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タカシの外資系物語

花火大会の夜2003.08.22

先日、近所で夏休み恒例の花火大会がありました。私は今住んでいるところに引っ越して 3 年になりますが、毎年欠かさず家族と見に行っています。比較的都心ということもあってか、年々来場者数が増えてきているようです。地元警察の予想では、今年は 45 万人の来場が見込まれるということで、私も前日より「対策」を立ててのぞむことにしました。


その「対策」とは ? それは、前日の夜に会場に行って、場所取りをしておくということ。花火が一番よく見えるメイン会場の公園は、私の家から歩いて 10 分ですから、散歩がてらに行ける距離です。時計の針は夜中の 2 時。私はレジャーシートとガムテープを持って、会場に向かいました。


「ありゃりゃ、もうこんなにいるんだ ……」


会場の最前列には、学生とおぼしき複数のグループが、すでに場所を取っていました。中には、今からどんちゃん騒ぎをしている連中もいます。


「いったい何人来るつもりなのかね ? あんなに広い場所取っちゃってさ。やれやれ ……」


いくつかのグループは、明らかに広すぎるほどの場所を確保していました。学生さん、もう少し大人にならなきゃいけないよ …… 私はブツブツ言いながら、明日の晴天を祈りつつ、家に帰りました。


さて翌日、自宅のマンションから出た私はびっくり。普段はわりと静かな自宅周辺に、すでに人が列をなして歩いているではありませんか。会場の公園に着いてみると、すでに多くの人が公園内にも入れず、道路にあふれ返っていました。


「場所取りしておいてよかったなぁ ……(T-T)涙、涙 ……」


公園の入り口から、「予約」しておいた場所まで行くのに 30 分ぐらいかかりましたが、私たち家族はどうにかたどりつくことができました。ほっと一息。打ち上げ時間までには、あと 1 時間ぐらいあります。


あたりを見回してみてつくづく思うことに、何と考えの甘い人の多いことか。これほどの規模の花火大会に、開始 1 時間前に来て、場所があるはずなどなかろうに …… 今年も多くの人が、場所を探して「流浪の民」と化しています。私とて、できることなら入れてあげたいのですよ。でもそうすると、私たち家族が流浪の民となってしまいます。


一方、隣に目をやると、私の横に陣取った学生グループは明らかに場所を取りすぎています。10 人ぐらいしかいないのに、少なくとも 20 人ぐらいのスペースがあるのです。ではそこに 10 人入れることができるかというと、ことはそれほど単純ではありません。なぜなら流浪の民はすでに数千人規模に膨れ上がっているわけで、今になってそこから10人選ぶなんてことをしたら最後、暴動が起きかねません。


ガードマン 「みなさん、これ以上前に来られても、場所はありません。もう来ないでくださいっっ !」


流浪の民 A 「( 学生さんの 10 人スペースを指して ) あんなに空いてるじゃねぇか ! どうなってんだ、ここの管理は !」


まさに地獄絵図。学生さん、だから言わんこっちゃない ……


流浪の民 B 「あんなに広く取りやがってよぅ ! 親の顔が見たいね !」


私たち 「前日場所取り組」は、流浪の民からの強烈な嫉妬ビームの中、じっと耐え忍ぶしかありませんでした。Ummmmmmm、なんてこった ……


打ち上げ開始 10 分前になっても、流浪の民の列は続いていました。と、その中にいた外国人の親子連れ ( 英語とドイツ語を話していましたので、ドイツ人と仮定しましょう ) が、隣の学生グループのところにやって来てひと言。


「 Available for us ? ( ココ、空いてる ? )」


「イ、イ、Yes!」


がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん ! な、なんと大胆な犯行、いや行動でしょう。私の周りにゾンビのように列を成していた流浪の民は、開いた口がふさがらないようです。かく言う私の下あごも、地面スレスレのところまで行きました。しかし流浪の民の多くは、具体的に文句を言うわけでもなく、軽く舌打ちをして、その場から立ち去っていきました。


ヒュルルルーーーーー、ドドーーン ! パーーーン !


「Great! Fantastic! Very Nice!」


10 分前に来て隣に陣取ったそのドイツ人家族は、異様に盛り上がっています。それに比べて、われわれ日本人は、「前日場所取り組」も「流浪の民組」も、何だか疲れきっています。花火が終わっても、私はしばらくの間、さっきここで起こった「事件」のことが頭から離れませんでした。


まず今回の出来事で、だれか悪い人はいるでしょうか ? 強いて言えば、場所を取りすぎた学生グループはちょっと悪いかもしれません。でも、そのドイツ人家族以外の流浪の民からは「場所を空けてくれませんか ?」と直接言われなかったわけですから、一方的に責められることもないでしょう。一方で、そのドイツ人家族が悪いかというと、そんなことはありません。場所が空いていたからお願いした、お願いしたら OK と言われた、だから座った、それだけのことです。


つまりだれも悪いことをしていないのに、大多数の人々にとっては、なんとなく納得いかない結果に終わったわけです。ドイツ人家族 (= 外資系企業 ) は自分の目的を合法的かつ合理的に達成しました。一方の流浪の民 (= 日系企業 ) は、文句は言うが具体的な行動に移せなかったために、目的を達成することができなかったわけです。これってなんだか、日系企業と外資系企業の関係を端的に表しているような気がしませんか ?


私は日系企業から外資系企業に転職して約 6 年になりますが、まさにこのような経験の連続でした。外資系企業における考え方というのは非常にシンプルで、要は目的を合法的かつ合理的に達成すればいいのです。自分のやりたいことは、素直に「やりたい」と言う。ダメなら、違う方法を考える。ただそれだけのこと。他人から何かを言われる場合も同様で、イヤなら断ればいいわけです。


よく外資系は狼やハイエナのように狡猾で、日系企業はヤギや羊のような弱者の存在に例えられることがありますが、私は少し違うような気がしています。外資系企業というのは、自分に正直なだけです。座りたいからお願いする、日本で仕事をしたいから日本のマーケットに進出してくる、それだけのこと。それを横で見ながらウダウダ文句ばかり言って、そのわりに何もしないのが日系企業ではないでしょうかね。


来年も、花火大会は開催されることでしょう。例の学生諸君が、人数分だけの場所を確保すること、場所が空いているならお年寄りを優先して席を譲ってあげること、そして …… そのようなことを躊躇せずにみんなに提案できるようになること …… 日本が真に国際化するための第一歩は、そういうことなのかもしれませんね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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