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タカシの外資系物語

外資が好む業界とは ? ( その 1 )2004.06.08

「いやぁ、バレーボールなんて見るの、久しぶりだなぁ、どれどれ ……」


先日、TV でオリンピックのバレーボール最終予選を観戦しました。そういえば、バレーボールを見るのは久しぶりです。最後に見たのは …… と、記憶をたどると、現在解説者の大林素子さんが八王子実践で高校バレーに出ていたとき、もうかれこれ 20 年近く前のことになります ( ちなみに私が高 1 のときです )。


で、しばらく試合を見ていて気付いたのですが、どうも私が頭に思い描いていた「バレーボール」とは趣が異なるのです。以下、私の古い頭の中と比較してみましょう ( カッコ内が私の古い頭です )。


( 1 ) サーブ権に関係なく点数が入る ( サーブ権がないと点数が入らなかったのに …… )


( 2 ) 1 ~ 4 セットが 25 点、5 セット目が 15 点 ( 全セット 15 点のはずでは …… )


( 3 ) ほとんど全員がジャンプしてサーブを打つ ( いきなり「スパイク」かよ、おい …… )


ジャンピングサーブなど技術そのものの進化とルール改正が相俟って、一昔前に比べると、とにかくテンポが速くなっています。見る側にしてみればそれはそれで楽しいのですが、試合の駆け引きというか、間合いを楽しむような雰囲気がなくなってしまったような気がします。こういうルールだと、結局のところパワーのあるチームが勝つのだろうなという印象を受けました。なんか、バレーボールというスポーツそのものの本質が変わってしまったようです。で、試合結果はといいますと、女子はオリンピック出場を達成したものの、男子は惜しくも 3 大会連続予選落ち。「バレーに強いニッポン」はどこにいってしまったのでしょうか ……


バレーボールだけでなく、スポーツの世界においては、ここ数年の間に様々な動きが出てきています。一番画期的な変化は、野球やサッカーの世界において、世界的に活躍する選手が増えてきたことでしょう。メジャーリーグのゴジラ松井やイチローの活躍、サッカーでも中田や中村・稲本などがスポーツ新聞の紙面を飾っています。野球やサッカーがバレーボールと異なる点は、何十年もの間ルール改正がされていないということ、つまり世界中どこに行ってもルールは同じ、おじいちゃんの頃も孫の時代も同じルールのままということです。逆に言うと、野球やサッカーのように「ルールが安定した」スポーツは世界的に広まりやすく、人気も出やすいのかもしれません。


伝統的でルールが変わらないスポーツとしては、日本のお家芸である柔道や相撲が挙げられます。言うまでもなく、これらは日本で生まれたもので、日本から世界中に伝わっていきました。柔道については、現状においても何とかその優位性を保っているというところでしょうか。オリンピックにおいても、全階級のうち過半数は金メダルが狙えそうです。一方で、国技である相撲の凋落ぶりは明らか。ここ 10 年ほどの間を見ても、日本人で強い横綱と言えるのは貴乃花ぐらいでして、その他は曙や武蔵丸、朝青龍などの外国人力士の名前しか思い浮かびません。


少しまとめてみましょう。


( 1 ) バレーボール  
ルール改正を繰り返している ( まだ不安定というか発展途上 )。日本はかつて強かったが、最近はそうでもない。


( 2 ) 野球・サッカー 
ルールはほぼ確定しており、世界中にファンが多い。近年、世界的に活躍する日本人が登場し始めた。


( 3 ) 柔道・相撲 
日本で生まれたスポーツ。近年、外国勢の台頭が目覚しく、日本人が絶対優位とは言えなくなっている。


なんかスポーツ文化論みたいな話になってきましたが、私はスポーツにおけるこれら 3 分類が、ビジネスの世界にも同様に当てはまるような気がしています。順にご説明しましょう。


( 1 ) はビジネス社会で言うと、「ソフトウェア業界」と似ています。コートの面積やボールの大きさや参加人数なんていう「ハードウェア」はそれほど変わっていないのですが、やり方 = ルールというソフトの部分が日々刻々と変わっている世界です ( もちろん、PC 等のハード自体も進化はしていますが、仕組み自体は一昔前とほとんど変わっていません )。


この業界では、かつてのように比較的のんびりしていた時代には日本がトップをとることもありましたが、スピード感が重視されるようになってくると苦しい立場に追いやられてしまいます。ちょうど、ソフトウェア開発においてインド系企業が競争力をつけてきた状況と同じです。大衆のニーズに合わせてルール ( ソフト ) を変更していった結果、いつの間にか日本の優位性が失われてしまったわけです。 
  
