? さっぱりわからん……」と思っている経営者も多く存在します。彼ら経営者の大半は、普段はシステム部門との接点がほとんどありません。システムに関しては専門家任せであるため、いざトラブルが起こると、自社の惨状にあ然とするのです。


社長 「常務、君はわが社の CIO なんだから、今回の情報漏えい事件について、きっちりと把握しているんだろうね」


常務(CIO) 「いやそれが……システム部長、どうなのかね ?」


システム部長 「私も詳細はわかりかねまして……か、課長はどうなんだ ?」


課長 「現場に任せっきりなものでして、ハイ……」


結局、事態を正確に理解しているのは、すでに出世競争からは乗り遅れた団塊の世代の担当者だったりするのです。CIO を設置したりして、表面的に IT に力を入れているふりをしていても、多くの企業ではこの程度の管理態勢でしかないわけです。まさしく、綱渡り状態ですね。


私は IT コンサルタントという立場から、顧客に対して 2007 年問題の本質と危険性を啓蒙しています。しかし、本格的に対処しようと考える経営者はほとんどいません。多くは、「何とかなるだろう」と考え、それ以外の人は問題の本質を理解していないからです。何と危うい状況なのでしょうか。 
  
確かに、2000 年問題のときのように、ある特定の時間に問題が一斉に起こるような性質のものではありません。何か起こるにしても、ジワジワとやってくるので、実感は少ないかもしれません。しかし、2007 年問題は確実に起こるのです。その問題は一企業の IT だけにとどまらず、社会的なネットワークシステムに波及するかもしれません。今こそ、日系企業の経営者は 2007 年問題への対応を真剣に考える時期に来ているのです。


一方で、外資系にも同じような問題は起こりえます。しかし、日系企業ほどのインパクトはないと思われます。その大きな理由は、外資系企業では、団塊の世代の人々が持つ知識の多くを文書化しているからです。なぜなら、いつだれが退職するかわからず、人の出入りそのものが激しいものですから、文書化しておかなければ引継ぎもできませんし、業務に支障をきたすのです。


2007 年になると、この部分の差が大きく出てきます。団塊の世代の「暗黙知」で何とかやってきた日系企業と、マニュアル化された外資系企業、勝負は明らかですよね。


日系企業がやるべきことは、団塊の世代の技術者の「暗黙知」を、可能な限り文書化することです。彼らが会社を去ってしまうまでに、残された時間はほとんどないのですから。


みなさんも、たまには団塊の世代のオジサンを誘って、飲みに行かれてはどうでしょうかね。「へぇーー、そうだったんですかぁ……」なーんて、話をしてくれるかもしれませんよ。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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