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タカシの外資系物語

外資系の給料は高い ?2003.09.12

一般に、外資系企業の給料は、日系企業より「高い」という印象があると思います。私自身も、このことは否定しません。実際に、前職である銀行員時代の同僚と比較しても、年収ベースで数百万円の差があると思います。


「数百万円の差~ ? ホントはもっともらってるんでしょ~、ネェ~。倍ぐらい ?」などと、よく言われるのですが、そんなにはもらっていません。こういうことを言う人の大半は「外資系=外資系投資銀行」と思っているようです。確かに、外資系投資銀行に勤めている人の中には、年収数千万円という人もザラにいるようですが、投資銀行以外の外資系企業では、そんな桁違いの給料はもらえません。


ただ、冒頭にふれたように、同業の日系企業より月々の給料が高いのは事実です。今回のコラムでは、給料面で見て、外資系企業は本当にお得かということを考えてみましょう。


私は、外資系企業の給料が高い理由は、次の 3 つだと思っています。


( 1 ) 退職金がない

外資系企業の多くは、「退職金制度」がありません。つまり、月々の給料が高いのは、退職金を前もってもらっているだけということです。最近では、日系企業でも、退職金制度を廃止する企業が増えてきましたが。


( 2 ) 何でも自分でやらなければならない

以前にもコラムに書いてきましたが、外資系企業には間接部門がないので、各種届出などの雑用を自分でやらねばなりません。一方、本業自体は日系企業と同じくらいの仕事量があるわけですから、そういう雑用は夜間や週末にやっているわけです。こういう事情をを知らずに外資系企業に入社する人が多いので、実はビックリしています。課長だろうが、部長だろうが、「これお願いね !」なんて頼める人はいないのです。外資系企業といっても、日系企業でいうところの「部長」よりもっと上のレベルの人にしか、秘書もつきません。ですから、自分で何でもやる覚悟がなければ、外資系企業に入るべきではありません。


( 3 ) 福利厚生がない

外資系企業では、独身寮や社宅制度、昼食補助などがありません。特に、日系の大企業で、かつ本社に勤務していた人の場合、これがないのが結構こたえます。私は銀行員のとき、そのほとんどを本店で過ごしましたが、本店内の食堂では一番豪華な「日替わりランチ」でも 500 円でした。加えて、そのうちの半額は「昼食補助」の名目で会社が負担してくれましたから、実質 250 円でお昼が食べられました。また、駐車場付の独身寮に、月 9000 円で住むことができました。つまり衣食住で、お金を使おうにも使う場面がなかったのです。これについても、最近では、過度な福利厚生制度を廃止する日系企業が増えてきましたが。


このように考えてみると、外資系企業の給料が高いと言っても、それほど得をしているわけではないことがわかります。私のイメージでは、同じ業種で給料を比較すると、外資系 =10 に対して、日系 =7 ぐらいではないかと思います。差額 =3 が、上記の ( 1 )、( 2 )、( 3 ) に当てはまるというわけです。


( 1 ) の「退職金の前取り」をとってみても、確かに何十年後かに本当にもらえるかどうかわからない退職金に期待するよりは、前倒しでもらった方がいいのかもしれません。しかし、しかしですよ ! 生涯賃金として、ホントはそれほど差がないにもかかわらず、「外資系企業の給料は高い !」という幻想を抱かせてしまうのは、どうしてなのでしょうか ? 一体、だれの陰謀なのでしょう ?


私は以前からこのような疑問を持っていたのですが、最近、その正体がわかってきました。フフフ …… それは、外資系企業の数パーセントを占めると言われる、「妖怪 フォーエバー・バブルくんたち」の仕業なのです。少し詳しく説明しましょう。


外資系企業にいると、なんとなく派手な生活をしている人々がいることに気付きます。この「なんとなく」というのがポイント。「ド派手」ではなく、「なんとなく」または「少しだけ」なのです。どうして「ド派手」にできないかというと、前述の通り、それほどまでには給料をもらっていないからです。彼ら ( 彼女ら ) が派手に振舞えるのは、退職金の前取り分にすぎません。ですから、少しだけ派手に振舞う、そう、ちょうどバブル期にわれわれがそうであったぐらいに、なのです。


フォーエバー・バブルくんの特徴は、バブル期に給料が右肩上がりに伸びていた業種、証券会社や銀行や不動産や …… そういった業種の出身者が多いことが挙げられます。この手の業種は、バブル期には、30 代そこそこで年収 1000 万を軽く超えました。しかし、バブルがはじけた後は、給料は増えるどころか、低下の一途をたどっています。例えば、私の前職である銀行員の場合、最も給料が高かったのは、バブルがはじける前の 1990 年頃であり、13 年たった今でさえ、バブルの後遺症を引きずって、そのときの水準を大幅に下回っています。


一方、1990 年頃にドンチャン騒ぎをしていた人々は、バブルがはじけたからといって、急に生活の水準を下げることができなかったのです。「このままでは、生活レベルを下げなければならない。何とか、当時と同じ給料をもらえる会社はないものか」…… ということで、フォーエバー・バブルくんたちは、こぞって外資系企業に転職しました。「ここに来れば、当面の手取り金額は下がらなくて済むぞ。よかった、よかった ……」これを、経済学の世界では、「ラチェット ( 歯止め ) 効果」といいます。賃金カットを受けても、消費スタイルをすぐに変更できないので、消費を減らすことができない。その結果、所得に占める消費の割合が上昇する、というものです。


というわけで、外資系企業特有のフォーエバー・バブルくんたちのおかげで、「外資系 = 高給取り」のイメージが世間に定着してしまいました。まったく、困ったもんですな。


もちろん、私をはじめとして、このような「見せかけ」に気付いている外資系企業社員はたくさんいます。退職金がない分、多くの貯蓄をしなければならない …… このように考えている、「堅実な」外資系社員というのが、結構多いのです。ですから、みなさん、友達に外資系社員がいても、あまりタカらないように。また、外資系社員の友達が派手な生活をしていたら、このコラムの話をしてあげてください。以上、妖怪フォーエバー・バブルくん撲滅の会会長 タカシ からでした !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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