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タカシの外資系物語

アクション・ラーニングしよう ! ( その 3 )2003.10.03

前回の続き )いよいよ、研修当日がやってきました。わが社の研修センターは、勝どきにあります。3 年ぐらい前に「トリトン・スクエア」なんてのができて最近は栄えてきましたが、わが社の研修センターができた 5 年前の勝どきは、ランチの場所にも困るほど、オフィスというには似つかわしくない場所でした。それが今や、駅前には超高層ビルが立ち並んでいます。


「しばらく来ないうちに、勝どきも変わったなぁ ……」


私はしばらくの間、感慨深げに勝どきの駅前通りを歩いていました。そう言えば、前回勝どきオフィスに来たのは、マネージャー昇格トレーニングのときですから、ざっと 4 年ぐらい前のことです。


「5 年前なんて、うちの研修センターしかなかったのになぁ …… うちの会社が入っているビルはどれだっけかな、と …… あ、あれ ? …… ホントにわかんなくなっちゃった …… 道に迷ったよーー、えーーーん ……(T-T)」


なんと、自分の会社の研修センターに行くのに、道に迷ってしまったようです。私は急いで駅前に戻って、タクシーに乗りました。


「運転手さん、○○ビルディングまで急いで !」トホホ …… バカみたいな話です。


研修ルームには 5 分前に到着しました。ホッ !


「ではみなさん、ホワイトボードにグループ分けが貼ってありますから、それぞれグループのテーブルに座ってください」


今回、この研修に参加するのは 15 名で、グループは 3 つに分けられました。実はグループ分けをする際に、少しもめたのです。全く無作為に分けるか、意図的に同じようなバックグラウンドの社員同士で分けるか …… 大したことではないように思われるかもしれませんが、これが結構大きな問題なのです。


この問題を理解いただくためには、わが社の生い立ちを簡単に説明しなければなりません。わが社の歴史は、大きく分けると以下の 3 時代に分かれます。


1. 日系の IT ベンチャーとして、主にスクラッチの開発 ( 出来合いのソフトウェアではなく、ひとつづつプログラミングする開発手法 ) を得意としていた時代 - 10 年以上前


2. 欧米で主流となった ERP (Enterprise Resource Planning) という業務パッケージの導入を開始し、会社が急速に伸びたじ時代 - 7~8 年前。ちなみにこの頃、外資と提携し、外資系企業となったのです。


3. IT 分野だけでなく、経営戦略や人事戦略にまで拡大した時代 - 5 年前。ちなみに、そのほとんどは欧米で開発された理論であるため、この分野のヘッドは外国人が務めています。


さて、今やわが社は総合的なコンサルティング会社となったわけですが、社内では依然として、上記 1.~3. のグループがあって、何となく「壁」を作り、お互いに牽制しながら業務を行っています。私の入社は 6 年前ですから、2 と 3 の間ぐらいの世代です。2. 以降の世代は、どちらかというと「外資系」を気取っている人が多いように思います。何ていうか、「いいかっこしー」という感じでしょうか。でも私は前職の銀行時代に、1. のようなシステム開発の経験があり、1. の世代の重要性を理解していました。(『奇蹟のカンパネラ』 参照のこと )


私以外のファシリテーターも、HR ( 人事 ) のスタッフも、「1.2.3. のバックグラウンドについては考慮せずに、すべてを無作為に混ぜてしまおう」という意見でした。しかし私は違いました。


「1.2.3. は各グループに分けたほうがいいと思うんです。うちの会社が内部的にモメるのは、いつも1.2.3.のぶつかり合いです。私はそこから逃げるつもりはありません。むしろ積極的に、1.2.3. のギャップを解決していきたい。でも今回の Action Learning は初めての試みです。企画する側も手探りな状態の中で、それ以外の波乱要因は避けたほうが懸命だと思うのです」


確かに私の意見は、あまりにも保守的かもしれません。しかし、どのような外資系企業であっても、同様の問題を抱えていると思います。「外資になる前となった後の層でのギャップ」-私はこの 6 年間、両方の層の人たちと仕事をしてきましたが、その中で気付いたのは、「どちらが正しい、間違っている、というものではない」ということでした。会社を経営する上では、伝統的で古い考え方も、進取の新しい考え方も必要です。欧米の最新理論も必要でしょう。重要なことは、それらの優れた点を見出して、いかにミックスしていくかということなのです。そのためには、最初から同じ土俵で勝負させるのではなくて、それぞれのエリアで強みを出させてから、その強みをミックスしていった方がいいものが出来上がるのです。具体的にいうと、無作為にグループを作ることで、1. の良さが損なわれることを恐れたのです。わが社はどんな時代にも、1. の良さを無視してはなりません。


私の強い説得もあり、グループ分けは 1.2.3. のバックグラウンド別に 3 チームとなりました。


「では 1 つめのセッションである、『Stakeholder Relationships』に入りましょう。ここでは、主にクライアントとの調整において、プロジェクトで苦労した点を話し合って行きたいと思います。ファシリテーターの方々は、各グループに散って、ディスカッションをリードしていってください !」


「かんぱーい ! お疲れさまぁーーー !」


さっきまで激論を交わしていたミーティングルームに歓声が飛び交っています。わが社初めての試みである「Action Learning トレーニング」は、何とか無事に終えることができました。で、出来栄えはどうだったかって ? うーーん、そうですね。初回にしてはギリギリ合格といったところでしょうか。


確かに、「Action Learning」というにはちょっと寂しい成果しか出ていなかったかもしれません。企画時には、この研修で出てきた方法や考え方を「わが社の方法論」として定式化し、全社に広げていこうと考えていましたから。いざフタを開けてみたら、なんかみんなグチの言い合いみたいになってしまって ( 笑 )。あ、でも 1.2.3. をグループに分けたのは正解でした。グループ内では同じような考え方の人が集まっていたので、あまり議論が紛糾することもなかったように思います。でもさすがに、グループ発表ではいろんな意見が出て紛糾しました。どれも正しいと言えば正しいし、もうちょっと工夫できるような気もするし ……


あ、そうそう、すごく面白いことに気付いたんですが、何だと思います ? それは、「一番説得力がなく、議論が弱かったグループ」なんですが、私は議論を始めるまではグループ 1. だと思っていたんです。でも実際には、グループ 3. が一番弱かったように思います。確かにグループ 3. の言っていることは、欧米の理論をベースにしていて、なんとなくカッコよく聞こえるのです。でも、「だから、どーした ?」と言うと、とたんに弱くなるのです。多分グループ 3. の連中は、クライアントとの実体験が少ないために、本当の修羅場を経験していないことが原因だと思います。グループ 1. や 2. は、それなりの「歴史」を背負っている分、発言に重みがありました。


それから 1 週間後、HR から全社向けにメールが送信されました。


「HR では、先日試行的に実施した Action Learning トレーニングを定例で実施することに決定しました。次回は 10 月X 日の予定です。みなさん、奮ってご参加ください !」


ほっ、参加者アンケートも好評だったようです。よかった、よかった ……


「ちなみに次回のファシリテーターは、前回に引き続いて、金融事業部のタカシです !」


がーーーーーーーん、ま、またですか …… トホホ …… ま、頑張りましょうかね、と ! みなさんも日常の業務を離れて、研修の企画なんてのをやると、新しい発見があったりしますよ。是非、お試しあれ !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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