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タカシの外資系物語

外資系とゲーム理論 (その 1 ) - ナッシュ均衡2003.05.02

先日、レンタルビデオで『ビューティフル・マインド』という映画を見ました。これは、ジョン・ナッシュという経済学者の半生を綴った物語で、2 年前にアカデミー作品賞に輝いた映画です。ちなみにナッシュ自身もノーベル経済学賞を受賞した天才学者です。


私がナッシュのことを知ったのは、経済学部の学生だった頃です。比較的新しい経済学・経営学の分野に「ゲーム理論」というのがあり、その理論の過半数はナッシュが考えたと言っても過言ではありません。「ゲーム理論」というのは、数学を使って「交渉」や「駆け引き」を理論的に解説したものです。有名な「囚人のジレンマ」で、その理論のエッセンスを説明しましょう。


例えばここに A と B という、懲役 2 年の刑に処された 2 人の囚人がいたとします( 2 人は独房で隔離されているとします)。取調官は、囚人 2 人に次のように同じことを言います。


「もし相方の余罪を白状すれば、相手は 4 年の刑とする代わりに、お前は無罪にしてやろう」


「ただし 2 人ともお互いに証言した場合は、お互いに 3 年の刑だ」


うーーーむ、これは困りましたね。自分の行動、相手の出方次第で、結果が変わってくるのです。どういう条件のときに、どういう行動をとれば一番有利な効果が得られるか、これがゲーム理論が扱う分野です。


ナッシュが考えたゲーム理論に、「ナッシュ均衡」というのがあります。それは「自分以外のすべてのプレイヤーが選んでいる戦略のもとでは、自分の選んだ戦略が自分の利潤を最大にする状態」と定義されます。要はこういうことです。イチゴが大好きな人と、生クリームが大好きな人と、スポンジケーキが大好きな人がイチゴのショートケーキを分け合ったとすれば、それぞれがハッピーな状態になるでしょう。これが「ナッシュ均衡」です。


ここで、イチゴと生クリームを両方食べないと気がすまない人や、マロンが大好きな人が参加してきたとしましょう。たちまちナッシュ均衡は崩れ、弱肉強食の世界が現れてきます(かなり乱暴な説明になってしまいましたが、簡単に言うとこんなもんです。くれぐれも、専門的なツッコミはしないでくださいね……)


前置きが非常に長くなってしまいました。私は学生時代に勉強したことをほとんど覚えていないにもかかわらず、「ナッシュ均衡」だけは何となく頭から離れずにいました。 というのは、「さぞかしナッシュの均衡点というのは平和な世界なんだろうなぁ……」と、ぼーっとしながら考えていたからに他なりません。「世の中のすべての人が、ナッシュ均衡点を目指せば戦争なんてなくなるのに……」


大学卒業後、私が就職した銀行では、「いかにして現状を維持するか」のみを叩き込まれました。「新規マーケットなんて開拓できなくても、現状維持さえできれば生きていける」-これを合言葉に、できる限り当り障りのないことをして、日々お茶を濁すことに心血を注いでいました。


人間関係においてもしかりです。ほとんど同じ給料を保証する代わりに、エリートの世界には口出ししない、これが私を含めた一般人のコンセンサスだったのです。私は出世できない代わりに、東大卒の人とほとんど同じ給料をもらえるという条件を呑んでいました。また、それが心地よかったような気がします。


そこに急遽現れたのが、「外資系企業」でした。彼らは、われわれ日本人が信じていた「ナッシュ均衡」が、偽りであることを教えてくれました。


「もっとイチゴののっかったケーキが食べられるよ~~、生クリームとスポンジケーキを一度に食べられるよ~~」てな感じです。確かに彼らはマーケットの拡大に寄与し、業務の多角化に成功してきました。一方、日系企業の「取り分」は劇的に減少していきました。


では外資系企業は、いつでもどこでも成功を収めてきたのでしょうか ? それは違います。ナッシュ均衡の定義は、「だれも(能動的に)動かないこと」が前提になっています。囚人のジレンマで言えば、2 人とも何も証言しないような状況です。何もしなければ、莫大な利益は得られませんが、大失敗もしないのです。何かアクションをするということは、必ずリスクを伴います。ですから、失敗した外資だってもちろん存在します。でも現時点では、多くの外資系企業に軍配があがり、日系企業はやられているような気がします。これはなぜでしょう ?


その理由は、成功した外資系企業は、日系企業がどのようなアクションに出るか(または、日本の消費者がどのようなアクションをとるか)、事前にある程度わかっていたからでしょう。囚人のジレンマで言えば、相手が密告しないことをあらかじめ知っていたのです。なぜなら、自国のマーケットで以前に同様のことを経験したことがあったからです。しかし、インターネット時代になって、グローバルな動きがリアルタイムでわかるようになった現在、このような外資の優位性は薄れてきています。今こそ日系企業が復活するチャンスなのかもしれません。


ゲーム理論を引き合いに出しましたが、真理はひとつなのだと思います。つまり、「自分で動かなければ、何も変わらない」ということ。今の日本の状態は、まさに変化を恐れて、どんどん悪い方向に向かっているだけの気がしてなりません。そして、日本人も自分の人生なのですから、自分で積極的に動くことが必要だと言うことです。


映画の中でナッシュの妻・ アシリアを演じたジェニファー・コネリーが、アシリア本人に会ったときのこと。ジェニファーが、「映画の中で、何か演じて欲しいことがありますか ?」と尋ねたところ、アシリアはこう答えたそうです。


「これはあなたの映画よ。どうぞ好きに演じてください」

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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