( 2 ) は「自動車業界」に似ています。確かにトヨタやホンダの強さは今に始まったわけではありませんので、日本人のメジャーリーグ進出と比較するには無理があるかもしれません。しかし、ホームラン世界記録を持っている王選手は、世界の大舞台で活躍することができたでしょうか。彼の世界記録はあくまでも日本国内のみで達成されたものであり、アメリカ人の感覚としては、ヤンキースで実際に 4 番を打ったゴジラ松井の方がすごいのです。つまり、トヨタのすごさが真の意味で世界的に認識されたのは、収益という客観的な計数で世界のビッグ 3 を凌駕するようになった、ここ数年のことなのです。


この業界の特徴は、非常に長い「積み重ね」を要するということです。トヨタにしてもホンダにしても、現在に至る過程において、非常に長い年月がかかっています。投資額もハンパではないでしょう。野球やサッカーも同様です。サッカーは最近急に盛り上がってきた印象がありますが、J リーグ発足からワールドカップ開催に至る過程で、日本においてサッカー強化策に投じられた資金は、他のスポーツとは比較にならないぐらい途方もなく巨額なものでした。その投資の上に、中田や中村が存在していることを忘れてはいけません。つまりこの業界で成功するためには、長い伝統と巨額の設備投資に堪えうる資本力が必要だということになります。


( 3 ) は「家電製品業界」に似ています。一番端的な例は、SONY のウォークマンでしょう。一昔前までは、世の中に存在する携帯型カセットプレーヤーといえば、日本製のものしかこの世に存在しなかったはずです。ビデオレコーダーにしてもそうです。これらは日本人が発明し、世界中に広めていったものでした。 
  
録音の媒体はカセットから MD に移っても、この状況は変わりませんでした。しかし、最近様子が変わってきたのです。アップルの「iPod」に代表されるような、音楽を電子データで録音し再生するマシンが登場したのです。ではなぜ、SONY をはじめとする日本メーカーが「iPod」を発明できなかったのでしょうか。その大きな理由は、ひとえに日本メーカーの「慢心」だと思います。ウォークマンはこれ以上発展しない、ウォークマン市場はもはや飽和状態にあると読み違え、各社とも経営資源を割いてこなかったツケがまわっているだけのことなのです。これはちょうど、若貴以降の後進の育成を怠った大相撲の世界と似ています。 
  
さて、ここで質問です。外資系企業が日本に乗り込んでくる場合、一番成功する可能性が高いのは、( 1 )( 2 )( 3 ) のどの業界だと思いますか ?


自動車業界に代表されるような ( 2 ) の業界は、「日産-ルノー」や「マツダ-フォード」のように、資本関係を結んで参入するケースは多いのですが、単身乗り込んでくるような参入の仕方はほとんどありません。なぜなら、それぞれの国の当該マーケットにおいて、各メーカーがそれなりのプレゼンスを確立しており、外国勢がいきなりやって来て、国産勢に取って代わるようなことは、ほとんどあり得ないからです。


例えば、松井がヤンキースの 4 番になるのと同様に、巨人のクリーンナップにローズやペタジーニが座ることがあっても、巨人のナインが全員外国人になることはありえないということです。つまり ( 2 ) の業界には、長い伝統の中で「世界の序列はどうで、各国の序列はどうだ」みたいなものが決まっており、そのラインはちょっとやそっとでは侵されないということですね。ですから、ベンツやポルシェなどのようにニッチに入り込む例はあっても、大衆 (= マス ) に対して大成功を収めることは難しい業界なのです。 
  
( 3 ) も逆のパターンというだけで、状況は ( 2 ) と同じです。先ほど「iPod」の例を挙げましたが、これはかなりレアなケースだと思います。インターネットの世界で勃興し始めていた音楽配信の機能を携帯可能なマシンに乗せたら、たまたまウォークマンの市場とぶつかっただけの話です。SONY ほか日系メーカー各社が本気を出せば、2 年後のマーケットシェアは、また日本勢が盛り返しているのではないかと思います。相撲の世界だって同じです。相撲協会が本気になれば、横綱・大関陣の大半は日本人になっているはずです。


一方、( 1 ) の業界というのはルールのはっきりしない業界です。ルールがはっきりしない、またはルールを試行錯誤しながら組み立てているような業界なわけですから、自らの手でルールを制定する企業が勝つのです。ネット上で商品を販売することで流通コストの大幅な削減を達成したアマゾンやデル。生命保険や損害保険の中間に位置する、いわゆる第 3 分野(医療保険やガン保険のことを指す)で成長したアメリカンファミリー。日本に初めて「ファーストフード」という概念を導入したマクドナルド。これらの企業に共通するのは、自らがスタンダードを作ることによってシェア No.1 を獲得したということでしょう。ということで、外資系企業が日本に乗り込んでくる場合、一番成功する可能性が高いのは、( 1 ) の業界ということになりますね。


では、( 1 ) のような業界で外資系企業と対抗していくために、日系企業はどのような戦略をとればいいのでしょうか。それについては、次回のコラムでお話したいと思います。


(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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