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タカシの外資系物語

指揮者のいないオーケストラ2003.01.31

先日のこと、同僚 Kim との会話。


Kim 「Takashi, do you know "Conductorless Orchestra"? ( タカシ、「指揮者のいないオーケストラ」って知ってるかい ? )」


確か「題名のない音楽会」っていう番組はあったような気がするのですが、指揮者がいないオーケストラってのは聞いたことがありません。


Kim 「It shows lessons in collaborative management method! ( 組織論の観点から、非常に注目されてるんだぜ ! )」


Kim によると、指揮者のいないオーケストラというのは、米国のオルフェウス交響楽団のことを指しています。この楽団は、20 人あまりの構成員が互いに平等な関係にあり、曲の解釈をその場で検討しながら演奏方法を決めるという特徴を持っています。


みなさんもご存知の通り、通常のオーケストラでは指揮者が絶対的な権限を持っています。曲の解釈から音の大小まで、ひとつの曲は指揮者が思うままに表現されていきます。一方、オルフェウス楽団の場合は指揮者がいないわけですから、演奏者それぞれが意見を出し合って演奏スタイルを仕上げていきます。「指揮者の手足として埋もれたくない …… 」という考えから、個々の演奏家たち自らがリーダーとなることによって、チームワークを高めつつ個性を引き出しているのです。


このような組織の運営方法を『オルフェウス・プロセス』と呼び、ハーバード大学などのビジネススクールやモルガンスタンレーをはじめとする欧米企業が、その手法を現実の経営に応用しようと研究に取り組んでいます。


「ふーん、なかなか面白いね」 私はこの話を聞いたとき、素直にオルフェウス・プロセスの持つ優位性を理解しました。権力者を置かないことで、全員が主体性と責任を持って業務にあたることができるわけですから、理想的な組織形態であるといえます。特に、外資系企業に勤めている、ないしは転職してきた人たち ( 私も含めて ) というのは、実はそういう世界に憧れているのです。「責任もないかわりに、面白い仕事もできない」という日本企業を離れ、より刺激的な世界へ飛び込んだ人たちが欲するもの。それは、自らが主体的に責任を持って仕事ができる、まさに『オルフェウス・プロセス』のような職場環境そのものなのです。


Kim 「邦訳本も出てるから、是非読んでみなよ」


私 「うん、ありがと」


早速私は近所の書店まで、『オルフェウス・プロセス』という本を買いに行くことにしました。


「オルフェウス、オルフェウス、と …… はて ?  そもそも『オルフェウス』って何だっけ ?」


まずコトバの意味から調べてみることにしました。書店にあった『ギリシャ神話百科』によると、以下の解説がされていました。


「オルフェウスとは、アポロンとムーサの女神カリオペとの間に生まれた神である。アポロンの息子にふさわしく、竪琴の名手で、その音色には猛獣でさえもうっとりと聞き惚れるほどであった ……」


「ははーん、なるほどね ! 」この解説を読んで、私はあることに気付きました。それは、オルフェウスは竪琴の「プロ」であり、オルフェウス楽団の演奏者たちも「プロ」である、ということです。このことは『オルフェウス・プロセス』を理解する上で、非常に重要なポイントなのです。


例えば、どれだけ弁が立つ人であっても、優れた演奏家でなければオルフェウス楽団に所属することはできません。すなわち、『オルフェウス・プロセス』に参加することはできないのです。これはモルガンスタンレーでも同じことです。投資銀行ビジネスに熟知していなくては、モルガンスタンレーに入ることすらできないのです。


結局のところ、『オルフェウス・プロセス』というのは、非常に外資系的な考え方であるような気がします。外資系には、そのビジネス分野でのプロしか雇われることはありません。確かにプロとは呼べない人も多数いますが、そういう人は早晩はじき出されてしまうか、収入に大きな格差が生じて淘汰されていきます。一方で、日系企業というのは、少数の「プロ」が大多数の「凡人」を養うという、悪しき文化を引きずっています。プロも凡人も同じ職場で、ほとんど同じ収入を得ているわけで、そういう環境では、『オルフェウス・プロセス』のような手法を導入するのは難しいという気がします。日系企業に必要なのは、まず全員が相互に尊重し合えるレベル - プロとしての職能レベル - になることに他ならないでしょう。


「もういいや ……」私は結局、その本を買いませんでした。 Kim の話とオルフェウスの意味で、なんとなく本の内容までわかったような気になったからです ( すぐに知ったかぶりをするのが私の悪いクセです )。


その代わりといってはなんですが、「オルフェウス交響楽団」の CD を買って帰りました。うんうん、確かにうまい演奏です。でも私は小澤征爾が指揮するオーケストラも大好きです。プロ集団か、カリスマか、ビジネスの世界も、つまりはそういうことなのかもしれませんね。


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( ハーヴェイ セイフター ( 著 ) 『オルフェウスプロセス―指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント』 角川書店 (2002 年 11 月) )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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